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黄金萩 壱
「また来たんですか」
「私は飽きないからね」
「私は飽きましたよ」
赤いレンガ塀。花宮は毎日そこへ通うようになっていた。
飽きたなどと言うすずも、毎日花宮が来るのを今か今かと待っているのだ。
「私のことをいつも待っているんだろう?」
「まっ、待ってません!」
「本当のことを言えばいいのに」
「本当に、待ってません!」
すずは、赤くなっていく頬を隠すように花宮に背を向けた。
「ところですず、うちに来ないか」
「…はい?」
「家には私一人しかいないし、一人で暮らすには広いから」
「でも、」
「以前、家はないと言っていただろう」
「あ、ええ、まあ」
「ではうちに住めばいい」
「でも」
「どうせ仲間が来てもお前の姿は見えないんだし、はたから見れば私は今まで通り一人暮らしだ。すずも家ができるのだし、悪い話ではないと思うが」
「…考えさせてください」
「わかった」
その日、花宮はそれだけ言ってその場を立ち去った。
一人になったすずは、花宮の背中を見送って、また頬を染めていた。




