騎士、倒れる。
キリルが言うには、突然白狼が見回り中に飛びかかってきたらしい。
それをルウイさんが咄嗟に庇ってくれて・・、先にギルドの医療室に行って治療してから帰ってきたそうだけど・・
「医者には、2・3日は安静にしてろって・・。これ、飲み薬」
キリルは自分のせいで怪我をさせてしまったからか、悔しそうだ。
ルウイさんに一旦ソファーに座って貰って玄関まで見送る。
「・・キリル、何が起こるかなんて誰も分からないから・・、そう気に病まないで。ルウイさんもそう言うと思うよ」
「・・・まさに同じ事言ってた・・」
「やっぱり・・!」
ふふっと笑うと、キリルはようやくちょっと笑った。
「また明日・・様子を見にくる。何かあれば魔法で知らせて」
「ありがと、気を付けて帰ってね」
そういって、玄関で別れた。
さて、看病だ看病。
動物の牙や爪には毒があるから・・、処置して貰ったとはいえ熱が出ることもあるし・・。そう思って、薬を持ってソファーへ行くと、ルウイさんはちょっとグッタリしてる。本当は入院して行けって言われたのに、私を心配して帰ってきた・・ってキリルが言ってた・・。
全く!私の事はいいってのに!!
「ルウイさん、しんどいならベッドに行きましょう?手を貸します」
「・・・いえ、大丈夫です・・」
そう言いながら、ふらふらと階段を登っていくので心配で後ろから付いていく。
急いでルウイさんの部屋のドアを開けると、お礼を言ってくれるけど、そういうの今はいいから!!!ベッドに倒れこむように寝ると、私は急いで脱がせられる服は取っていく。
言っとくけど、セクハラではないぞ。
「・・もう、無茶しないで下さいよ・・」
珍しく少し青い顔をしているルウイさんの髪をそっと撫でると、ルウイさんは辛いのか目を閉じたまま小さく笑う。
「・・・トーリの大切な人を守りたかったので・・」
・・だーー!!!騎士道精神!!!
そういうの美しいかもしれないけど、私はそういうのどうかと思うよ?
命大事に!っていうコマンドを知らないの??
私はルウイさんの顔を両手で挟んで・・、
「私はルウイさん、大切です!!」
「・・・・はい・・」
ルウイさんは目を瞑って、静かに返事をする。
本当に分かっているんだろうか、この人・・。私が、これが好き、この人が好きって言ったら、何かなんでも持ってきそうだし、身を呈しても守りそうだし・・、心配なんだけど。
私は人間らしく生きて欲しいのに。
誰かを気にして生きて欲しいわけじゃないのに。
・・このなかなか頑固な騎士団長様は、どうしたら分かるんだろう。
ベッドに寝て少し気が抜けたのか・・、ルウイさんの表情が少し柔かくなる。・・良かった・・。
額にそっと触ってみる。
熱はないな・・、よし。あとでパン粥を作ってお薬を飲んでもらおう。
まったく今世は何かやっぱりハードだな。
こんな言う事を聞かない騎士団長様を、家で看病するなんて想定外が過ぎる。もうちょっとイージーモードな人生を今度は希望したいんだけど。
「・・トーリ・・」
ルウイさんが目を瞑ったまま、手を彷徨わせる。
・・・そっと手を握ると、ルウイさんが嬉しそうに目を瞑ったまま笑うから、なんか胸がぎゅっと痛くなる。
何だって、そんなに人の事を心配するんだ。自分の心配をしろ。
いいんだよ、精神年齢50近い私なんて。
いつか帰って、婚約者に会うんでしょ・・?じゃあ、私じゃなくていいじゃないか。
ふと、握っている手を見ると、剣だこができていて・・、所々傷ついている。バカだなぁ・・、こんな田舎で、こんな所で怪我してる場合じゃないじゃん・・。
そう思って、指をぎゅっと握る。
「・・・・・・・・・いなくなったら、やだ・・」
小さい・・、小さい声で、初めて本音が溢れて、ついでに涙も溢れた。
・・・本当に今世は何なんだ・・。意味が分からない。




