第12話(1) さあ、みなさん、再演ですわよ!
《《2026年11月、駒場祭の楽屋》》
ステージの熱気がまだ体に染みついたまま、私たちは楽屋に戻ってきた。汗とベルベットの甘い匂いが混じり、誰もが息を荒げている。真理子は満足げに扇子を広げ、アンヌ先生は無表情のまま水を飲んでいる。恵美さんはスマホで動画を確認し、凜花は「やったー!お嫁に行けないレベルだったね!」と笑っていた。
凜花が私の肩を叩いて言った。「遥、"Total Eclipse Of The Heart"のあなたのパート、男子がうっとりして見てたよ。可愛かった!」
……私、お嫁に行けるのかしらね?
……私たち『ゴスロリ文化会』の横の、まだ着替えていない『AKIBA』と『エヴァンゲリオン』のコスプレ衣装たちの『コスプレっ子❤️』の面々はお通夜だった。インスタ、YouTubeのアップ動画は、圧倒的に!圧倒的に、前半30分の『コスプレっ子❤️』ではなく、後半30分の『ゴスロリ文化会』だった!勝利!
「あ、あんた、ここ、音、外してんじゃん!あんたのせいよ!」
「あなたこそ、歌詞、忘れて口パクしてんじゃないの!」
「なにを~!」
「やるっての?」
エヴァンゲリオンの綾波レイが胸ぐらをつかみ、トップスがズルッと下がってピンクの胸ポロ。相手も負けじとマリ・イラストリアスのスカートを引き下げ、紫のハイレグが丸見えになる。
その横では、前田敦子が板野友美に馬乗りになって髪を引っ張り、板野友美が股間を蹴り返す。双方のパンツが完全に露出していた。
ステージでやれば良かったのに……。
『コスプレっ子❤️』の部長、美少女、遠藤女史が真理子の横に来て、「完敗だわ。売上の七割もしょうがないわね……」と言った。え?そんな話をいつの間に?真理子、ぬっけめないわね!
「まあ、しょうがないですわ。遠藤さんも『コスプレっ子❤️』を辞めて、こちらにいらしたら?」真理子が優雅に微笑む。
「……ゴ、ゴスロリ、買ってくれる?」
「買えますわよ。でも、ハイレグパンツ見せが条件ですわよ」
「パンツぐらい、同じコスプレ、無問題だわ……あ~、悔しい!」
その時、楽屋のドアがノックされた。
「失礼します。音楽プロダクション『アルファ』の担当、佐藤と申します」入ってきたのは三十代後半のスーツ姿の男性。手にタブレットを持っている。「今日のライブ、勝手に収録させていただきました。素晴らしい……本当に素晴らしいです」
「ありがとうございます」と真理子と遠藤女史が頭を下げた。
「収録をしたのですが……これをYouTubeに公開、無課金と課金とで、『コスプレっ子❤️/ゴスロリ文化会』認定の公式動画で配信できませんか?ギャラは収益の20%お支払いいたします」
「あら?20%……遠藤さん、どうなさいます?『コスプレっ子❤️』も商品価値があって、よろしかったですわね」
「……佐藤さん、私たちの『コスプレっ子❤️』前半部と『ゴスロリ文化会』後半部を通しですか?」
「……分けようと思ってますが……」とちょっとバツの悪そうな佐藤さん。
「……真理子、公式認定動画は受けても良いんじゃない?」
「いいわよぉ」
「佐藤さん、公式認定動画、お受けします。ただし、『コスプレっ子❤️』前半部は不要です。恥の上塗りはプライドが許しません!ただし、収益の20%は主体の『コスプレっ子❤️』と『ゴスロリ文化会』の半々でお願いします!」と遠藤女史は、真理子にアカンベエをした。
「あら、遠藤さん、もったいないじゃないですか?それでも、私たち、構いませんけど」と言うけどさ、私と凜花、恵美さんとアンヌ先生の承諾を得ないの?……得ないのだよね、真理子だから……。
遠藤女史が自分たちの方に帰っていった。
佐藤さんが小声の内緒話で、「特にゴスロリ文化会の皆さん。パンツ丸見えの演出、観客の反応、すべて計算通りでしたね」と言う。
真理子が優雅に微笑む。
「ありがとうございます。企業さんに注目頂いて、光栄ですわ」
「実は……第二弾のコンサートを、私どものプロダクションでマネージメントしませんか?女子高生制服コスプレ、陸上部ユニフォーム……究極のハイレグボトムで」佐藤さんはすぐに切り出した。
「45分から60分ぐらいのライブ形式で、構想は、公開ステージとスタジオ収録です。ギャラは……」
「ギャラは?」済まし顔の真理子。真理子がスカートの裾を指先でイジイジと摘まみ、少しだけ持ち上げた。黒いレースの勝負パンツがチラリと見える。
佐藤さんの目が一瞬泳いだ。「動画の編集権・著作権・販売権をすべて『アルファ』に譲っていただけるなら……1000万円で如何でしょう?」
真理子は微笑みを崩さず、膝上のラインを露わにするように、少しだけスカートをたくし上げた。黒いレースの端がチラリと覗く。
「もう一声、欲しいところですわ」真理子は微笑みを崩さず、さらにスカートをたくし上げた。
「ただでも良いという子もいますが?」佐藤が苦情を言う。
真理子は肩をすくめた。
「でも、佐藤さん。私のパンツを見て、1000万と言いましたわよね?それは、私たちの商品価値ですわね?」
「……」
「それが、私たちの商品価値ですわ」
「……では、1200万円!」佐藤さんは喉を鳴らし、額に汗を浮かべて言い直した。
「もう一声!」
真理子の指先がさらに深くフリルを分け入った。黒いレースの勝負パンツが、露骨にその姿を現す。
「……1500万円!」
「契約成立ですわ」真理子はにこやかに微笑み、立ち上がると、今度は横に立っていた私のゴスロリのスカートをサッとめくった。
「ついでに、おまけで……こういう脚です。サンプル紹介ですわ」私の黒いハイレグパンツが、佐藤さんの目の前で丸見えになる。
「おい……真理子!私!?」
佐藤さんは頭を抱えながらも、その視線は釘付けになったように私の脚を凝視していた。……私の脚に、1500万の価値が乗ったっていうの?
真理子は悪戯っぽく笑った。
「これで第二弾、決まりましたわね。タイトルは……『ゴスロリ文化会、第二弾 ~制服と陸上部とハイレグの夜~』」
遠藤女史が遠くからこちらを見て、悔しそうに唇を噛んでいた。七割持っていかれた反撃は、結局真理子の完全勝利だった。
「佐藤さん、私たちの他に、優秀な男性陣もおりますの。デュエットをくわえたら、もっと魅力的なステージになりますわよ。練習段階で、見てくださらないかしら?」
「真中さんが言われるなら、男性のオーデションもしますが、推薦を受け付けますよ」
「了解です。では、契約書類とかは後日、別の席で」と真理子と連絡先を交換して、佐藤さんは帰った。
これ、悠馬たち男性陣も加わるってこと?どうなるの?何の曲を演奏するのかしら……悪い予感が……。
でも、私たちは再びステージに立つことになった。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※飲酒喫煙シーンが書かれてあります。
※性描写を含みます。




