騎士、甘やかされる。
入浴剤をルウイさんと一緒に選んでから、ギルドまでルウイさんを送って帰った。
・・・なんだろう、このワンコを預けに行く感覚。
心の中で「今日もいい子でいるんだぞ〜」って思っちゃうのは、普通の感覚・・ではないな、きっと。
少し寒くなってきた風に、鼻の先がちょっと冷たい。
マフラー・・、ルウイさん持ってないし、買っておいてあげるか。
紺色似合ってたし・・と、思って紺色のマフラーを買っておく。きっと、今日も不満顔で帰ってくるだろうし、うん・・機嫌取りの一環だ。
そう納得させてお店から出てくると、ちょうど見回り中のメルクさんと目が合った。
「あら〜、トーリじゃなぁい?」
野太いけれど、気だるげな声のメルクさんは今日は寒いのに胸元がちょっと開いている黒の革のジャケットを着ている。・・・共通のマントどっかいったの???
「こんにちは、いつもルウイさんがお世話になってます」
うちの子がお世話になってますみたいな挨拶をすると、メルクさんがちょっと面白そうに笑った。あ、間違えた?この挨拶?
「相変わらずトーリは面白いわね〜!ルドヴィクさん、とってもお仕事熱心で助かってるわ!おかげで、飲酒で揉め事が絶えない時期なのに、小さい小競り合い程度で終わって大助かりよ〜!」
「そうだったんですね・・、それは良かったです」
毎日、「トーリといられない」と文句を言ってるけど、仕事はしているようで安心した・・。
「トーリもお祭りには来るんでしょ?」
「あ、はい」
主に食べに行きます。
「今年は、色んな街から出店も出るし、美味しいもの沢山あるからお楽しみにね!あ、飲みすぎないでよ〜!」
そういって、メルクさんはギルドへと向かっていった。
そっか、出店かあ!美味しいもの沢山かぁ!!
あと三日後だけど、楽しみになってきた。ルウイさん、警備中何か食べられる時間とかあるのかなぁ・・。もし、一緒に食べる時間とか有ったら、食べ歩きできるかなぁ・・そんな事を考えつつ、家路に着いた。
夕飯を作って、ルウイさんを待っていると・・
今日も今日とて、ちょっと不満げな顔で帰ってきた。
心の中で、「よーしよし!今日も頑張ったな!」って思いつつ、出迎えるとルウイさんは嬉しそうに微笑む。・・これは、正しい同居生活なのか、もう分からない。なにせ普通じゃないし。
夕食を食べ終えて、いつものようにハンドクリームを塗ってあげてから、買ってきたマフラーを渡した。ルウイさんは、袋からマフラーを出すと驚いて私とマフラーを交互に見る。そ、そんなにか?
「もうそろそろ寒くなりますし、ルウイさんマフラー持ってないし・・」
「嬉しいです・・、そんな風に心に留めて頂けて・・」
嬉しそうに笑って、そっとマフラーを見つめるルウイさん・・。
そんなに喜んで貰えたなら、こっちも嬉しいです。
ルウイさんは、マフラーを持ちながらそわそわして私を見る・・。何?何かあった?
「・・・あの、不躾に申し訳ありません・・、その、すごく嬉しいので抱きしめてもいいでしょうか?」
「あ、そんなに???」
「・・・ダメなら、断って下さい・・」
そんな言い方されると、かえって断れませんけど・・。
まぁ、ハグくらいならいいけど。なにせ奴隷だし、不埒な事をしようもんなら奴隷紋の電撃が走るし。一番安全な相手だ。
ちょっと様子を伺うルウイさんの表情が可笑しくて、小さく笑ってから向かい合うルウイさんに腕を広げてみた。
「はい、いいですよ」
ルウイさんは、パッと顔を輝かせて・・
そっと立ち上がって私の体をそっと抱きしめた。
「・・すごく、すごく嬉しいです。ありがとうございます」
「どういたしまして・・」
こんなに喜んでくれるなら、一緒にお祭りでご飯を食べようって言ったら、どうなっちゃうんだろう・・。そう思いながら、あやすように背中をトントンと優しく叩くと、ルウイさんは嬉しそうにニコニコ笑うのだった・・。




