騎士、驚く。
家に戻って、早速買ってきた物を冷蔵庫にしまう。
いや〜、この世界に冷蔵庫があって本当に助かったわ。
ルウイさんにお礼を言って、洗面所の場所を教えておく。手洗いはきちんとして欲しい。歯ブラシとコップも置いておくとなんというか、同棲みたいだな・・。
「あ、そうだ。契約したんで、二階の一部屋を使って下さい。」
「いえ!!!!流石にそれは!!!」
ルウイさんは、慌てて私を制止する。
いや・・、危害は加えられないんだから、問題ないでしょ。
「・・・すみません、ぶっちゃけ離れもあるんですけど、掃除が面倒なんです。二階の部屋ならちょっと掃除すればすぐ住めるんですよ」
「しかし、未成年の方の家にお世話になるのは・・」
「18なんで、ギリ成人です。・・・っていうか、契約できた時点で成人だと思わなかったんですか?」
ルウイさんは、ハッとした顔で私を見る。
・・・この人、よく今まで無事に生きてたな・・。もう面白くなってきた。大笑いしてもいいかな・・?
「そ、そうでしたね・・あまりに落ち着いているので・・失念してました」
「いえ・・、よく年齢不詳って言われるんで、大丈夫です」
笑いを噛み殺しつつ、洗面所のリネン置き場から、シーツとタオルを何枚か持って、ルウイさんを二階に案内する。
木のギシギシと音がする階段を上がって、東側が私の部屋、西側だけど南向きなのがルウイさんの部屋(仮)だ。
「はい、こっちがルウイさんの部屋です〜」
「・・・あの、本当に・・」
躊躇うように、部屋へ入ると・・
ギッシリと本が入っている部屋に少し驚いているようだ。
カーテンを開けて、窓を開けるといい風が入ってきた。
ベッドと、デスクに椅子、クローゼットの他は本に囲まれた部屋だ。
「普段は、翻訳の仕事をしてるんで・・、ここは資料部屋なんです」
「翻訳・・・?!」
ルウイさんは、私の顔をまじまじと見る。
そうですよね〜、こんな島国の田舎に住む小娘が、あらゆる言語が読めるなんて思わないでしょうね・・。ただね、サイレントスキルのおかげで、何でも読めちゃうんですよ。
ルウイさんは、本棚の本を見るとまた驚いているようだった。
「これは・・、古代語もあれば、海外の言語の本もありますが・・?」
「詳しいんですね〜。好きに読んで下さいね」
この能力のおかげで、正確な翻訳ができて、素晴らしい!って言われて、仕事が途切れないんだよね。ルウイさんも海外の言語に詳しそう、頭良さそうだし・・。
ルウイさんは、奴隷契約についての本を見つけて・・
「・・お若いのに翻訳のお仕事をされていたから、奴隷契約についても詳しかったのですね・・」
「あー、そうですね。普通は奴隷契約の仕事でもしてないと、知らないですよね〜」
・・・まぁ、私の場合、大分規格外だけど。
ルウイさんは、ようやく納得したのか・・私の顔を見つめる。
「・・すみません、興味本位で契約を申し込んだのではと、心配しておりました」
「ああ〜〜〜、そっちか!!すみません・・、言葉が足りなくて!」
思わず膝をつきそうなったけど、堪えたよ・・。
興味だけで進めているように見えたのか・・。
「本のおかげで、知識はあったんです・・、こんな風に活かされるとは思っていませんでしたが」
「いえ・・、知識をこうして十分に使える事は素晴らしいと思います」
そう言って、ルウイさんは初めて綺麗に微笑んだ。
う、うわーーー!!!
美形の微笑み、すっごい破壊力!綺麗だなぁ〜!思わず顔が赤くなってしまった・・。
「そう言って頂けると、嬉しいです・・・」
ちょっと照れくさくなって、俯いてしまう。
ルウイさんは、ようやく安心した顔をしていた。そっか・・、普通がわからないから大分心配させちゃったんだな・・。気をつけよう。普通・・・普通を身につけよう。
部屋を簡単に掃除して、シーツを渡すと手早く自分でベッドメイクをしたルウイさんにちょっと驚いた。
「上手ですね・・」
「騎士学校や、訓練で散々やりましたからね」
おお、やっぱり騎士さんだったんだ・・。
ようやく初めてルウイさんの職業が分かったのだった。あ、まず聞くのはそこからだったか・・・と、気付いた。
普通、難しい・・・。




