騎士、仕事する。
秋祭りは、一週間後。
場所は街の中心の広場だ。この街は広場を中心にして、十字に大きく街が分けられているのだ。秋祭りは、東から西へ陽が沈むという事で、東の街と西の街が担当する。
私?街はずれなんで、東南側に住んでますけど・・
いつも不参加です。こっそり食べるだけです。すみません。
ルウイさんは、今回メルクさんに依頼を受け、東から西のメインストリートの警備だ。ギルドで共通の紺色のマントを配られ、お祭り前から騒いじゃう人達を諌めるそうだ。
「・・・朝から夜までとは・・」
ルウイさんが、朝食を食べつつ沈痛な面持ちで呟く。
「まぁまぁ、お祭りが終われば、あっという間に冬がきて家でゆっくりできますから」
お祭り当日だけかと思っていたら、まさかの一週間朝から晩まで交代で見回りに非常に不服そうなルウイさん・・。お肉たっぷりお弁当をもってしても、大変寂しいらしい。
「あ、今日は冬に備えて入浴剤を買いに行こうと思っているんですけど、好きな香りを買ってきますよ。どういう香りが好きですか?」
わかりやすく機嫌を取ってみた。
ほ〜ら入浴剤だぞ〜。君は香りつきのハンドクリーム好きだったろ?
そうするとルウイさんは、少し考えて・・
カウンターの椅子から、立ち上がって私の首元に顔を寄せると、すんと嗅ぐ。
・・・・嗅ぐ!!!??
「る、ルウイさん!!???」
慌てて、ルウイさんから離れると、にっこり微笑んで・・
「トーリのような香りがいいです」
ああ〜〜〜!!!
後ろに「ワン!」って笑顔で微笑んでいる大型犬・・、見える・・!!!
思わず手で顔を覆ったよ。
「・・・ルウイさん、格好いいからあれですけど、限りなくアウトですよ」
「そうですか?好きな香りなんですけど・・」
「ストーップ!!!アンド、ビークワイエットです!!!」
ルウイさんは、何かの魔法の詠唱かと思ったようだけど、前世の英語です。
ブロークンどころか、ぶっ壊れた英語です。
何はともあれ、機嫌が直ったようで笑顔になった。今日の私の仕事はこれで終了してもいいかもしれない・・。ニッコニコのルウイさんは、私を見つめて・・
「入浴剤を買いに行くなら、ギルドまで一緒に行きませんか?」
「・・・はい、いいですよ・・」
そんな尻尾を振って嬉しそうにしてるのに「嫌」って言えるか・・。
大分、絆されてる気がする・・。
お皿を片付けて、街へ出掛けるため用意をする。
ルウイさんは、ギルドで秋祭りの警備隊をするので共通の紺色のマントを支給されて、それを着けて玄関へやって来るが、大変様になる!!
やっぱり騎士さんだからなの?
ギルドの皆も祭りの間だけのマント姿なんだけど・・、なんか違うんだよね・・。
マントをつけて、これで剣でも持っていたら・・、
物語に出てくる騎士様だな。
毎回、こっそり見惚れているんだよね・・。
バレたらなんかニッコニコで笑顔になるだけ・・とは思うんだけど、なんか恥ずかしいし。そんな事、つゆ知らずルウイさんは、穏やかに微笑んで私の手を繋ぐ。今日も騎士の奉仕の精神は健在だな。
「・・行きましょうか」
「はい」
玄関を開けてくれるは、大型犬・・。
俳句を詠んでどうするんだ私。
この人、騎士団長様だったし、こんなスマートにエスコートできるんだから、契約終了したらモッテモテだろうし、ホルスに帰る先々で大変そうだなぁ・・。
ちらっと見上げるとルウイさんはすぐに視線に気付いて、嬉しそうに微笑む。
綺麗な顔だなぁ・・。
いつか出て行っちゃうの・・やっぱりちょっと寂しいかも。
そう思って、繋いでいた手を少しキュッと握ったら、ルウイさんは少し驚いた顔をした後、ますます嬉しそうに微笑むから、ちょっと誤魔化すように笑っておいた。




