騎士、謀る。
命令されれば、私に触れる!という事を知って、ルウイさんはとにかくチャンスを逃さない。
分かってたぜ、だがちょっとここはクールにいこうぜ?
私は18歳だ。こんな時だけ18歳だ。
ハンドクリームを再開できた時は、嬉しそうだし・・
頭を撫でると、蕩けそうな顔になるし・・
大変私が照れくさいのと、人間の尊厳!!と、複雑だ。
あとで調べたら、奴隷契約の内容を世界共通にする運動もあるらしい。・・・・そもそも奴隷がないのが一番良い。なんで、人間が人間を意のままに使えるようにするんだ。
翌日、スケート靴を持って街まで歩きながらルウイさんと、そんな話をする。
「・・奴隷って、オシムでは都市の方でもそんなに見ないから、あんまり深く考えた事なかったんですけど、あれってやっぱりどうかと思うんですよね・・」
ルウイさんは、静かに頷きつつ・・
「ホルスでは、戦果をあげた結果の報奨金代わりに奴隷を・・という文化が長かったので、お恥ずかしながら・・普通の事と捉えておりました。やはり国が違うと考え方も変わりますが・・、人間としての尊厳を考えらえれるトーリは素晴らしいですね」
ルウイさんに褒められて、ちょっと照れた。
前世はね、奴隷はいなかったの・・。私は社畜でしたけど。
「大事な人が奴隷になって、酷い目にあったら・・って考えたら、ちょっと他人事ではないかな?」
私がボソッと呟くと、ルウイさんは私を見て・・
手をぎゅっと握る。
「絶対に嫌ですね」
ルウイさんの真剣な瞳に、思わず笑ってしまう。
でしょ〜?みんな幸せが一番だと思うんだよね。
二人でそんな会話をしていると、街の中心に着いた。
スケート会場はすっかり出来上がり、小さな子が尻餅をつきながらも滑っている。・・可愛い。
「あ、トーリ!」
不意に声がして、振り返るとキリルとオーウェンさんが一緒にこちらへやってきた。オーウェンさんは、ルウイさんに会えて嬉しそうだ。大変分かりやすい。
「あれ?キリルとオーウェンさんは、お仕事?」
「ううん、オーウェンさん、あんまり街歩いてないっていうから、街案内!」
ニカッと笑うキリル・・。
なんだかんだで世話焼きだよね。
オーウェンさんはちょっと照れ臭そうに、私たちを見て・・
「お恥ずかしながら・・、仕事ばかり!とメルクさんにも注意されてしまって・・」
ルウイさんは、思い当たる節があるのか、小さく笑って・・
「・・いつもオーウェンには、世話になってばかりだったな・・。仕事ばかりにさせていたのは、俺の責任でもある。しっかり休んでくれ」
「ルドヴィク様!!」
オーウェンさんが、なんか感動の涙を流しそうなくらい感激してる。
そして、ルウイさん・・オーウェンさんと話す時は、やっぱり「俺」なんだなぁ〜・・。
そうして二人を見送ってからスケート場へ入る。
「・・そういえば、オーウェンさんとルウイさんは、上官と部下みたいな関係なんですか?」
ちょっと聞いてみた・・。
これくらいなら大丈夫かな?ルウイさんは、ちょっと笑って・・
「そうですね、最初はオーウェンは私の上官だったのですが、いつの間にか立場が逆転していまして・・、いつも私を中心に動いてしまうように・・」
「あ〜・・、すっごい心酔してますね」
なにせホルスからオシムまで追いかけてくるくらいだ。
ものすごい根性だよね・・。
スケート靴をベンチで履いて、立ち上がってベンチに座ったままのルウイさんを見ると、ルウイさんはちょっと眉を下げて微笑む。否定しないのね。
「ルウイさん、立てますか?」
「・・立てるとは思うのですが、とても久しぶりなので、あの触れる許可を?」
「あ、そうだった・・。触って下さい・・?」
え、なんかちょっとこれ恥ずかしいな?
思わず疑問のように言ったけど、大丈夫かな・・、ルウイさんの手袋の指先をそっと触れてみる。
よし、バチッときてないな?
そう思ってルウイさんを見ると、ニコニコ笑っている。
あ、そういえばさっき手を繋いでいたんだから、わざわざ触れていいって、言わなくても良かったんじゃないか?
ヒョイっと立ち上がったルウイさんは、そのまま抱きしめてきた!
己、謀ったな?!!!
「ルウイさん、ズルは騎士道に反します!!」
「今は、貴方だけの奴隷です」
「・・・言い方ぁ〜〜〜〜〜!!!!!!」
本当にこの騎士ってやつは!!!
油断も隙もないな?!
思いっきり手を引いてやると、嬉しそうに笑うので・・、スケート場のど真ん中に置いて逃げてやろうかと思った・・。




