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銀の星細工師  作者: ラフ
二章 王宮パーティーへご招待
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006

 華やかな音楽が外まで響いて城から光が漏れて宙に舞う。そのせいで冷えた夜の空気も温かく見えた。

 すれ違う人たちは誰もかれもが優雅に歩き高貴な雰囲気をまき散らしていく。


(どうしよう……とてつもなく場違いな気がする……)


 ティアラは城門のすみっこに縮こまり、小さくため息をこぼした。


 今日は国王主催のパーティーのため王族や貴族、名のある著名人たちが城に集まっている。なおパーティーには招待状を受け取ったものだけが入れティアラも当然入場出来るのだが、

(どうしてもわたしが入れるような場所じゃないんだよね……)

 生まれも育ちも下町で高貴な雰囲気はなし、加えて現在若い娘が一人、の状況に堂々と招待状を見せながら城に入る勇気はなかった。

 パーティーは大体パートナーがいるものだ。

 相手は父親でも彼氏でも男友達でも、祖父だっていい。たまに女性が一人で歩く姿もあるが未婚者は必ず誰かしら男性が付き添っているものだ。


「こんなことならキースを無理やりにでも引きずってくればよかったー!」

 そう暗闇の中で叫んだ時、誰かが近づいてくる気配がした。


「誰かいるのかい?」


 貴公子のような物腰に琥珀色の髪の毛の青年が、草むらの隅っこでうずくまっていたティアラに向かって声をかけた。

 ティアラはびくりと肩を揺らしながら不審者と思われては困るのでそっと立ち上がる。

 気まずそうな顔のティアラを見たとき、青年の顔はゆっくりと微笑んだ。


「どうしてこんなところに可愛らしいレディがいるのなかな? 暗闇じゃせっかくの美しい姿も見えないよ」

 

 ティアラの手を青年は優しくつかんで招くように草むらから出る。途端明かりが降り注いで少しだけ眼を細めた。

 明るい光の下でみる青年は暗闇で見るより琥珀色の髪の毛が輝かしく見えた。優しそうな相貌に一目で高貴だと分かる格好をしている。

「ほら、やっぱり明るい所の方がいい。君の銀の髪に青いパレオのドレスは良く似合っているね」

 整った顔が笑いかけてきて、ティアラは頬は一瞬にしてほのかに染まった。


「あの……えっと……ありがと、うございます」

 たじたじながらも頭を下げる。こんなキラキラした世界など今までひとかけらも知らなかったから礼儀さえ合っているのかどうかわからない。

「思ったままを口にしただけだから別にいいんだ。それより君の連れは?」


 ティアラはぎくっと体を硬直させた。やはり未婚者にパートナーがいないのは不自然だろうか。

「そのえっと、連れはちょっと今……お腹を下して、お手洗いに! きっと、もう帰ってこないかなーなんて……あははは」

 乾いた笑い声が虚しく響く。どう考えてもアウトだ、これは。

 どうしようかとギュッと目をつぶったとき、またふいに青年が腕を引っ張った。


「じゃあ僕と城へ入場しようか。あいにく僕も今回は連れがいなくて……駄目かな?」

 不安げに覗き込む青年にティアラは首が引きちぎれんばかりに横へ降った。そんな駄目なんてものはない。

(もしろ有難いくらいです! ありがとう、運命の神様!)

 ティアラの行動に青年はくすりと笑うと腕をつかむのをやめて、うやうやしく掌を差し出した。


「遅れたけど、僕の名前はヒュース・ニューマント・ディネリバ。ヒューって呼んでほしいな」

「わたしはティアラ・グレイス。よ、よろしくお願いします、ヒュー」

 

 そっとヒューの掌に自分の手を重ねる。ヒューは包み込むようにティアラの手を握ると城門へ引いた。


「行こうティアラ。きっと君はみんなの注目の的になるだろうね」

 それはきっとお世辞だろう。

 それでもティアラは嬉しくて、銀の髪をなびかせながら彼の後を追った。

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