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破廉恥な行為で悪役令嬢は婚約破棄と断罪回避を試みる~地味なざまぁもできていた~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


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詰んだ――。

 ホールに用意されたステージの中央に来たゴーマンは、一礼をすると、おもむろに口を開く。


「父兄の皆様、本日はお忙しい中、卒業式に続き、王立ケイナー学園の卒業舞踏会にお集まりいただき、ありがとうございます。卒業生総代として、この場で挨拶をするつもりでいたのですが……」


「ゴーマン殿下!」


 覚悟を決めた私は、腹の底から彼の名を呼ぶことができた。

 私の声はホールに響き渡り、皆が一斉に私を見る。


 父親はぎょっとした顔をしていた。


 テールコート姿のゴーマンは、不審そうな表情で私を見て、でも婚約者であるため、無視するわけにはいかない。よってこの場にふさわしい笑顔を浮かべ「キャメロン。どうしましたか?」と尋ねる。


「皆様、私は、スチュワート伯爵家の長女、キャメロン・スチュワートです。こちらのゴーマン殿下の婚約者。今日は殿下に招待され、こちらの卒業舞踏会に足を運びました。素敵な殿下の卒業を祝うため、特注のドレスを着てきたのです。今日はなんとしても、ゴーマン殿下とダンスをしたいと思いまして」


 私の言葉に会場は、ざわざわし始める。


 ダンスをしたければ、挨拶が終わるのを待てばいいのに――という空気を読まない私の行動に対する非難。特注のドレスを着てきたというのに、床まで届くロングローブを着ている――言葉と行動が合致しないことへの不信を指摘する声が聞こえた。


 非難と不審の声を受け、気持ちが折れそうになる。


 落ち着こう。大丈夫。


 一度深呼吸をして、決意を固める。


「キャメロン。今は、総代として僕は挨拶をしているのだが」


 ゴーマンの冷たい声に、再度心が萎えそうになる。

 唇をぎゅっと噛み、その後、肩の力を抜き、気持ちを切り替えた。


 明るい声で、しかも笑顔で、告げることができた。


「ですがどうしても、この新しいドレスを見ていただきたくて!」


 私が着ていたロングローブを脱ぐと、ホール内がシンと静まり返る。ゴーマンも目を丸くして、言葉が出ない。


 私のモーブ色のドレスは、スカート部分が七段ティアードになっている。ティアードには大小濃淡ありの花びらが散りばめられ、実に豪華絢爛。身頃には立体的な花が飾られ、まさにこのイベントのために用意されたドレスだった。


 だが。


 私はこの七段ティアードのうち、三段分の生地とチュールをはずしていた。つまり前世で言う膝上丈のミニスカート状態になっている。


 この乙女ゲームの世界では、脚とはスカートで隠しておくべきものだった。脚を見せる=下着を見せるに等しい。つまり今の私は公衆の面前で、下着を見せている状態。


「キ、キャメロン、なんてことをしている……」


 父親が後ろから近づくのを制し、私はゴーマンに告げる。


「殿下。殿下の婚約者である私の脚は、美しいと思いませんか? カモシカのようにほっそりとした脚だという自負があります。隠しておくには勿体ないと。こんな美しい脚を持つ婚約者をお持ちになった殿下は、果報者ですよね? 私のような婚約者がいて、殿下はお幸せでしょう?」


 これだけ“婚約者”を連呼したのだから、ゴーマンもさすがに気が付くはずだ。案の定、ハッとした表情となり、私を睨む。


「キャメロン……今すぐ、そのローブを着るんだ!」


「まあ、どうしてですの?」


「分からないのか? 君がしていることは、僕とここにいる多くの人達にとって、侮辱だ! 脚をそんな風に露出するなんて、非常識。恥を知れ!」


 これには父親が私の肩に、ロングローブをかける。

 仕方ないのでロングローブに袖を通すと、ゴーマンが告げた。


「こんな公衆の面前で脚をさらすなんて、伯爵家の令嬢としても、僕の婚約者としても、許されることではない……。キャメロン、君との付き合いは長く、こんなことを告げるのは不本意ではあるが……」


 そこでゴーマンの口元が、ニヤリと笑っているのが見えた。彼から少し離れた場所で、彼の姿を見守るヒロイン、マーガレットはもう笑顔になっている。


「キャメロン・スチュワート。君の今の行為は、僕との婚約を破棄するに、値するものだと思う。残念だよ。キャメロン、君との婚約は破棄だ!」


 これを聞いた私は心底安堵し、即答する。


「殿下、大変申し訳ございませんでした! 確かに冷静に考えると、とんでもないことをしたと思います。王家からの婚約破棄の申し出。異論はありません。婚約破棄に同意します」


 背後にいる父親が、息を呑んでいるのが分かる。

 この場で父親だけが、理解してくれていた。

 父親が断罪されないようにするため、苦肉の策で、私がこんなことをしたと。背に腹は代えられないとはいえ、こんなことをするの、私だって本当は嫌だった。でもゴーマンが私に婚約破棄を突きつける理由を咄嗟に作るには、こうするしかないと、考えた結果だ。


 ただ、これはここで終わるのか……という問題もあった。


「キャメロン、君の行為は婚約破棄だけで終わると思うか? 君のその脚の露出は、実に破廉恥だ。これは王族である僕を侮辱する行動でもある。王族である僕は、君のことを不け」


 ああ、ダメだった!

 恐れていた“不敬罪”をゴーマンが持ち出そうとしている。断罪回避は失敗だ。この国で王族から問われる不敬罪は、問答無用で死刑になる。父親を助けることはできた――と思う。でも私はダメだった。


 詰んだ――。

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