回復薬はありますか?
「ほらほら、君らも入った入った」
ししょーはそう言ってカイと知らない男女を連れて入って来た。
男の人の方はカイと似てるんだけど、朱髪に蒼目。凄く、分かりやすく対象的な二人だ。双子なのかな?
女の人の方は、金髪碧眼の美人さん。なんか透けてるのと、レイさんと纏う気配が似ている様な気がするから、精霊なのかな。
男性陣がアイツと同じ方に座り、女の人が姉様の隣に座る。ししょーは偉い位置に座った。さっすがししょーだね!
カイが会わせたい人はこれで全員みたい。姉様と
「話を聞く前に、名乗っておかないとだよね。私はウラ・ナイシ、ここの支援者だよ!」
……誰か、吹き出さなかった私を褒めてほしい。先ず、何だその雑な名前は。占い師? ししょーそんな技術持ってないでしょーが。持ってたら絶対私に教えてるもんね。
で、なに。支援者? そんな金あった? 嫌でも無かったら急に四人も養えないし、あんなポンポン物買えないか。じゃあ納得、うん取り敢えず納得しておこう。
「では、次は僕ですかね。僕はヒュカイ・アルゼノート。精霊ですが、気軽にカイとお呼び下さい」
「あー…俺はシンリー・アルゼノート、だ。種族はカイと同じで、俺の事はシンでいい」
カイ……ヒュカイとシンリーは精霊、と。てかそっか、レイさんとヨウさんで麻痺ってたけど精霊とか妖精って滅多にお目にかかれない存在なんだっけ。……そう言えば、四の姉様が愛でたいって騒いでも、結局精霊も妖精も見つからなかった事があったっけ。探すフリしただけだったから忘れてたや。
「ぼ……俺は、アランだ。吸血鬼だが、家出した」
嘘、吐いてる。でも指摘しない、指摘出来ない。したら、私が教えたくない事も聞かれそうだから。
あぁ、でも。目は。深海の様な目は、変わってなくて。そこだけは、ホッとした。
「私はディレナ・アルゼノート。双世界間の正式な移動地点の番人をしているわ。シンとカイは私が拾ったの」
ディレナさん……うん、覚えた。それにしても、双世界か。古そうな歴史書や物語でしか出てこなかったから若干疑ってたけど、多分あってるんだろうね。後でししょーに真偽確認はするけど。
「あのなぁ…!」
「あら、あのまま彷徨っていたら、何処ぞの始祖に実験されてた筈よ? それを、優しい私が野良精霊なんぞを拾ったのだから、感謝して欲しいのに」
「だから、その始祖ってのは何なんだよ!?」
カイとディアナさんの言い合いに出てきた、”始祖”という言葉に少し動揺する。チラリとししょーの方を見るが、瞬きで返された。変わっていない………つまり、あの時七の姉様と婚約した男で、この身体の父親で間違いないのだろう。
ていうかそうだ。今思い出した、アイツ若返ってない? あん時は精々二十代後半くらいだったのが、今は十代後半くらいだった。何故若返る、始祖だからなのか? んなアホな。
「それは後でね。⸺それで、君は?」
ししょーの誘導で、私に視線が集まる。息を吐き、少しだけ頭に空白を作る。よし、大丈夫。
「リア……とだけ。姉様と一緒に、高貴な方の元から逃げ出してきました」
嘘じゃない。あの始祖野郎との関係を言っていないだけ。うん、大丈夫。嘘じゃないから、堂々としてろ私。
ぶちまけたい事は、後でししょーに言えばいいから。今はちょっとだけ我慢して、演技しろ。
あまり思い出したくない事も本当で、詳しく言いたくないことも本当だから。その表情は演技だけど本心だ。
「それで、その……助けてもらいました、から。何か、恩返しさせて下さい」
*
それから、これからの事を少し話した。話し終わった後、姉様に岩壁の外に連れ出されて、一軒の家に案内された。ここの家は、私と姉様で使っていいそうだ。
私の部屋を用意していたようだった。一先ず、暫らくの休息所は出来た訳だ。身体を伸ばし、ベッドに倒れ込む。
「………ふぅー」
少しだけ、気が抜ける。この空間は、今世で自分が動いた結果手に入れた、一人だけの世界と言ってもいい。だからちょっと………安心、してるのかも。
寂しいのは、増えてく一方だけど。
⸺コンコンコンッ
ノック音が聞こえる。ししょーかなとも思ったけど、ししょーだとしてもダラケ過ぎていたら怒られそうだし、仕方なく起き上がって扉を開ける。
扉の先には、アランが居た。
「……あー、その」
「………入って」
「…え? ⸺っ!」
アランに聞かれたら、大きくは騙せない。今のうちに話を合わせておこう。そう思い、腕を引っ張り強引に部屋の中に入れた。
男女が密室に云々は知らん。今のアランはアルじゃないから、無闇矢鱈に引っ付けないし……あー駄目駄目、切り替え切り替え。
「聞きたいこと、あったんでしょ? 私も、アンタとは話を合わせておきたかったから、丁度よかったよ」
「そ、そっか。……というか、覚えてたんだ」
「まぁね。そっちはそっちで、生きてたんだ。よかった」
念の為、防音結界を貼る。やましいことはしないけど、聞かれたくない話はするからね。あっはは。
「うん…言わない方が、良かったんだよな?」
「そう。気、使ってくれてありがと」
「……おう」
前に一度会った時より、アルに口調が似てる。それに気付いて、ちょっぴり嬉しくなる。でも、その思いは表には出さない。出しても迷惑になるから、出さない方がいいのだ。
「後……ウラ、さんが。明日、さっきの応接室に来てほしいって言ってた。道、分かるか?」
「そう……大丈夫、覚えてる」
そう言った後。当たり障りの無い雑談を交わして、アランは部屋から退室した。
それを確認してから、私はしゃがんで膝を抱えた。
「………つら」
それは、私のメンタル面の限界が近いという事を、私に気づかせる、溢れてしまった一言だった。
はい。五月入ったので、次章のタイトルが公開されています。夏までには今章を畳めないかな……。




