騎士と生活。
ルウイさんと無事に契約できて、私は肩の力が一つ抜けた。
契約を書類に書く際に、私が印をつけたのは、2つ。
「契約者に、怪我を負わせない。命を奪わない」
「契約者以外に、みだりに怪我を負わせない、命を奪わない」
ま、どこの世界にもアホはいる。
奴隷相手に、喧嘩をふっかけたり、手を出すこともあるだろう。
多少の自衛権を与えておいた。
普通の奴隷には、そんな権限は与えないんだろうけど。そもそもルウイさん、普通じゃないし・・。
ルウイさんに、書類の確認をしてもらった時・・、奴隷契約課の職員さん驚いてたけど、奴隷にしたくてそもそも契約したわけじゃないんで。いいんですよ、この緩さで。
まぁルウイさん本人も、「確認してもいいんですか!?」って驚いてたけど。
いや・・期間限定って言ったじゃん・・?
大丈夫かな、この人・・。
「よし、契約も済んだし・・、服とか小物、買っておきましょう」
「え?!そんな、そういう訳には・・」
「うちには男性物の服はございません。あと歯ブラシもちょうどきれたんで買いに行きましょう。生活の必需品ですし」
うん、こんなに綺麗な顔なのに・・清潔感を大事にして欲しい。
ルウイさんは大分戸惑った顔をしている。
・・この人、本当になんで奴隷紋なんて入れられたんだろ・・、世俗に大分疎い気がするんだけど。
服屋さんに一緒に入って、いくつかシャツとパンツを買っておく。
下着は自分で選んでもらった。
流石にサイズとかわからないし・・、お財布を渡してレジに行くように話すと、また驚かれた。
「・・お金を持っていってしまうとか、思わないのですか?」
「え?持っていくんですか?」
「・・・いえ、持っていきませんが・・」
金銭を自由にさせないしね・・普通の奴隷契約は。
でも、おいおい買い物にも行って欲しいと思っているので、契約に入れてない。っていうか、そういうのしなそうだし。
「ルウイさんは、大丈夫ですよ。ほら、買ってきて下さい。あと、小物を買いたいんで・・」
ルウイさんは、ちょっと私を心配そうに見る。
・・・お金は、ちゃんと貯蓄してあるから、大丈夫だけど?
レジで買い物をすませると、ルウイさんは私にお財布を渡す。
「・・この借りは、必ずお返しいたします」
「あ〜、それはおいおいでいいですから・・」
なにせ奴隷のできる仕事は、少ないしなぁ〜・・・。
ぶっちゃけ家事をしてもらえると、一番嬉しいんだけど・・、天然な感じからすると、料理中にお鍋を焦がしてしまいそうだ。
洗面用具と、切らしていた歯ブラシも無事にゲットすると、流れるように私の買った物を持ってくれた。おお、紳士!
「ルウイさん、食べ物の好き嫌いはありますか?」
「・・いえ、特にありませんが・・、私の好みは気にしなくて構いませんよ」
「十中八九言うだろうなとは思ってましたが、好みを言って頂けると料理を張り切れるんで教えて欲しいです」
慎しみ深そうだな〜とは思ってたんで、予想通りだ。
ルウイさんは、また少し驚いていた。
・・・ええ、私、奴隷として契約するって言ったけど、どんだけロクデナシみたいな感じなの?まぁ、うら若い乙女が契約しようなんて・・普通言わないか。
ダメだ・・、完全に普通という枠外に生きてるから、一般的な行動が難しいな。
石畳を歩きながら、ルウイさんは少し迷うように私を見る。
「甘すぎる物でなければ、好きです・・」
「なるほど・・」
とりあえず、肉とか魚とかいっぱい食べそうだな〜と思って、普段よりも多めに買っておいた。そして、すぐ持ってくれた。なんだかそれだけの事なんだけど、この二年・・ほとんど人と交流する機会がなかったので、意外に嬉しいのかもしれない・・。
そう思ってルウイさんに笑いかけると、また少し驚いた顔をしてた。
ごめん・・普通じゃないから、何に驚いたか分からない。




