騎士、小さな希望。
一杯すでに飲んでいたカイルに、私とルウイさんの木の杯を取りに行かせた。
受付を離れるわけにはいかないしね・・。
このお祭りのすごい所は、各街から持ち寄ったお酒を、木の杯を持っていれば延々と飲み放題なのだ・・。酒好きは堪らないイベント!なので、隣のトーラスからもここぞとばかりに観光に来るんだよね。
あ、観光客からはちゃんとお代は頂きますけど・・、それでも格安で飲めるよ!覚えておいてね!
カイルには飲むな!って言ったけど、ルウイさんお酒強そうだし。
一杯くらいならいいかなって・・。
ブスくれたカイルから、木の杯を受け取って・・、後はルウイさんを待つのみである。
と、ルウイさんがあちこち歩いて仕事をしている姿が見えたけど、その周りで女性がチラチラと見たり、声をかけている。お、おお〜〜女性陣も果敢に攻めるな。
お菓子をパリパリと食べつつ、話しかけられる姿を見ていると、ルウイさんが帰っちゃったらこんな光景も見られないんだなぁ・・って、寂しくなる。
ルウイさんが帰っちゃったら、またいつものように畑で野菜を収穫して、魚を釣って、翻訳の仕事の日々か。ルウイさんが来てから色々起こるものだから、いつもの日常が思い出せない・・。
飲むなって言ったのに、構わずお酒を飲むカイルが、ルウイさんを見つつ・・
「あの人、すげーよな・・。仕事はできるし、モテるし・・」
「本当だよね〜・・」
「お前、あの人と奴隷契約してんだろ?ずっと?」
「いや、半年したら解消するに決まってるじゃん」
パリパリとまたお菓子を食べる。
私は奴隷が欲しいんじゃない。
成り行きで、安全で最短に人間に戻れるために契約しただけだ。
カイルは、それを聞いて少し顔を明るくさせる。
「・・じゃあさ、契約解消したら、街に移れよ。あそこじゃ寂しいだろ?」
・・・寂しいか・・。
まぁ・・、犬を飼おうと真剣に思うほど、最近はいなくなっちゃったら寂しいって思ったりする事もあるしなぁ・・。
「・・・そう、だねぇ・・」
「トーリ」
え?
後ろを振り返ると、ルウイさんが立っていた。
あれ?そっちにいなかった?思わず、さっきいた場所を確認してしまった。ちなみにカイルはさっと杯を後ろに隠した。馬鹿め・・・。
「交代の時間が来ました。行きましょうか」
「あ、は、はい・・じゃ、お菓子片付けちゃいます」
そう言うと、ルウイさんも手伝ってくれた。
お菓子は籠の中に一杯になった。
・・・これは、買わなくていいな。
ルウイさんは、私の手をさっと繋ぐと「あちらに美味しそうなのが・・」そう言うので、言われた方へ歩いていく。と、ルウイさんを見て、ため息をつくお姉様がたの多い事!
「・・ルウイさん、モテますねぇ・・」
「そうですか?」
「さっきからモテモテだったじゃないですか・・、え、もしや自覚なしですか!?」
もしかして、すっごく鈍いのこの人?!
騎士団長様って、すっごいモテるよね?なんなら数々の浮名を流すものじゃないの?本で読んだ知識だけど・・。
ルウイさんは、ちょっと眉を下げ小さく笑った。
「トーリが私の側にいてくれる事の方が、私には重要です」
「・・ああ、お上手ですねぇ・・」
「・・本心からですが・・」
いやいや、そんな社交辞令はいいって言ったのに・・。
私より、あっちの綺麗なお姉様方を見なよ・・。騎士団長様にはもっとふさわしい人がたくさんいるだろうに。
・・ちょっと、胸が痛むけど、まぁあれだ。
精神年齢50近いし、肋間神経痛みたいなもんだ。
胸のあたりがチクチクして痛いんだけど・・、それだと思う。
「・・ルウイさんは、欲がないですねぇ」
私は呆れるようにルウイさんに話すと、ルウイさんはちょっとまた眉を下げて私を見つめて笑う。
・・そのちょっと困ったような顔にも、結構弱いなって
最近知ったので、やめて欲しいなぁー。




