騎士と夜。
ルウイさんは、なかなか交渉が上手いと思う。
ま、そりゃ騎士団長様ですし、交渉術もきっとお手のもんなのだろう。
なんでそんな事を考えているかと思うと、ルウイさんのベッドに後ろから包まれるように寝ているからだ・・。
向き合って寝られるわけがないだろうに・・。
さっさと横を向いて寝ようとしたら、後ろから包むように抱きしめられたのだ。こんなの18歳の小娘がされてみ?絶対死ぬよ・・。いや、私もドキドキはしてますけどね・・。
しかし、筋肉と山の神と呼ばれた魔物の毛皮がぬくい。
これは・・、結構暖かくていいなぁ・・。
思わずトロトロと眠くなってくる。
「トーリ・・無茶を言ってすみません・・・」
不意にルウイさんの声がして、閉じかけた瞼が開く。
「・・あ、一応無茶を言ってる自覚があって良かったです・・」
そういうと、後ろで小さく笑った気配がした。
いや本当無茶苦茶やぞ、君・・。私だからいいけど、こんなん勘違いされちゃうからな?
ちょっと考えてから、体の向きをルウイさんの方へ向けると、薄暗い中・・ルウイさんが驚いて体が少し固まる気配がする。・・・抱きしめておいて、固まるんかい。
ルウイさんを見上げて、風邪の時のように頬をそっと撫でる。
今日もスベスベだし、同じ入浴剤を使っているから同じ匂いがする。うん、この香りはやっぱりいいな。
「と、トーリ・・・・」
「ちょっと元気になりますか?」
「え、あ、ああ・・・」
「ルウイさん、俺って自分を呼ぶんだな・・って、そういえば発見でした」
今日、オーウェンさんと話していた時・・、「俺」って言ってたな・・って、不意に思い出して、いつもは「私」って言ってたけど・・、あっちが素なのかな・・?
まぁ、どっちでもいいけど。
目が暗闇に慣れてきて、ルウイさんの顔が見えた。
少し、目元が赤い・・?
うーん、暗いからな。
「トーリ、今は、その・・」
「なんですか?」
頬から、髪を撫でる。
ほらほら元気出せよ〜とばかりに優しく撫でると、なんだか堪えるような・・切ない顔になるルウイさん。なんか嫌な事思い出させちゃった?
「トーリは、なぜこうして優しくしてくださるんですか?」
「・・優しくするのって、ダメですか?」
「・・・・誰にでも、こういったことを?」
んなわけないだろ。どんだけひでぇ女だ・・私は。
「それはないですよ。奴隷で手を出せないという安心感もありますけど、ルウイさんだからですよ」
そこは本当だ。ルウイさんは絶対嫌なことはしないし、いつだって気を使ってくれるし、優しいし、あと・・・うん、まぁ素敵だしね。
そう思ったらちょっと照れくさくなって、私はそっと手を離そうとする。
ルウイさんは、私の離そうとした手をそっと握るのでドキッとする。
「・・・トーリ、あの・・、私は・・その・・」
「・・うん?」
「・・・・明日も・・、こうして一緒に寝て欲しいです」
「約束早い!もうですか?」
クスクスと笑うと、ルウイさんは内緒話のように声を潜めて・・
「・・・・私もこうして一緒に眠りたいと思うのは、トーリだけです」
お、おう・・、そうきたか。
思わず顔が赤くなってしまった・・。
自分もさっき同じような事を言ったけど、なるほどこれはちょっとドキドキするセリフだったんだな・・。
「そ、そうですか・・・」
「ですから・・、お願いします・・」
「・・・早い、早いですって・・・」
呆れたように笑うと、ルウイさんは大型犬のように「ダメ?ダメ?」って目で見てくる。く!卑怯な!!今、それを使うのか?
う・・と、詰まってしまった私を見て、ルウイさんはイケる!と確信したのだろう・・。
「・・嬉しいです」
「まだ返事してないですけど・・・」
ニコニコして、私の手に頬ずりする。
ぎゃあ!!!な、何をする!驚いて、手を取ろうとするとガッツリ掴んで離さない。くそ、筋肉め!
もういいや・・、さっさと諦めて手をそのままに・・、「もう寝ますよ〜」と言うと「お休みなさい」という声が聞こえて・・、瞼を瞑ると、寒さから守るようにルウイさんの腕が回された。あったかい・・。
すぐに眠ってしまう心臓の図太い私だった。




