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その言葉が示す意味

「探せ、とにかく探せ」


「そんなに命令しないでよ」


「あの女の首を絞めてでも吐かせろ」


「あの女がまた死んだら意味ないのよ。 じっくりいかないと」


「俺の気が短いのは知っているだろ。 それにどうせ死ぬ」


「だったら自分でどうぞ?」


「俺の優しい面が崩れるから駄目だ」


「邪魔者を排除したいなら、その手を汚しなさいよ」



 ★ ★ ★

 ☆ ☆ ☆



「どこにいらっしゃったのですか、フロタリア様?」


「ごめんなさいね、ジャクリン。 少し外の空気を味わいたくて散歩していたの」


「だったら私を待って下されば良かったのに。 フロタリア様お一人で散歩だなんて」


「風が気持ち良かったわ。 それにジャクリンにも用があったでしょう?」


 貴賓室を出て庭園を歩いていたら、ジャクリンが私を見つけて走って来た。

 勲爵士を父に持つ娘だけあって、その姿はまるで女騎士のようだ。


 確かにエマ様の言う通り、私はどうして彼女の名前を知っていたのだろうか。

 どこかで会ったとか、聞いたとか、見かけたとか、そんな事もなかったはずなのに。


 それに気味の悪い思いがもう一つある。

 ネヴィル様やデューク様と同じ、ご学友の殿方についてだ。

 会話をする機会もないし、互いに紹介し合う事もない。

 なのにラウンジや食堂ですれ違ったり、彼らの声を聞いたり匂いを嗅ぐと身体が震え出すのだ。


 だからエマ様から聞かされた話。 あの貴賓室の匂い、家具の見覚えで、その可能性を完全に消し去れないと思った。


 だとしたら、どういう事だ。 どうして私は何も覚えていないのだろうか。

 何もわからない、エマ様が何者で私が何者で、そしてネヴィル様とエマ様の関係も。


『ネヴィル様を愛しています』


 私の愛と彼女の愛は違うと言う。

 ネヴィル様の、彼女を見つめる目の奥に愛が灯っているのは確かなのに。


 貴賓室から去り際、エマ様は言った。


『誰の言葉も信用なさらないで』


 夢なら何度か見た、悪い夢を。

 内容は覚えていない。 とにかく嫌な、不快感しかない感覚。

 だが、それはただの夢だ。 現実に起きた事ではない。


「フロタリア様、何か心配事でも?」


 気分の塞いだ私をジャクリンが気遣う。


「いいえ、何でもないわ」


 結局、エマ様は詳しい事を何も教えてくれなかった。 疑問と不信感ばかりが私の心に植え付けられただけだ。



 ☆ ☆ ☆



 それから五日後。

 ラウンジにて、エマ様の口から皆にある件が伝えられた。


 それは婚約者の、隣国の王女との婚姻の発表についてだ。


 実は、その相手とエマ様は婚約をしていなかった。

 誰もが公爵家と婚約関係を結んでいると思っていたし、そう聞かされていた。

 だから皆の衝撃は大きく、まさかエマ様ほどの令嬢が偽りを述べたのだろうかと落胆したのだ。


 だが、そうではなかった。

 エマ様は一言も自分の口で、婚約者がいるとは言っていない。

 噂好きな面々の思い込みから、次第に偽りが真実であるかのように伝えられていたのだ。


 そして、エマ様は意外な事を言った。


「愛する方がおりますの。 その方と婚姻を結ぶ為には大きな壁がありまして、それを乗り越えなくてはならないのです」


 その壁がもうすぐ取り払われようとしている、ようやく想いが叶うのだと嬉しそうに微笑んだ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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