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破廉恥な行為で悪役令嬢は婚約破棄と断罪回避を試みる~地味なざまぁもできていた~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


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3/9

断罪の舞台へ

 地面すれすれの長さのロングローブを着て、私は井戸から離れ、卒業舞踏会が行われるホールへ向かう。


 王宮の廊下に戻ると、黒のジャケット、ベスト、ズボンという姿のアントニーと、濃紺のワンピースに白いエプロンをつけた専属侍女であるクララが待っている。


「お嬢様、本当にそれでよろしいのですか……?」


 赤毛で三つ編みのクララが、心配そうな顔で私の顔を見る。私より八歳年上のクララだが、童顔なので、同い年ぐらい見えた。


「ええ。もう覚悟はできたわ。お父様を助けるにはこれしかないと思うの。大丈夫よ」


 クララに続き、アントニーは、精悍な顔をさらにキリッとさせ、こんなことを口にする。


「お嬢、もしもの時は、僕が動かせてもらいます。スチュワート伯爵のことは勿論、大切です。ですが僕はお嬢の専属従者。最優先はお嬢です」


「ありがとう、アントニー。でもそうならないよう、なんとかするわ」


 エントランスホールまで二人に見送ってもらい、馬車に乗り込んだ。


 卒業舞踏会が行われるのは、学園の敷地内にあるホール。各種式典でも使われるが、学生主催の舞踏会も行われる収容人数がとても多いホールだ。


 ゴーマンは卒業式を終えると、直接そのホールに向かうことになっている。よってゴーマンと落ち合うのは、ホールに入る前のロビーで、そこで彼にエスコートされ、会場入りすることになるのだけど……。


 ゴーマンは私をエスコートするかしら? あの場にマーガレットがいるなら、彼女をエスコートしそうよね。それならもう、それで構わないわ。


 こうして本来であれば通うはずだった、王立ケイナー学園に到着した。


 レンガ造りの校舎を通過し、卒業舞踏会が行われるホールのエントランスで馬車から降りる。そこは多くの父兄でごった返していた。


「キャメロン!」


 声の方を見ると、父親であるスチュワート伯爵がいる。


 私と同じ、シルバーブロンドの髪はきっちりオールバックにして、黒のテールコートを着ていた。すらりとした長身の父親は、舞台俳優のようで、年齢よりも若く見える。貫禄を出すために、鼻の下に髭を生やしているが、それでもやはり若々しく感じた。


 そんな父親の青みがかった紫の瞳には、明らかに不安の感情が見て取れる。


 既にアントニーが知り得た情報は、父親に共有されており、どうやら父親は無実を証明するための資料を持参したようだ。父親の後ろには本来、屋敷にいるはずのヘッドバトラーがいて、書類が収められているアタッシュケースを持っていた。


「お父様。ゴーマン殿下が求めているのは、私との婚約破棄です。お父様の冤罪の件には触れられないよう、私が善処しますから、ご安心ください。……ただ、一つだけ、お父様をがっかりさせる娘で本当にごめんなさい」


「!? キャメロン、一体何の話だい? 父さんはやましいことは何もない。ゴーマン殿下が何を言おうが、父さんは自分の無実を主張するだけだ。……ところで今日の卒業舞踏会、ゴーマン殿下は、キャメロンのことをエスコートするつもりなのかい?」


 父親の言葉に、エントランスからロビーの方を見るが、ゴーマンの姿はない。


 そこでロビーにいた教師らしき男性に尋ねると、ゴーマンは既にホールの中にいるという。同級生の、公爵家の令嬢をエスコートしていると教えてくれたのは、私がゴーマンの婚約者とは思っていないからだ。


 学園にも入学していない。王宮に引きこもり状態で、妃教育と家庭教師から授業を受けていたのだ。知らなくても当然だろう。


「キャメロン。父さんがエスコートするから、ホールに入ろう」


 父親が私を励ますように、声をかけてくれる。

 優しい父親だった。この父親を断罪させるわけにはいかないと、改めて噛み締めた。


「ありがとうございます、お父様」

「ではそのローブは、クロークで預けるかい?」

「いえ……これはこのままで」


 驚き、不思議そうな顔で父親は尋ねる。


「!? そのローブを着たままで……? せっかくドレスを着ているのだろう?」


 せっかくドレスを着ている――まさにその通り。舞踏会なのだ。皆、着飾ったドレスで存在感をアピールするもの。


「そう……です。でもこのままで……」


 理由を言わず、ローブを着続ける私に、父親はかなり訝し気な表情になってしまう。それでもしつこく詮索せず、エスコートしてくれる。これにはもう、大感謝だ。


 仮面舞踏会ならまだしも、卒業舞踏会でロングローブを着たままホールに入場するのは、かなり違和感があると分かっている。でもこうする必要があった。


 ただ、こんな姿なので、なるべく大勢が入場する際に紛れ込み、ホールの中に入ることにした。


 ホールに入ってしまうと、そこには大勢の卒業生と父兄がいるので、ローブ姿で入場しても、なんとか目立たないで済みそうだった。そのまま壁際に移動し、その時を待つことにした。


 ゴーマンは卒業生であり、この卒業舞踏会では、総代として挨拶をすることになっている。その挨拶の時に、悪役令嬢キャメロンの断罪がスタートだ。恐らく、父親を断罪するのもそのタイミングに違いない。


 そう予想ができていたので、ゴーマンの卒業を祝うために来場していた国王陛下夫妻が挨拶をし、続けて、校長、理事長、父兄代表、そして……卒業生総代としてゴーマンの名が呼ばれた時。私は姿勢を正した。

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