71話 “再会と怒り“
お母様「もうすぐ、もうすぐ来るよ」
と、言われたと同時に体内を引き裂かれるような痛みが引き、僕はお母様が何を“したい“のか、いや、“してる“のか次第に理解し始め、僕とソルは互いに目を合わせた後、時空が捻じ曲がる予兆を感じた場所を睨みつけた・・・・
僕とソル「「“アイツ“が来る!!」」
僕とソル「「!!!全員、中央から避けて!!」」
皆んな「「「「「!!???」」」」」
ジェムシードサイド「時空が歪んでる!!??っ!!これはっ!!」 「っ!!退避!!退避ーっ!!」 「皆様、お下がりください!!」 「総員!!結界魔道具を展開!!」 「「「「「はっ!!」」」」」
地球サイド「何!!??何が来るの!!??」 「っ!?ばあば達!こっちに来て!!」 ぐいっ 「えっ!?でも、咲子が!!」 「ばあば大丈夫だから、こっち!!」 「おばさま達もっ!!」 「あ、な、何!?」 「仁!!防御魔法!!」 「やってる!!」
バタバタバタッ!!
このお母様の創った神域は、本人の許可がなければ接触することすら不可能な強固な認識阻害の効果がある、それを知っているので普通に考えれば許可がある誰かがここに入ろうとしていると言うことなのだが、今回ばかりは入ってこようとしている位置が悪かった。
食事会をしているこの広場のど真ん中に、凄まじいエネルギーの渦が出現し、異次元の通路の入り口を作っているのを感じた、それにお母様の言葉から、例の“蛇神“を連れて来ようとしている可能性が高かったので、すぐに危険と判断し周りにも警告を出すと、それに反応し一斉に動き出したのはジェムシードサイドの人達と、異世界転移経験者の仁達、地球サイドの人達の大半が何が起きたのか分からず困惑するばかり、ジェムシードサイドが素早く防御体制を整えたあと、少し遅れて地球サイドもなんとか仁達のおかげで、なんとか防御体制が整った。
すると、
ぐにゃぁっ・・・
次元の歪みが誰の目にも明らかに大きく歪み、そこに真っ黒な小さな穴ができ、そこから徐々に穴が広がっていき、人が通れるほどの大きさまで広がると、
にゅっ!
と、色黒の細い人の腕が黒い穴から突き出てきて、それに続くように黒いゴシックパンク調の服を着た女性の体が出てきた・・・
僕とソル「「えっ!?”トイフェル“!?」」
トイフェル『あっ!!スフィねぇっ!!ソルにぃっ!!♪』 ダッ!!!
ドンッ!ギュッ!!
僕とソル「「わっ!!」」
次元の穴から出て来たのは前世からよく知っている、魔の神の双子の姪っ子、僕達を見て、すぐに“ユグドラスフィア“と“ソルガディア“だと分かって、以前と同じように僕達に抱きついてきた、でも、以前と同じように抱きつかれた僕達は少し戸惑った、何故なら、彼女を見たのはかなり前、その時はまだ幼く、人間でいう所の5歳前後の体型だったのが、今や立派な女性の体型に成長し、出るところが出ていたので、昔とのギャップに困惑しつつ、ソルはもちろん現在男性として生きている僕達は、両手をあげて身体でその突進を受け止めた。
?『姉さん!!勝手に先に行かないでよっ!!私だけでこれ持たせないでっ!!・・・あっ!!お姉様達!!!』 ドサッ!! ダッ!!!
ドンッ!ギュッ!!
僕とソル「「“イブリース“・・・」」
トイフェルの後から次元の穴から出てきたのは、魔の神の双子の姪っ子の妹の方の“イブリース“、姉のトイフェルと同じように、僕達と見つけてすぐに手に持っていた何かを落として抱きついて来て、僕達もさっきと同じようにその突進を受け止め、耐える・・・
トイフェル&イブリース『『お帰りなさい!!2人とも!!』』
僕とソル「「あぁ、ただいま、2人とも・・・」」
僕達が生まれた頃はこの神域では自分達より年下の神がおらず、産まれてからしばらく1番年下として、かなり歳の離れた年上の兄弟神達に可愛がられていた、そして数千年ほど経った頃に、兄の魔の神が結婚して生まれたのがこの双子だった、今まで自分達が兄弟に可愛がってもらったように、この子達を自分達の可愛い妹分として同じように可愛がり、彼女達が成長して歩き出し、言葉を話すようになってからは、僕達4人は互いが双子ということもあって、よく4人で過ごしてたのだ。
そんな関係の僕達が久しぶりに再会したのだから、それはもう考え深いものがあると言うものだ、2人は目に涙を溜めながら僕達に抱きつき、帰還を喜び、僕達は2人の成長に驚きながらも2人の喜びを受け止めた。
(まぁ、他の人達は困惑するよね・・・)
感動の再会をしている僕達を、両側から混乱した表情で見てくる前世と今世の家族に、“申し訳ないなぁ“と思いつつも、2人の成長を噛み締めた・・・
「2人とも、大きくなったね。・・・それと、急にいなくなってごめんね?」
ソル「すまなかった」
トイフェル『スフィねぇ達のせいじゃないから謝らなくていいの!!でも、寂しかったよぉ~~』 ギューッ!!
イブリース『そうです!!お姉様達は悪くないんですから良いんです!!そして、私も寂しかったですっ!!』 ギューッ!!
僕とソル「「あいたたたっ!2人とも、寂しかったのは分かったけど、力が強い!」」
急にいなくなったことを詫びると、2人は寂しかったと言って、これまでの時間を取り戻すかのようにさらに力を入れて僕達に抱きつく。(ちなみに、2人は、僕とソルを前後で挟み込むように抱きついてる、前をトイフェル、後ろをイブリース、2人は互いの手を繋ぎ前後から圧力をかけて来ている・・・( ̄▽ ̄))
2人は魔の神の子と言うだけあって、そこそこ力が強いので2人の細い腕が僕達の脇腹に食い込んでそれなりに痛い・・・
そうして、僕達が痛がっているのを知るとすぐに話してくれたのだが、
トイフェル『あっ!!今気づいたけど、スフィねぇが本当に男の子になってる!!!』
イブリース『いや、気づくの遅すぎですし、その反応は今じゃないでしょう姉さん・・・』
と、ど天然のトイフェルの反応に呆れるイブリース、のいつものやり取りが始まり、ほっこり和んでいると、
『うっ・・・』
全員「「「「「!!!」」」」」 バッ!!
時空の穴が開いていた場所辺りから、小さくうめく声が聞こえた。
そのうめき声の正体は、すっかり忘れていたけど、先ほどイブリースが次元の穴から出て来た時に落っことした何かがうめいたのだ、その声ですぐにそちらに視線が集中する。
「「っ!!!“アイツ“だ、“アイツ“がっ!!!!」」 ブワッ!!!
イブリースが持って来たのは例の蛇神、それが分かった瞬間、これまで僕達の中で抑えてきた何かが弾けた。
トイフェル『スフィねぇ?』 イブリース『ソルお兄様?』
僕とソル「「“アイツ“のせいでっ!!!!」」 キィーーーッ!!
目の前にいた2人が僕達の異変に気づき驚きの表情で見てくるが、僕達はそんなことに気遣う余裕もなく、反射的に殲滅力の高い重力魔法の“ブラックホール“を放とうと、手のひらの上にそれぞれ莫大な魔力を込め始める。
全員「「「「「っ!!??」」」」」
僕達が込め始めた大量の魔力に広場の端にいた全員が気づき、その込めた魔力の量から危険だと理解した人達は一気に身体が緊張して身構える。
お母様「ここでしたらダメだよ」
ぼしゅっ・・・
全員が危険を感じ緊張感に包まれた時、ゆったりとした口調でお母様がそう言いながら、僕達の作った特大の“ブラックホール“を簡単に消滅させた。
僕とソル「「っ!!??」」
「お母様!!」 「母上!!」
僕達の積年の恨みがこもった、特大の“ブラックホール“を放とうとした瞬間に、簡単にその“ブラックホール“を消されたことで、頭に血が昇っている僕達はその怒りの感情のまま、魔法を消したお母様を睨みつけると、
お母様「そう、睨まないの、舞台は用意してあげるから、ここでの力の使用はやめなさい、いいね?」
僕とソル「「くっ・・・はい・・・」」
と、静かに嗜められて、その場は引き下がるしかなかった。
僕とソル((“アイツ“が目の前にいるのに!!僕の、俺の、半身を奪った“アイツ“がっ!!!!))
お母様に嗜められても、内心では“アイツ“がした数々の悪行が頭の中で蘇ってくるので、“アイツ“を攻撃したいという衝動は、ちっとも治ることがなかった。
互いの怒りの感情が入り混じり、どちらの怒りか分からなくなるぐらいで、周りの人達の言葉や表情は全く入って来なかった・・・
お母様「2人とも、腕輪を・・・」
僕とソル「「!!・・・ありがとうございます・・・」」
意識はなく、魔の神の双子の能力の効果なのか、ズッと小さくうめいている“アイツ“を睨みつけていると、お母様が僕達に向けて、シンプルな白銀の金属の一対の腕輪を差し出してきた。
それは、この神域に住む神々の認識端末、兼、能力制御装置、兼、増幅装置、兼、戦闘用ツールで、さまざまな機能がある代物、だからこれを渡されたと言う事は、僕達にいつでもこの神域に戻って来て良いと言っていると言う事だった。
僕達はそれを渡されて、怒りの感情一色だった心内に理性が戻ってきて、少し、頭が冷静さを取り戻してきた。
お母様「“アレ“はあっちの空間にポイッするから、そこでなら好きにしていいよ。ただし、完全に殺すのはダメ、アレはアレで使い道があるからね?いい?」
僕とソル「「はいっ!!」」
お母様「うん、良いお返事。では、ちゃんと準備してから行きなさい」
と、そう言ったお母様が指をクイッと下から上に弾くように振ると、地面でうめいていた“アイツ“が弾かれるように浮いて、いつの間にかできていた時空の穴に放り込まれて消えていった。
こくっ・・・カチャッ カチャッ パンッ!
そして、僕達はお母様の言葉に無言で頷くと受け取った腕輪を両腕に嵌めて、両手を打ち鳴らした。
ポンッ! フィー・・・
と、起動音がした後、身体の周囲に2つの輪が浮かび上がり、それが僕の身体をスキャンするように上下し、それが終わると、『生態認識を完了しました。お帰りなさいませ、“ユグドラスフィア様“』と、アナウンスが流れ、両腕の腕輪から身体の中心に向かって密着するような光が放たれた、そうすると、光が通っていった所から服装がガラッと変わり、今まで来ていた華美な装飾のされた“祭事服“から、近未来的なシンプルな服装に変更された。
(!これは、“神力“を使ってない?・・・僕のために、調整してくれたんだ・・・)
通常の物なら、着用者の“神力“を認識して、それを利用して機能を作動させているのだが、僕が“神力に反応する呪い“をかけられているのを分かっているのか、“神力“ではなく、魔力で機能するように調整されていたことに気づいた。
その気遣いに僕はまた少し冷静さを取り戻した・・・・
そして、準備が整った僕達は互いに視線を交わし、互いに不備がないか、行けるかと、確認して、その確認が終わったら無言で頷き合い、お母様を見た。
お母様「準備はできたようだね。くれぐれもやり過ぎないようにね」
その言葉に無言で頷き返すと、お母様も無言で頷き、指を軽く振って僕達の真横に時空の穴を作ってくれた。
僕とソル「「では、行って参ります!」」
そう言って、お母様が作ってくれた時空の穴に歩いて行った。
その後ろでは、僕達を心配そうに見つめる前世と今世の家族が見送っているのを感じていたが、その時はあえて振り向く事はせず、今するべき事に集中したのだった・・・・




