騎士、張り切る。
二人で夕陽に照らされながらの釣りは、ボウズであった。ボウズって、前世でいえば1匹も釣れなかったって事です。
はい、ここテストに出ますよー。
まぁ、ルウイさんが狩ってきてくれたお肉がいつも常備されているので問題ないけどね。夕飯は、なんか思いっきり食べたい気分だったので厚切りのステーキだ。
ルウイさんには、大きめの肉を出すと嬉しそうに笑った。
いっぱい食べろ。その筋肉をしっかり育てておいて欲しい。
肉汁を味わっていると、玄関の扉を叩く音が聞こえた。・・この音は、カイルかな・・。
フォークを置いて、玄関へ行こうとするとすでにルウイさんが向かっていった。早い・・、騎士団長はやいです。
訪ねてきたのは、やはりカイルだった。
心なしか緊張した顔で部屋へ入ってきたのに、お肉をみると・・
「あ、美味そう・・」
「・・開口一番それか・・。夕飯まだ食べてなかったの?」
「・・・おぅ・・」
「しょーがないな、そこ座って。肉焼いたげる」
嬉しそうなカイルとは対照的に、ルウイさんはちょっと不服そうである。まぁまぁ、お腹が減ってる若人に食べさせるだけだから・・。
お肉を焼いて出してあげると、嬉しそうに食べるカイル・・。
君は何か用が有って来たんじゃないのか?
「カイルくーん、何か用があったんじゃないの?」
「あ、ほうだった・・」
「口の中のを食べてから話してね・・」
小さい時から変わらないなぁ・・こやつ。
頑張って食べてから、カイルはちょっと申し訳なさそうに私とルウイさんを交互に見る。
「・・メルクさんから言伝で、ネイトさんが魔狼退治に参加しようとしてるけど、警備隊の安全が心配だからルドヴィクさんにそれとなく参加して欲しいって言われて・・」
「ああ、それね・・」
私は、一気にチベットスナギツネの顔になった。
あんの野郎・・メルクさんや警備隊にまで迷惑かけてるんじゃあ・・。
ルウイさんは、少し考えて・・
「・・・魔狼討伐は、いつ、どこで?」
「二日後、今回は南の方へ行く予定です・・」
ふむ・・と、ルウイさんは頷いて、カイルを見る。
「明日、馬を朝6時までにこちらへ持って来て頂けますか?」
「・・る、ルウイさん???」
私は、ルウイさんをギョッとした顔で見ると、ルウイさんは美しい顔で微笑む。
あ、これはヤバイやつだ。
「魔狼を先に退治しておけば問題ないのですよね・・・?」
カイルは、無言でコクコクと頷いた。
そして肉はきっちり完食して、ギルドへと戻っていった。・・・ああいうとこ、たくましいよな。
ルウイさんは、食事を終えていつものように食器を洗ってくれる。
ハンドクリームを塗るのかなって思っていると、静かに微笑んで・・、
「・・トーリ、少し狩りの用意をしてくるので、その後に薬をお願いしてもいいですか?」
お花が綺麗に咲いてますね〜みたいな顔なのに、気迫がすごい。
はいはい・・分かりました。
静かに頷くと、ふふっと笑って裏口から出て行った。・・・狩りの準備をするんだろうけど・・、根絶やしにしちゃうんじゃないかな・・。私は、明日出かけるならば・・と思ってお弁当の準備をしておく事にした。もちろん肉はたっぷり入れてやる。
翌朝、カイルが馬を連れて朝早く訪ねてきた。
メルクさんに「お前も行ってこい!」と言われたらしい。メルクさん、ありがとう・・・。
お弁当に肉をこれでもか!と詰め込み、ルウイさんに渡すと嬉しそうに笑って、見えないはずの尻尾をブンブンと振っていた。カイルにもついでに作って渡してあげると、すぐに尻尾がへたり込むような顔をしていたけど・・。
「気をつけて下さいね」
「はい!行ってきます!」
朝陽に照らされて金髪がキラキラと光り、馬に乗る姿はさながら王子だが、今日のルウイさんは魔狼を狩り尽くさんとする鬼神になるのであろう。
一緒に同行するカイルがすでに青ざめている。頑張れよ。




