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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『忘れられない夜』

偽物たちが咆哮を上げ、スロットルを開いた瞬間、 雅のバイクが一気に前へ飛び出した。


「はっ……!?」


先頭の偽物が気づいた時にはもう遅い。 雅は完璧なライン取りでアウトからインへ切り込み、鮮やかに抜き去っていた。


続いて梓が鋭い加速で横をすり抜ける。 すれ違いざま、バイザー越しに冷ややかな視線を投げるだけで、偽物のライダーは息を呑んだ。


後方からは美奈子が一気に距離を詰め、蛇行していた偽物の二台をまとめて封じ込めるように走行ラインを塞ぐ。 まるで獲物を囲い込むような動きに、偽物たちは身動きが取れなくなった。


一瞬の攻防。 だが観衆の目には、圧倒的な差がはっきりと映っていた。


「な、なんだよ……速すぎる……!」


「まさか……本物……!?」


偽物たちはすでに追い詰められていた。 誰一人、前に出ることもできない。 ただ本物の背中を見せつけられ、恐怖と屈辱に震えるしかなかった。


排気音が収まり、峠に静寂が戻る。 偽物たちは震える手でバイザーを上げ、目の前のライダーたちの顔を確認してしまった。


「ま、まさか……お前ら……本物……!?」


「ちょ、ちょっと待て……私たち、騙されてたってことか……!?」


血の気が一気に引いていく。 目の前にいるのは、誰もが恐れ、憧れる本物のアルテミスとルナゴスペルだった。


「……っ、ご、ごめんなさい……!」


「もう二度と名前を語ったりしません……!」


「許して……っ!」


さっきまで威勢よく少女たちを追い詰めていた偽物たちが、みっともなく頭を下げる。 観衆の前で、ただ震えながら謝罪する姿は、あまりに情けなかった。


雅は一瞬だけ視線を泳がせた。


「……こういう場面は、わたくしより……」 隣にいる美奈子へと目を向ける。


美奈子は肩をすくめ、前に一歩進み出る。

「アンタらさぁ」


声は怒鳴りではなく、低く響く叱責の調子。 観衆も一斉に静まり返った。


「名前だけ騙って威張って、弱い子を追い詰めて……それが“本物”のすることだと思ってんの?」


偽物たちの肩が小さく震える。


「アタシらはな、仲間と背中預けて、命張って走ってんだよ。

それを安っぽい真似で汚すなんざ……一番やっちゃいけねぇことだ」


その言葉は、怒号よりも鋭く胸に突き刺さる。 偽物たちは堪えきれず、地面に膝をつき、声を震わせた。


「……すみませんでした……」


観衆からも自然と唸り声が洩れる。


「……さすがだな、美奈子」 不如帰の蓮が小さく笑みを浮かべる。


その横で雅は、ほんの少し安堵の息を吐いた。


「ありがとう、美奈子。あなたの言葉なら、彼女たちにも響くと思ったわ」


「へっ、場数だけは踏んでるからね」


美奈子は軽く笑って返し、夜の空気はようやく落ち着きを取り戻していった。


偽物たちが謝罪し、場が静まり返ったその瞬間。 後方から麗子が、涼やかな声で言葉を差し込んだ。


「名は、誇りと共に背負うものです。

 ……軽々しく口にすれば、自分自身を安くするだけよ」


毅然とした響きは、まるで判決のように重く、偽物たちの心をさらに沈ませる。


続いて梓が一歩前に出て、淡々と告げた。


「もし次に同じ真似をすれば、今日のように優しくは済みません。理解できましたね?」


鋭い眼差しに、偽物たちは何度もうなずくしかなかった。


謝罪する偽物たちを、観衆の走り屋たちは信じられないような表情で見つめていた。


「……あれが、本物のアルテミス……」


「ルナゴスペルも……格が違う……」


誰もが息を呑み、声を荒げることもできない。


不如帰の蓮は、煙草を指で弄びながら低く呟いた。


「な、本物だっただろ? 偽物の半端なテクニックじゃ、あいつらの足元にも及ばない。 大体、本物が弱い者いじめなんかするかよ」


仲間たちも頷き、ただ目を奪われていた。


助けられた少女たちは、まだ信じられないような面持ちでアルテミスとルナゴスペルを見上げていた。


「……さっきの、あれ、本当に……」


震える声で言いかけた少女に、あかねがにやりと笑う。


「答えは自分で探してみなさい。 でも、あんたたちの目の前で走ったのは、あなたたちの目にどう映ったのか、それがすべてよ」


美奈子も腕を組み、少女たちをじっと見据える。


「悔しい気持ちは大事にしな。

 走り屋にとって悔しさは、次の走りに必ず効いてくる」

千秋が付け加える。


「でもな、自分の腕と相手の力量差も考えないと。今回うちらが出たからよかったけど、下手すりゃもうバイクに乗れなかったぞ」


少女たちは唇を噛み、やがて小さくうなずいた。


その空気を和らげるように、エマが一人の少女の肩にそっと手を置く。


「でもね、あなたたちがここまで守り合って来れたのは、

 とても素敵なことよ。 私たちも仲間がいたから、ここまで来られたの」


宗子も笑って続ける。


「なぁ、もし次に会ったときは、一緒にツーリングでもしようね。箱根なら、もっと楽しい道いっぱいあるんだから」


少女たちは驚いたように目を丸くし、次の瞬間、顔を真っ赤にして慌ててうなずいた。


「……はいっ!」


観衆の走り屋たちがその様子を見てざわめく。


「やっぱすげぇ……本物って、走りだけじゃなく人まで惹きつけちまうんだな」 「俺たちも気合い入れ直さねぇと」


夜の箱根に、走りと人の縁を結ぶ余韻が漂った。


騒ぎが収まり、偽物たちも頭を下げて去っていったあと、 アルテミスとルナゴスペルは、自分たちの正体を明かすことなく、静かにバイクを並べて夜道を走り去っていった。


帰り道。 アルテミスとルナゴスペルの面々は、ツーリングのはずが峠バトルになったことに、どこか呆れたような笑みを浮かべていた。


「なんで、ただのツーリングが、峠バトルになるのよ」


「それは、総長が持ってるからっスよ」


「私に原因があるとでも?」


「それしかないと思います」


「千鶴ちゃんに同意します」


「まあ、星の導きというか、月の導きですかね」


「う~ん、それもあると思うけど……そもそもの発端ってなんだったかな」


「たしか、あの峠の駐車場に寄った理由は、千鶴が“あそこの団子が食べたい”って言ったからじゃなかった?」


⦅ち~ず~る~……⦆


「あははは、まあ千鶴の食い気は置いといて、総長は人も運気も惹きつける魅力があるのは確かだよね」


その言葉を聞いたひなたが、顔を青くしてぽつりとつぶやいた。


「総長の魅力って……人を惹きつけるだけですよね?」


みんながキョトンとして、ひなたの言葉に耳を傾ける。


「実はですね……このあたり、出るんです。数年前に事故があって……」


「出るって、まさか……」


一同、固唾をのむ。


「まさかね……」


「それが……私、今最後尾ですよね?

 なのに、私たちと同じ速度で、1台の単車のヘッドライトが……」


((イヤ~~……%$#&>¥))


「美奈子さん、あなた“場慣れしてる”って言ってましたよね? お願い」


「総長、それ卑怯です。私の“場慣れ”は対象が人です」


「でも幽霊も“場”には違いないでしょ? お願い……」


「総長が何でも惹き寄せるその能力に問題があるんです。こういう時こそ、  アルテミスの権力を使ってくださいよ」


「幽霊に札束が効くなら、1億でも2億でも出して横っ面張りますわ」


「こうなればフォーメーションよ。私が先頭に立つ。最後尾は彩ちゃんで」


「ちょっと! なんでこんな時に私が殿なんですか!? 私たちの結束って……」


「みんな、全速離脱~~!!」



「ふぇ~……さすがにアルテミス、速いな。 話したいこともあったし、一緒に帰ろうと追いかけたけど……ま、今度でいいか」


不如帰の蓮は、ついていくのをやめ、静かに速度を落とした。


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