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鈴蘭
書斎。鈴蘭の一輪挿し。
花宮は万年筆を置き、窓の外へ目をやった。
あの時と変わらない星空。彼女のことを、ふと思い出した。
「渡さん、私の名前、鈴蘭から来てるんですよ」
「鈴蘭?」
「はい。花言葉は、」
「『幸福』だな」
「さすがです」
「お前のために勉強したんだ」
彼の言葉ののちに、すずはなにも言わなくなった。花宮は手元から顔を上げ、少女の顔を見た。
「私は幸せ者ですね」
少女と視線が合う。少女は嬉しそうに頬を染めた。
思い出した彼女の顔は幸せそうな表情をしていた。
きっとそんな彼女と過ごす私も、幸せだったのだろうな。
花宮はそんなことを考えて、また万年筆を握った。
「…」
夜風に鈴蘭が揺れた。
花宮はすこし頬を緩めた。




