騎士、のんびり。
今回、うちへやってきた可哀想な泥棒は、ギルドで報酬金を受け取った様子を見てついてきたらしい・・。
ルウイさん一人だったし、私なんて警戒にも値しないと思ったのだろう。
残念だったね、最強騎士団長様ですよ。
ルウイさんは、「もう少し家の周りを強化しましょう」って言うけど、なにを強化するんだ??ルウイさんがいる間に、我が家は門構えから変わってしまいそうだ・・。
そんな風に、ちょっと天然入っているルウイさんとの共同生活は穏やかに流れ・・、あっという間に一か月経った。
ルウイさんがさりげなく配慮してくれるおかげで快適だし、なかなか楽しい。
あとお肉を食べる機会がめちゃくちゃ増えた。
今日も朝、狩ってきてくれた鳥を焼いた昼食を食べる。
肉、美味い!!
「ルウイさん、今日はギルドに行くんですか?」
「ああ、はい・・そろそろ魔狼退治へ行こうと話がありまして・・」
そうか・・魔狼退治32頭事件から、もう1か月経ったのか・・・。
いや、事件ではないな。むしろ、その後の泥棒の方が事件か。
「ああ、じゃあまた行く日には、お弁当作っておきますね。・・ただ張り切りすぎちゃダメですよ?」
私がそう言うと、ちょっと照れ臭さそうに微笑むルウイさん。
「・・あれは、お弁当が嬉しくて・・ちょっと張り切ってしまって、今回は大丈夫です」
ふふっと笑って私を見つめる。
・・・・・くっ!!!大型犬ーーーー!!!!!!
そんな事、言われてしまったらまた張り切ってしまうではないか!!!肉をもっとマシマシにしてしまうではないか!!
こんな風に時々、嬉しくなっちゃうことをいうし、「撫でて」って言うから、私の中の理性はすぐ留守をしがちだ。違う、お前は本来常駐すべき存在だ!理性よ・・。
「・・・・ルウイさんは、本当に上手です」
「・・・本心からです」
「・・そういうことにしておきましょう」
精神年齢50歳(近い)で、本当に良かった。
こんなん、18歳の小娘がされたら大変だよ。あー恐ろしい!美形恐ろしい!!
ルウイさんは、ちょっとまた不満そうに私を見るけれど、そういった事は私にしなくてよろしい。期間限定同居生活の相手におべっかは不要だ。
「あ、そうだ。そろそろハンドクリーム無くなりそうなんで、ギルドに行くなら、一緒に行きましょうか」
私がそういうと、ルウイさんはパッと顔を明るくして頷く。
おっけー、グッボーイ!って言って頭撫でたい。
あ、ギルドに行くならカイルに今度こそ犬いないか聞こう。
そうして、お昼の後いつものように食器を洗ってくれたルウイさんの指先にハンドクリームを塗る。・・これ、そろそろ自分でやらないのかな・・?でも、洗い終えてカウンターの椅子に座ったルウイさんの、キラキラした目を見ると、抗えないんだよね・・。
「遊んで!遊んで!!」みたいな大型犬の目に似てる・・・。
この人・・契約が終わった後、大丈夫かなぁ・・。
サバイバル能力はあるけど、こんな分かりやすくて大丈夫なんだろうか。騙されないか心配だ。世の中は危険なやつらで一杯だぜ!?って、覚えておいて貰おう・・。
二人で街まで行くために玄関へ出ると、流れるように手を繋ぐルウイさん。奉仕の精神はいつ如何なる時でも忘れない・・騎士道。天晴れである。
久々の一緒のお出かけだからか、ルウイさんは心なしか嬉しそうだ。
尻尾が出てるぞ〜と、思いつつ可愛いなぁとも思う。
ハンドクリームを買ってから、一緒にギルドまで行くと・・
珍しく見知らぬ馬が、馬房に繋がれている。
「・・あれ、もしかして騎士さんの見回りかな」
「・・見回り?」
「ここは田舎でちょっと離れているので、騎士さんが隣の国のトーラスから派遣されて視察に来るんです」
ギルドの警備隊だけでは対処ができない時に、騎士団に助けを求められるように視察にきて、情報共有をしておくのだが・・、たまにその騎士に当たり外れがあるんだよね・・。
そう思っていると、メルクさんがしかめっ面でギルドから出てきた。
・・・どうやら今日はハズレらしい。大変分かりやすい。




