表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄され続きの騎士は想いが重い王女の愛で進撃す!  作者: ふみんのゆめ
【長めのエピローグ】漢、そして漢たちの夢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

350/391

1.漢、恋敵と共闘す(意見はその場合わせです)

 ユリウスでさえ信じられなかった。


 無事な顔を見せてくれたプリムラと断腸の想いで離れた。戦いは終わっていない。まだ王国への侵攻を阻止した段階にすぎない。逆を返せば、帝国ときっちり片を付ける絶好の機会だ。


 権力による腐敗や亜人の扱いなど、いろいろ問題はある。けれども何よりだ。もう二度とプリムラに危険が及ぶような事態を招いてはならない。


 詰まるところ、ウインの野郎! と闘志を激らせていたわけである。


 ディディエ卿並びイザークを始めとする四天(してん)に亜人が加わった帝都攻略の連合兵団へ合流すべく急いだ。きっちり防衛機構が施された帝都ベクセンである。籠城されたら陥すは容易でない。まだ城郭の前でうろうろしているだろうと踏んでいた。


 まさかであった。


 難なく門を潜り、街中に至っても馬を走らせられる。門番に告げられた場所まで、何の邪魔も入らなかった。


 入るはずもなかった。


 皇宮だけではない、帝国の要人が所有する家屋や建物の、いずれもだ。

 もぬけの殻だった。


 ユリウスの到着を待っていた者たちは皇宮の広間にて困り顔で迎えた。


「まったく連中の引き際は、嫌でも褒めたくなるわい」 


 ディディエ卿は全身でとするくらいの苦笑をしていた。


 帝国の皇帝とその側近は、どこへ向かったか。王国侵攻戦をくぐり抜けたユリウスたちならある程度の推察は立つ。後は裏付けに動くだけだ。


 既にイザークが手際よく調査の手配をしていた。ニンジャは無論のこと、まだ負傷が癒えていないベルやヨシツネも参加しているらしい。戦乙女と名乗っていたシスティアに対する尋問で判明する事柄も多々ありそうだ。


「ところでウインの野郎は、どうした? 俺はプリムラの今後を考えれば、あいつだけは放っておくなど出来ないぞ」


 思い切りユリウスが私情をぶち込んだところへ、私情で参戦したグネルス皇王が前へ出てくる。間違いなく美形であり公的手腕は誰もが認める優秀さであるものの、宰相や側妃ら近親には残念な男とされている。カナンはプリムラのこととなるとしょうもなくなるせいだ。今回も致命的な一面を如何なく発揮してきた。


「ユリウス騎士、いやここは同じ女性を想う者同士として、ユリウスと呼ばせてもらいたい」

「おお、いいぞ。さすが俺の恋敵(こいがたき)、その意気込みこそ良しだ」


 会話する当人同士は心が通じ合っているみたいだが、他者からすれば、なんで仲良く出来るかわからない。同じ一人の女性を巡るまではいいとして、立場が立場だ。一方の婚約者ではないか。何を堂々とお互い認め合っている、とディディエ卿あたりは指摘したくなる。でも妙に盛り上がっているみたいだから、様子見とした。


「ユリウスと同様、私もプリムラの暗殺を企てる不埒者は断じて許せない。この手で八つ裂きにしてやりたいくらいだ」


 かつてプリムラの暗殺を試みたカナンが激怒を隠さない。ツッコまれて当然なところだが、失念しているのか、熱情に打たれたか。たぶん前者であろうユリウスが、「そうだな!」と感極まっている。


「俺が恋敵と認めるだけはあるぞ。それで何か言いたいことがあれば、聞くぞ」

「それは嬉しいな。ではお言葉に甘えさせてもらおう。例の皇帝の皇弟(こうてい)……なんか言いづらいな。ウインと言ったな、この男の追跡を我が兵団に任せてもらいたい。きっとユリウスの期待を応え、私の怨讐を晴らしてみせよう」


 カナンは、こいつに任せたらマズいだろ、という内容でぶち上げてくる。さすがに周囲は止めに入ろうと思う。ユリウスが頼みを聞き入れそうな雰囲気を漂わせていれば、なおさらだ。


 他者が行かなくても良くなった。

 とことこ紫の騎兵服を着た者がカナンへ寄っていく。皇王の親衛隊に所属するヨシュア・ライズと身元を明かして、ユリウスへ割り込んだ無礼を詫びた。


「おお、おまえは皇都で俺の恋敵カナンと一緒に襲ってきたヤツだな」

「はい、私ごときを憶えていてくださいましたか。身に余る光栄です」


 懐かしそうなユリウスに、ヨシュアの態度は慇懃だった。もっとも言動は伴わず、あの節は婚約破棄されたことがあるかと訊かれて焦りました、とぶっちゃけてきた。そうか、そうか、はっはっは! と応じるほうも大概だ。


 カナンが不機嫌になっていた。楽しくしゃべっていたのに、と言いたげな顔つきで厳しく問う。


「いきなり割り込んできたからには何か申したいことがあるのだろうな」


 ヨシュアはユリウスへ向けていた砕けた態度から一転する。はっと姿勢を正した。


「具申したき儀がございます」

「なんだ、申せ」

「ここは帝都であれば、我らグネルス皇国兵にとって右も左も不明な場所であります。なればユリウス様の騎兵らにもっぱら従う形がよろしいか、と」


 確かにとする意見だった。進言されたカナンは、ぐぅの音も出ない。ヨシュアの言う通りだ、とユリウスの柔軟と言えば聞こえいいが要は風見鶏である。


 けれども実行まで移されなかった。


 直後に別の急使が飛び込んできたためだ。

 今まさに話題だったウイン皇弟を発見したとの報告であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ