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不変の運命

6月17日火曜日 午後2時53分 朝野医院


詩音たちは学校へ行っていた。昨日あんな事があったにも関わらず生活はほとんど変わったことはなかった。もっと混乱が起こるのかと思いきやそうでもなかったようだ。しかし、テレビでは世界中での混乱の様子を映し出していた。

『昨日のISROの発表以来、世界各国で不安の声が上がっています。隣国では説明を求める暴動が起こったり、不安からの職務放棄などが行われている国もあるよです。』

ニュースキャスターは淡々と冷静にいつもと変わらぬ報道をしていた。内容こそISROのことばかりだが取り乱すようなこともなく普段と変わりないように思えた。

コンコン。

ハヤテの病室に客が訪れた。看護師の折原沙耶とその後ろか小さな男の子が病室に入ってきた。

「ケイスケ君。お兄ちゃんに自己紹介は?」

沙耶がしゃがみこんで男に言った。男の子はハヤテの顔を見て。

「からはしけいすけです。6才です。」

と、元気よく自己紹介をした。

「俺はハヤテ。よろしくね、ケイスケ君。」

ハヤテは優しく微笑みかけた。

「この子が昨日話したケイスケ君。」

沙耶はハヤテに説明した。心臓が悪くて学校に行けない子供。ハヤテの目の前に立っている少年からはそんな気配は一切しなかった。言われなければ病気だってことがわからないくらい元気そうな表情をしていた。

「昨日も言ったと思うけどケイスケ君は心臓が悪くて移植する以外は助かる方法はないの。でも、なかなかドナーが現れなくてね。アメリカに行けば移植しなくても治してもらえるらしいのだけどそれには莫大なお金がかかるの。」

沙耶は神妙な表情をして説明した。ハヤテはそれをしっかり聞いていた。

ケイスケ君のことを哀れに思ったり可愛そうだと思ったりせずただ、噛み締めるようにその現状を聞いていた。

「ねえねえ。」

不意にケイスケがハヤテに呼びかけた。

「お兄ちゃんはどうして病院にいるの?」

ケイスケの素朴な疑問にハヤテは笑顔で答えた。

「俺は怪我をしちゃったから病院にいるんだ。」

「病気じゃないの?」

「病気?俺は病気じゃないよ。」

ハヤテが答えるとケイスケの表情がパーッと明るくなった。

「よかった。」

ケイスケは笑顔で呟いた。その表情からは本当に喜んでいるとしか思えないものだった。しかし、ハヤテにはなぜ病気ではないことがケイスケを喜ばせるのかがわからなかった。

「どうして病気じゃないのが良いことなの?」

ハヤテの問いにケイスケはまっすぐな目線で答えた。

「だって怪我は治るからね。病気だったら死んじゃう人もいるから寂しいんだよ。」

ケイスケは悲しそうな表情をした。ケイスケは病院という少しだけ特殊な環境にいることによって人よりも多くの死を目の当たりにしてきたのだろう。

ケイスケの言葉から多くの死について連想させられた。

「そっか。でも俺は何があっても簡単に死ぬつもりはないよ。」

その言葉はケイスケを勇気づけるための言葉か、はたまた自分に言い聞かせるための言葉か、それは本人ですらわからなかった。

「お兄ちゃん。僕が死ぬまで絶対に死なないでね。」

ケイスケは無邪気にそう言った。その言葉がハヤテや沙耶には重く感じた。ハヤテは小さくうなずくことしかできなかった。話題を変えたくてハヤテは無理に明るい声を出した。


「何かして遊ぼうよ。何がしたい?」

ハヤテの問いかけにケイスケは少しばかり頭を抱えた。そして「お絵かき」と答えた。ケイスケの答えを聞くと沙耶はお絵かきセットを取るため部屋を出た。

沙耶はすぐに戻ってきた。手には落書き帳と色鉛筆が握られていた。

沙耶はそれをケイスケに渡し、部屋の隅にある机で書くように言いケイスケはその言うことをしっかり聞いた。ケイスケは夢中でお絵かきを始めた。沙耶はそれを確認するとハヤテのそばまでやってきてそっと隣に腰かけた。

「世界がもうすぐ終わるかもしれないのに彼には関係ないみたいね。」

沙耶は目線をケイスケに向けたまま言った。

「毎日、明日死ぬかもしれないと思いながら生きるのはつらいことなんだね。昨日の一件で本当に実感したよ。」

「本当に?そうは見えないけど。」

ハヤテは思ったままのことを言った。沙耶の表情から恐怖というものを感じなかった。

「うん。だってここでは毎日のように人の命が奪われていくわけだし、人はいつかは死ぬからね。それに半分の人は生き残れるのだから後は運命に身を任すだけかなって。」

「へー。沙耶さんは強いんだね。」

ハヤテは沙耶に微笑みかけた。沙耶はその表情を見て吹き出した。

「あたしは強くなんかないよ。ただ、現実逃避が上手なだけ。」

沙耶の視線は自然とケイスケの方へ向かった。

「あたしは逃げているだけ。」

沙耶は自分にしか聞こえないような小さな声で呟いた。静まり返った病室でなければその声はハヤテまでは届かなかっただろう。

「逃げてなんかんかないよ。逃げているのは俺だ。」

「え?」

沙耶は勢いよくハヤテの方へ振り返った。

「え?」

ハヤテは沙耶に振り返られて初めて自分が発した言葉を認識した。ハヤテは知らず知らずのうちに呟いていたのだ。

「ハヤテ君が逃げてるて、何から?」

「え?いや、その……」

ハヤテは言葉を濁した。自分は、ISROの唱えるセカンドアースの件やアンダーの求める時空の剣について向き合い解決しなければならないにもかかわらずそれを放棄してここで寝ていることしかしていない。沙耶は覚悟を決めたというのに一方のハヤテは何もせずにただここにいることしかしていない。それがハヤテにとって逃げでしかないように思えた。

しかし、それを沙耶には打ち明けられなかった。打ち明ければ、巻き込んでしまうことがわかっていたから。

沙耶やケイスケなどは絶対に巻き込みたくない。ハヤテはそう思っていた。勿論、詩音や辰郎、葵、由紀なども巻き込むわけにはいかない。誰も巻き込むわけにはいかない。例え、この世界がISROの言う通りに異常気象などで生きることが出来なくなるとしても時空の剣を渡さずに人類を滅亡させるか、それともISROに時空の剣を渡し人類の半分をセカンドアースへ向かわせるのかを選ばなければならない。それが今のハヤテの使命なのだ。

ハヤテはふと、辰郎の話を思い出した。西園寺宗十郎の話だ。彼は殺し屋を殺すことが使命だと言っていた。正義のために人殺しをすると言っていた。それが、それこそが時空の剣を持つ者の使命なのだと。

それならば正義のための人殺しは仕方のないことなのだろうか。正義のための犠牲は仕方がないことなのだろうか。そもそも正義とは何なのだろう。

なにもすることなく、すべての人を見殺しにすることが正義なのだろうか。

それとも、多くの犠牲を出してでも半数を助けることが正義なのだろうか。

考えれば考えるほど、ハヤテのお頭の中は深い混乱の渦にのまれていった。

「できた!!」

ハヤテが困っていると、ケイスケが声をあげた。自然と沙耶とハヤテの二人はケイスケの方に目をやった。ケイスケはとても嬉しそうにしている。

「何ができたの?」

沙耶が優しい口調でケイスケに問いかけた。ケイスケは完成した作品をハヤテと沙耶に見せるように持ち上げた。

そこには学校でサッカーをする5人の姿があった。

「へー。上手だね。」

ハヤテは本心からその言葉を発した。小学1年生らしい絵だけれど、ハヤテはその絵を一瞬で好きになった。ケイスケが想像の羽を目一杯広げて描いたその絵は暖かくそれでいて悲しげに見えた。それがハヤテの心をくすぐった。

「これはケイスケ君?」

沙耶が絵の中で一番小さいサッカーボールを蹴っている男の子を指さして訊ねた。

「うん。そうだよ。これが僕で、これがお父さんでこれがお母さん。」

ケイスケは指をさしながら説明をする。

「それで、こっちが看護師さんでこっちがハヤテ君!!」

「え?」

ハヤテはケイスケの絵に登場しているのが自分だと知るととても驚いた様子だった。まさか自分なわけがないと思っていたので不意打ちだった。

「どうして、俺なんかを描いてくれたの?」

「だって、ハヤテ君は僕の友達だから。」

ケイスケは無邪気な笑顔で言う。

「そっか。ありがと。」

ハヤテは心から嬉しく感じた。この子を守らなければ。そう感じた。

「あっ!」

ケイスケが声をあげた。

「どうしたの?」

沙耶が訊ねる。

「詩音お姉ちゃんたちを描くのを忘れた。」

沙耶は笑顔でケイスケの絵と向き合った。

「この辺に描けない?」

「うんとね。ここに詩音お姉ちゃんを描いて、ここに葵お姉ちゃんを描いて、こっちに由紀お姉ちゃんを描く。」

ケイスケはそう言い残すと、さっきまでいた机に戻った。


ああ。きっと彼の世界はまだまだ狭いんだ。ケイスケはもっと広い世界を知るべきなんだろう。学校に行って、たくさん友達をつくって、遊んで、笑って、たまに喧嘩して。ハヤテも経験できなかったことだが、それはケイスケには必要なんだ。

そのためにも決断をしなければ。護る決断を。数分間ハヤテはケイスケが絵を描く姿を眺めていた。沙耶は途中、仕事があるからと部屋を出ていった。沙耶が出ていったあともケイスケは絵を描き続けた。

言葉を発することなくただひたすらに紙に色鉛筆をこすりつけた。その様子をただひたすらに眺めていた。病室にはただ、紙と鉛筆のこすれる音と外から漏れる病院の音だけしかしなかった。

「できた!!!」

さっきよりも元気よくケイスケは言った。そしてケイスケはハヤテのベッドに潜り込んでハヤテの横に陣取った。ハヤテもそれを快く受けいれた。

「おっ。詩音たちもうまくかけたね。」

ハヤテはケイスケに微笑みかけた。

「僕ね、病気が治ったらみんなでサッカーがしたいんだ。」

ケイスケはそう打ち明けた。

「僕、昔から運動はしたらダメだったんだ。だからね、病気が治ったら思いきりボールを蹴るんだ。」

ケイスケはただただ無邪気にそう言った。その無邪気さがハヤテにはうらやましかった。いつからか冷めたような人間になっているように感じていたからだ。

人を殺すことで人として大切な部分が欠落してしまっていたのだ。だからこそ、ハヤテはそれを取り戻したいのだ。だからこそ、普通の生活がしたかったのだ。ケイスケはハヤテにそのことを思い出させた。

「僕はサッカーをするまでは死なない約束なんだ。だからそれまでは頑張るんだ。」


そうか。ケイスケにとって世界とはこれなんだ。何一つ欠けてはいけないんだ。それがすべてだから。世界とは何か一つでも欠けてはいけないんだ。だからISROのことを認めるわけにはいかないんだ。

やっとわかった気がした。

答えが見えた気がした。

そうだ。すべて救えばいいだけの話ではないか。

何も見捨てることなく、すべての人が助かる方法を編み出せばいいだけの話ではないか。何も選択肢は二つだけだということはない。選択肢は無限にあるんだ。未来は無限大に広がっているんだ。

俺はその中ですべての人を助ける選択肢を選び出せばいいんだ。ハヤテの目はさっきとは違い強い意志を持った目をしていた。

「僕、もう部屋に帰るね。これハヤテ君にあげる」

ケイスケは絵をハヤテに渡し病室を出ていった。ハヤテは一人になった病室でいつまでもその絵を眺めていた。


6月17日火曜日 午後3時48分 朝野医院


ケイスケが病室を出てまだ数分しかたっていなかった。ハヤテはいまだにケイスケの描いた絵を見ている。

『コンコン』

病室のドアにノックがあり、直後ドアが開いた。ハヤテは音に反応しドアの方を見た。

「やっほー。」

やってきたのは詩音たちだった。昨日、ISROの発表の後、あれほど泣いたにも関わらずケロッとしていた。

「今日はお客さんを連れてきたよ。」

詩音たちの後に、身長の小さな男の子が入ってきた。

「えっと……大竹龍亮オオタケリュウスケです。」

リュウスケは緊張気味だった。

「リュウスケ緊張しすぎだって。」

そんな様子を詩音が笑い飛ばす。その横で由紀がもじもじしていた。由紀はわかりやすいほど顔に出るタイプだと改めて認識した。

「俺はハヤテ。よろしく。」

「まあまあ、ちょっと座ろうよ。」

詩音は4つ椅子を並べて座った。さりげなく由紀の隣にリュウスケを座らせることも忘れずに。

「それよりさー。昨日あんな事があったのになんか不思議だよね。」

詩音が話題を振る。

「でも今日の授業はほとんど潰れたし明日からのテストも延期。ま、学校閉鎖だから仕方ないか。」

葵が寂しそうに言った。

「それにこの前の土曜日に学校の窓ガラスが割れて血が飛び散ってて警察沙汰になっていたなんて知ってた?」

「そうそう。なんか最近怖いよね。」

詩音と葵が二人で話をしている。なぜか由紀はいつもより格段におとなしい。ハヤテはこんなにも変わった由紀に少し面白いなと感じた。

「あの……」

リュウスケがそろーっと声を発した。

「どうして俺をここに呼んだの?」

核心を突いた質問に詩音たちはあわあわおどおどした。

「俺に友達が欲しかったから。」

見かねたハヤテはそう言った。やっと気を使うということを覚えたのだろう。

「俺、友達少ないからね。」

これはハヤテの本音でもあった。

「あ、そうだったの。」

納得したような表情を見せたリュウスケを見て詩音たちは安堵した。

「あ……あのさそろそろあたしたちは……ねえ。」

歯切れの悪い言い方で由紀が詩音たちに外へ行くよう合図する。

「じゃあ、あたしたちは用事があるから後は男同士で好きなだけ話し合ってて。」

詩音はそういうと立ち上がった。それを見て葵も席を立ち三人は病室を後にした。


「用事って何なんだろう。」

リュウスケは不思議そうに彼女たちが出ていったドアに呟いた。詩音たちが出ていったあとは数秒間沈黙が続いた。あったばかりの男二人だとお互いに何を話せばよいものかわからないものなのだ。気を利かせたのはリュウスケの方だった。

「ハヤテはその……どこの学校行っているの?」

「俺は学校は行ってないよ。」

ハヤテはありのままを答えた。

「あっ。そうだったの。」

また沈黙が起こった。

「事故でけがしたんだって。詩音たちから聞いたよ。大変だったね。」

「事故?あー。そうなっているのか。」

「そうなっているって?」

「いやー。何でもないよ。大変だったよ。事故」

また、会話が途切れた。リュウスケは沈黙を避けるため必死で会話のネタを探した。一方のハヤテは由紀に頼まれた質問をどういうかを考えていた。

『リュウスケに色々聞いてほしいの……』

色々と言われても……

由紀が気になっているのは一体何なんだろう。ハヤテには見当もつかなかった。


「あのさ、昨日ISROの発表あったじゃん。あれ……どう思う?」

会話の種を探していたリュウスケが苦し紛れで話題を出してきた。

「えっと……そうだね。俺には答えられないかな。」

ハヤテは返答に困って曖昧な返事しかできなかった。

「そういうリュウスケはどう思うの?」

その問いかけに待ってましたと言わんばかりリュウスケは身を乗り出した。

「俺はセカンドアースというものが実現するのかどうかが怪しいと思うんだよね。」

それは興味深い話だった。

「昨日の説明では 別の時空間へ行くという話だったんだけどそんなことが今の科学でできるとは思えないんだ。たかがコンピュータの性能を良くしたからって時空の問題については、解決できないよ。」

「どうして、そう思うの?」

ハヤテは素朴な疑問をぶつけた。

「時空というのはそれぞれがそれぞれの時空よりも低いものしか認識できないものなんだ。」

ハヤテは首を傾げた。リュウスケの言っている意味が理解できない。

「つまり、俺たち三次元に生きている者は二次元かもしくは一次元しか認識できない。だから、三次元同士の認識も出来ないんだ。」

リュウスケが砕いた説明をしてもハヤテはぴんと来ない。

「つまり、二次元に生きるものはほかの二次元のものを認識できないのと同じなんだよ。そして、二次元にいるものは三次元にいるものを認識できない。だから俺たちは四次元も五次元も計算なんかで、わかるはずがないんだ。もし、それがわかるものがいるとすればそれはここでは神と呼ばれるものだよ。」

「神か。」

ハヤテは呟いた。時空の剣は神の産物なのだろうか。これを扱えばハヤテは神に近づくのだろうか。


「俺は前から宇宙の外側に興味があったんだ。そこにあるのは無だと言われている。でもそれは違うと俺は思うんだ。そこにあるのは俺たち人間が認識できない次元。つまり、三次元以上の何かがあるはずなんだ。」

リュウスケの話に熱が入る。

「セカンドアースは俺が思うにその宇宙の外のどこかの次元とつながっているはずなんだ。そんなところへ行くなんて不可能だと考えるのが普通じゃないか。だから、俺はISROのセカンドアース移住計画は信用できないと思うんだ。」

とても面白い話だと思った。

リュウスケの言っている話が仮に正しいとすると、時空の剣はそのセカンドアースと地球をつなぐ懸け橋になるのだ。しかし、ハヤテらが他の三次元のものを認識できないのだとするとセカンドアースも認識できない。

しかし、時空の剣が三次元以上のものならばそれで三次元を自由に操ったり新たな三次元をつくることもできるのではないだろうか。ハヤテはその疑問をリュウスケに聞くことにした。


「もし、この三次元に四次元以上のものがあったとしたらそれで三次元を操ったり、創ったりしたりすることはできる?」

「うーん。なかなか面白いね……でも、この三次元に四次元以上のものを持ち込むのは難しいんじゃないかな?」

リュウスケは腕を組んで考え込んだ。

「いや待てよ。もし、四次元以上のものが持ち込めるとしたらそれが超常現象のようになって現れるのかも。きっとそうだ。ナスカの地上絵だって、エジプトのピラミッドだって四次元のものがあれば簡単にできる。」

ハヤテにはわからない単語が並べられた。

「もしそうだとすれば今まで解明されなかったことが説明できるかもしれない。ということはISROは四次元以上の何かを手に入れたってことなのか?」

またもリュウスケは考え込んだ。

「だとするとまずいかもしれないな。」

リュウスケはきまり悪そうな顔をする。

「本当にここに残ることはできなくなる。」

「今まで、どうせ大丈夫だろうと思っていたけど、本格的にまずいよ。助かる方法は一つ。セカンドアースへ行くこと。それ以外にはない。」

リュウスケの断言によりハヤテが思い描いたみんなで助かろうというのが音をたてて崩れ去った。

「セカンドアースへ向かう道、ISROこそノアの箱舟となるんだ。」

リュウスケの声は重く響いた。ハヤテはノアの箱舟を知らないものの今の現状に絶望した。

「明日、選ばれるといいね。」

リュウスケは寂しそうに言った。自分で自分の首を絞めることになるなんて思いもしなかった。

未来は無限大。それは幻想でしかないようだった。

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