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国友鉄砲鍛冶衆の娘  作者: 米村ひお
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圭の見た、シスターの顔

 

 *


 園では屋台の片づけが終わり、お昼御飯を食べ終わった頃だった。

 釣りへ行く支度をしている子供達の耳に、玄関から元気な声が聞えてきた。


「ただいまー!」


 あの声はたくみだなと、誰もが思った。

 たくみの帰りを心配していた圭が部屋から飛び出ると、続いて、


「クッキー売れたよ!」


 と声が聞こえ、今度はシスターの驚く声が聞こえた。


「えっ!」


 そこで会話は終わり、早足で部屋へ戻ってくる足音がして。


「ただいま圭ちゃん! 釣りいこー! 支度しなくちゃ」


 階段を上がってくるなりにっこにこで言い、部屋に飛び込んだ。

 圭は恐る恐る階段の下を見ると、空っぽのかごを手に、呆然と立ち尽くすシスターの姿があった。




「おまたせ、遅くなってごめん」


 圭に貰った麦藁帽子、先生に貰ったリュックにはサバイバル道具一式を装備し、水筒を提げて玄関へ現れたたくみを、神父と子供達はにこやかに迎えた。


「では、行きましょうか」


 揃った挨拶で出発する子供らをにこやかに見送ったシスターは、見送りを済ませて背を向けると同時に奥歯を噛み、内に秘めた怒りが顔面を覆っていた。




 夕刻、神父に連れられ、琵琶湖で釣りを楽しんだ子供達は最高の気分で宿舎へ戻ると。下駄箱を上がったところで待っていたのは、仁王立ちしたシスターだった。

 先ほどまでの楽しかった雰囲気は一瞬にして吹き飛ばされ、子供達はシスターと目をあわせないようにそそくさと部屋へ戻って行く。


 そこへ、たくみが玄関に入るや否や、


「たくみちゃん、ちょっと来なさい」


 たくみを呼ぶその声は優しくなかった。何か悪い話だとたくみはすぐに分かった。

 待ち構えていたシスターに呼ばれ、玄関を上がらずにたたきを歩いてシスターの前まで来た。一段高い所にいるシスターを見上げると、シスターはずん、と腕を組み。


「あなたは泥棒ね」


 と、たくみを突然泥棒と決め付けた。




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