森の中の旅
頭の木の上で鳥の羽ばたく音が聞こえた。
羽によって揺れた木の葉はぶつかりこすれあい音を立てる。
そんな音しか聞こえない静かな森の中、落ち葉で埋もれてあまり見えない黄色のレンガ道をてくてくと歩く。
「へー木こり君って文字が読めるの?
凄いねー!」
「まあそりゃ案山子なら読めないよ。
だって案山子だもの。」
森の中を先頭に立って歩きながらペラペラと紙片を捲っていたネロは案山子に話かけられるが適当にあしらっている。
仲良くするつもりがないのか、はたまた対人能力に難があるのか。
ビアンカは鈍い銀色に光っている後ろ姿を見ながらきっと後者だろうと自分の中で結論づけた。
記憶のない人間を躊躇いもせず窓から投げ捨てられる人物だ。
対人能力やその他含め丸々狂った人間だと考えるのが自然であろう。
だが案山子は気にしていないのか尚も話しかけている。
何やら案山子はネロが気になるらしい。
大方ブリキの全身鎧がカッコ良いとかそんな理由だとは思うが。
「いいなー。
僕も文字が読める様になれたらなー。
脳ミソがないからまだ読めないんだよー。」
「…ならこれどーぞ。」
ネロは鞄から一枚の紙を取り出すとポイッと案山子に渡す。
案山子はわぁ、ありがとーと喜ぶが開いた瞬間首を傾げた。
「…これなあにー?」
「文字の勉強の道具だよ。」
「そうなのー?
ありがとー!」
案山子は顔の眉毛が描かれた布に皺を作りながらネロに渡された紙に目を落とす。
ビアンカも後ろからこっそりと紙を覗いた。
「…いや…確かに文字の勉強の道具だろうけども。」
紙に書かれていたのは『いろは唄』。
確かに古き良き文字を教えるに相応しい文章ではある。
だが紙に書かれた物は明らかに達筆だった。
筆の運びも見事に美しい。
…一体いつの時代の物なのかと疑ってしまう程に達筆過ぎた。
明らかに初心者向けではない。
「ねーねー、これってどれが文字なのー?」
「全部。」
「へー!
ミミズが這った跡みたいだねえ。」
やはり全く読めないらしく案山子は紙をクルクルと回転させ解読しようとしていた。
案山子が文字を覚えられるのはいつになるのだろうか。
「あっあの。」
「…ん?
えっ私?」
案山子に注目していたビアンカは突然話かけられ驚いてしまう。
そんなビアンカの様子にドロシーはくすりと笑った。
「そんなに驚かないで。
ライオンさんって本当に臆病なのね。」
「…まあそうね。」
案山子に気を取られていただけなのに臆病だと言われてしまうのは腑に落ちないがそれがキャラ設定なのだから仕方ない。
「ねえ、ライオンさんと木こりさんってお友達なの?」
「どうして?」
「一緒にいたみたいだし、仲が良いのかなと思って。」
ドロシーの問い掛けにビアンカは首を捻る。
逆に自分が聞きたい位だ。
ネロとビアンカの関係については自分の方が分からない。
悩み始めてしまったビアンカにドロシーが悪い事を聞いたのかと思ったのか慌てて手を振った。
「いっいいのいいの。
2人がお友達でもそうでなくてもこれからお友達になれば良いんだから!
難しい事を聞いてごめんね?」
「えっ?
いや別に…。」
「あっそうだ!
ライオンさんの事を聞かせてよ!
私まだライオンさんの事を何も知らないもの!」
とりなすように目を輝かせてドロシーが尋ねる。




