騎士、人間の尊厳。
洗濯物を干してくると、カウンターでオーウェンさんが真っ白に燃え尽きて座っている・・。
えーと・・・?
ルウイさんはニコニコ笑ってハンドクリームを持っている。
カウンターは、あれですから・・ソファーの方で塗りましょうか?ちょっと無言で指差すと、ルウイさんは静かに頷く。
私が一人用のソファーに座ろうとすると、ルウイさんに二人掛けに座るように誘導された。・・・ええと、隣り合って塗れと?まぁ、いいですけど・・。薬の蓋を外して、手を出してもらうと、いつものように片手ずつ塗っていく。
「あ、大分かさつきは良くなりましたね〜」
「冬場になると痛くなる・・というのは本当でしたね」
「そうですよ。だからこまめに塗っておかないとなんですよ」
まぁ、ルウイさんのを塗る事で、私の手荒れも防げるので良いアイデアかもしれない・・。そう思って指先を優しく塗っていると、視線を感じる・・。
振り向くと、オーウェンさんが目が落っこちちゃいそうなくらい見開いてる。ん?塗りたいの?
「オーウェンさんも塗りま・・・」
「ああ、彼は良いです」
ちょっと食い気味にいったルウイさん・・。早い、早いです。
ルウイさんを見ると、ニコニコしてるけど顔が「絶対許さない」って書いてある気がする・・。あれ、私もしかして別のスキルが目覚めちゃった・・???
「・・はぁ・・、なら、いいですけど・・」
さ、お〜わり。
手を離すと、ルウイさんはじっと自分の手を見てから、私に微笑む。
「昼には戻ります」
「はい、分かりました。気を付けて行ってきて下さいね」
静かに微笑み頷くルウイさんは、本日も綺麗である。
半ば引きずられるようにオーウェンさんはギルドへと連れていかれたけど・・、頑張れよ〜と、心の中で見送っておいた。さて、私も仕事しよ。
しばらく仕事をしていて、ホルスについて書かれている箇所があった。
「ホルス・・」
最近の情勢が書かれていて、王族同士の仲が悪くて騎士団も混迷を極めている・・とあった。ああ〜、雇い主が仲が悪いと振り回されるし大変だよね・・。
前世でもあったなぁ〜、チームリーダーが仲が悪くって空気悪いの・・。あれ、困るよね・・。
そうかぁ、混迷を極めている所へ確かに帰りたくないわな・・。
まぁ、3ヶ月はどうしてもここから動けないけどね。
もうすぐ大雪の季節だし。
外を見ると、またチラチラと雪が降ってきた。
昨日はあまり積もらなかったけど、これから積もってくると大変だよな・・。この間ブーツをルウイさんに買っておいたから、大丈夫だろうけど、念の為にもう一足買っておこうかな。
そんな風に考えつつ、なんとか仕事を終えて・・両腕を上に伸ばしていると・・、玄関の扉を叩く音がする。
「・・・カイルかな?」
玄関へ返事をしながら開けると、メルクさんが立っていた!
あれ?珍しいな??今日はギルドで打ち合わせじゃなかったの??
「ごめんなさいね〜。今、局所的に雪が降った場所の見回りに行くんだけど、ルウイさんとオーウェンさんも連れていくから、先に知らせておこうと思って・・」
「あ!そうだったんですね!わざわざありがとうございます!」
よく見れば、すぐそこに馬が繋いである。
じゃあ、これから二人もここを通るのかな?
「お昼はギルドで用意するから、安心してね!」
「さすがメルクさん、配慮が違う〜」
「そうでしょ?出来る警備隊長だからね」
ふふっと二人で笑ってから、メルクさんは私を見つめる。
「大雪の季節になると、いつもここで一人になっちゃうから心配してたけど・・、今年からルウイさんがいるから安心ね」
「・・・あとちょっとだけですけどね?」
「ああ、契約してるんだっけね。延長しちゃいなさいよ〜!」
メルクさん・・。
そんな軽いノリで言っちゃうものじゃないですから・・。
人間の尊厳とは、かくも雪のように淡く儚いものなのか・・?チラチラ降る雪を思わずジト目で見てしまった・・。




