騎士と兄弟。1
疲れて倒れるように懇々と眠るファティルさん。
そんなファティルさんを見て、久しぶりに訪れたルベルさんは小さくため息を吐いた。
「最近、色々と立て込んでいたからな‥。無理させてしまったな」
もう一人のお兄さんに聞かせてあげたいセリフだな‥と、ちらっと思ったけれど、我が家も何かとファティルさんにお世話になっている身。我々も重々気をつけていこう。ひとまずお茶でもどうぞ‥と、カウンターの方へ案内して、お茶をお出しする。
「そういえばルベルさんは、ファティルさんを探しにこちらへ来たんですか?」
「それもあるが、先日ルドヴィクに「よからぬ存在」が呪具を取り込んで大きく変異していたと知らせが入ったので、うちの国でもそれに近い事件があった文献を見つけたのでそれを持ってきたんだ」
そういうと、肩に掛けていたカバンから本を数冊取り出した。
「先にファティルを見つけてから騎士団へ向かおうと思っていて‥」
「そうだったんですね。いつも色々とありがとうございます。本当にお世話ばかりかけてしまって‥」
「ファティルにとっては、良い息抜きになっていると思う。なにせ何かなければ、魔術の研究にずっと没頭し続けて部屋から出てこないからな‥」
「そう、なんですか?」
「あいつの集中力は魔術師ゆえ、なのかもしれないが‥」
ルベルさんはカウンター席からソファーで熟睡しているファティルさんを見て、眉を下げた。
「まぁ、俺も剣ばかりに夢中になっているから同じなのかもしれないが‥」
「でも夢中になれるのはそれはそれで良いことだと思いますけど‥。あ、そうだ。ケーキがあるので良かったらこれ‥」
パン屋さんのケーキを切り分け小皿にのせ、ルベルさんの前に出した。
アミルさんも、ファティルさんも、ルウイさんも大好きなナッツのケーキ。昨日、キリルが仕事終わりに「これお見舞いでーす!」と、持って来てくれたのだ。
ずっしりしたナッツのケーキを見たルベルさん。
目をパアッと輝かせ、
「アミルがいつも食べているケーキ、だな?一度ファティルから一切れもらったことがあるんだが、とても美味しくて‥。今日こそ買いに行こうと思っていたんだ!」
「そ、そうなんですか?」
いつの間にかルベルさんも魅了していたパン屋のケーキ。
やはり店前に、「ホルス王族御用達!!」の、のぼりを立てておいた方がいいかもしれない。さっきまで涼しげな顔をしていたのに、一転して嬉しそうに微笑みながらケーキを食べるルベルさん。
笑っていると、やっぱりルウイさんやファティルさんに似ている。
そして皆、美形だな‥。
お茶を飲みながらそんなことを思っていると、ファティルさんがもそもそと起きてきた。
「‥‥ルベル?何でここに‥。それにそのケーキは、」
「パン屋のケーキだ!以前食べたが、やはり美味しいな」
「‥‥俺も、食べる」
「はいはい、どうぞ。お茶もありますよ〜」
目覚めてすぐのファティルさんの寝起きは、どうやらあまり良くないらしい。若干ポヤポヤした顔でカウンターの席に座れば、寝ぼけた顔のままお茶をズズッと音を立てて飲んだ。すかさずルベルさんが、「音を立てるな」と、注意する辺り王族である。
「ああ、久しぶりによく眠った‥」
「それは良かったです。相当お疲れだったんですね」
「‥アミルがロクでもない事を言い出すからな。ったく、どうしたものか‥」
兄弟で何かあったのかな?
ルベルさんを見ると、困ったように眉を下げて小さく笑った。
「俺もアミルはどうにかするから、とりあえず今日は帰って‥」
「いや、しばらくこっちで過ごす」
「「え!??」」
私とルベルさんが目を丸くしてファティルさんを見ると、ファティルさんは少し考えながら宙を見て、
「何か、新しい趣味を見つけてから帰る!」
と、宣言した。
しゅ、趣味?!私とルベルさんが顔を見合わせれば、ファティルさんがルベルさんを見て、
「さっき横になってたけど魔術ばかりと話してただろ‥。確かにその通りだ。それなら趣味でも見つけて何かやってみようかと思ってな‥」
「それなら国に戻って見つければいいだろ」
「絶対アミルに邪魔されるだろう。それならこっちがいい。決めた。騎士団の寮に住まわせてもらう」
さっきの会話を聞いて、それでじゃあ何か別の事を探すぞ!って、思い立ったらすぐ動くところはやっぱり集中力ゆえ?いや、瞬発力か‥。
とにかく揺るぎない決意のファティルさんに、ルベルさんはこれは無理だと判断したのか小さくため息を吐くと、
「トーリさん、うちの弟がすまない‥。また来るが、何かあったらすぐ連絡してくれ」
と、言って席を立った瞬間、飲んでいたお茶のカップを腕に引っ掛け、あわや落としそうになったところをファティルさんがキャッチしてくれた。‥うん、ルベルさん相変わらずドジっ子なの変わってないんだな。
気持ちよーく酔っ払ってしまって慌てて更新!
お酒はほどほど‥ですねぇ(と言いつつベロンベロンも楽しい)




