騎士、買い物する。
仕事をしていると、玄関の扉が開く音がする。
鍵を渡しておいたので、ルウイさんかな?
・・鍵を渡した時、大層複雑な顔をしていたけれど、一体何の問題がございましょう?普通という概念がないんで、私は分からないんですよ・・。
一旦、作業を中断してリビングに行くと、何か買ってきたのか買い物袋を持ったルウイさんが入ってくる姿が見えた。
「ルウイさん、お帰りなさい!何か買ってきたの?」
「あ、はい・・。報奨金を頂いたので、少しですが・・これを」
そういって、可愛い袋に入った物を渡してくれた。
「・・?開けていいですか?」
「はい、ぜひ!」
顔を綻ばせ、私を見るルウイさん・・。
何だろ?可愛らしい色合いの紙袋をそっと開けて中を見ると、リボンが入っている。
「あ、可愛い!」
「・・・髪を結ってらしたので、結んだら似合うのでは・・と」
く・・!!チョイス上手いな?!
これはモテてたな、確実に!!
「ありがとうございます・・。あんまり持ってなかったので嬉しいです」
もちろんお礼は言いますよ?
一文無しなのに、わざわざリボンを買ってきてくれるんですし・・。
と、ルウイさんは腰につけていたバッグから、ジャラっといかにも重そうなお金が入った袋を少し申し訳なさそうに、私に渡す。
「・・少ないですが、生活費の足しにして下さい」
「ちょーーーーっと待ったあぁ!!!!いや、少なくない!!十分ある!!あと、これはルウイさんのお金ですから、ルウイさんが使って下さい!!!」
すんごいズシッとするんだけど、この袋!!
そういえば報奨金の確認してなかったけど、これ・・結構な額の依頼だったんじゃないの?!!
慌てて手の中のお金とルウイさんを交互に見た。
「・・しかし、衣服や小物など、買って頂きましたし・・。食事や住む場所もお世話になっている身・・。これくらいしかできませんし・・」
「いや、食卓はルウイさんのおかげで十分潤ってますし、私も稼いでますし・・、こんなには受け取れません!!えっと、これくらいで十分です!!」
そういって、袋の中のお金をいくらか貰って袋ごと返した。
ルウイさんは何というか・・しょんぼりした顔をして私を見た。少ない私の中の良心がチクチクと痛む・・。
い、いや・・、そんな顔をしてもダメだ!!
すんごい3ヶ月くらい豪遊しても遊んで暮らせる額が入ってたぞ?
ルウイさんは、私を切なそうな瞳で見て・・
「・・トーリのお役に立てると思ったのですが・・」
「すっごいこの2日で、我が家の食卓は豊かになったし、防犯面でも格段に安全が保証されました・・。それだけで十分役に立ってますよ!」
そういうと、ようやく少し微笑んでくれた・・。
よ、良かった・・納得してくれた?
「それでは、更に喜んで頂けるよう精進いたします」
「いや、分かってないな?!さては全然分かってないな?!」
思わず突っ込んだよ。
好きに生きてくれていいんだってば!!
「トーリはとても遠慮深い方ですね・・」
「割と図々しく生きてきたと思っていますが、ちょっとそうかもしれない・・と思い始めました」
・・ルウイさんのせいで・・、心の中で、そう呟いた。
ふふっと面白そうに微笑むルウイさんは、大変美しいのですが・・、この人の金銭感覚を半年間のうちにきちんと育てていこうと、一般庶民代表は誓った。
そんな事をつゆ知らず、ルウイさんは少し恥ずかしそうに私を見て、
「・・もし良ければ、リボンをつけた姿を見せて頂いても?」
「あ、はい・・」
そっか、せっかく貰ったしな・・。
そう思って、さっと結んでみるとルウイさんは嬉しそうにニコニコ笑って見ている・・・。
・・・その姿が大型犬がすっごく喜んで、尻尾を振っているようにしか見えない・・・!!頭を撫でて褒め回したい欲求に必死に抗った・・。




