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プロローグ
「勇者は本当に正しかったのか。」
その一文はある日突然世界中にばら撒かれた。
送り主不明。発信源不明。
だが、その問いの影響力はあまりにも強すぎた。
世界が揺れた。
「何をいまさら」
「ふざけるなよ。」
「いや…でも…」
街頭の大型蛍光掲示板。テレビ画面。携帯端末。新聞の一面。
あらゆる場所で同じ言葉が躍る。
「勇者は本当に正しかったのか。」
その問いは、
—— “世界の前提”を壊しかけていた。
——人々は知っている。
200年前、
勇者は、勇者一行とともに魔王を打ち倒し、世界を救った。
分断を終わらせ、世界を平和に導いた英雄だ。
それは、疑う余地のない“事実”だった。
——だからこそ、
その「正しさ」に疑問を投げかけるなど
許されるはずがなかった。




