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三吉友美の事件簿 Fの悲劇  作者: 大瓦 啓介
6/12

5 面会

春本は、来客があればその纏めをメモする癖がある。それだけでは無く、思い付いたこともメモして、次々に上に重ねていき、クリップで綴じておくことでも有名だった。


3月14日、ファンだと言う横山が、数日前の約束通り昼過ぎに訪ねて来た。

春本の部屋に通した後、小嶋は、たまたま遊びに来た丸山と、自ら秘書室と名付けた事務部屋で話し込んでいた。


突然ドアが開いて春本が入ってきた。

丸山がいることに気付づいて、一瞬ためらってドアのノブを持ったまま立ち止まった。

「あれ?先生、お茶のおかわりですか?インターホンで言って頂ければ、直ぐにお持ちしますのに」

「いや、もういいんだ」

「お客様は?」

「帰った。私が送り出した」


春本は、2~3秒丸山を見つめていたが、手にしていたいつものメモ用紙を、「残しておくほどのものではないから」と、小嶋と丸山の前で、メモを自らシュレッダーにかけた。


小嶋と丸山はお互い顔を見合わせた。

春本は原稿でもメモでも、クシャクシャに丸めてゴミ箱に投げ入れる。

小嶋の日課である朝の掃除は、二つあるゴミ箱を空にすることから始まるのに、その春本自らシュレッダーにかけたのだ。


「Fの問題か…。扨、どうすればいいのか…」

春本の独り言には慣れている小嶋でさえ、思わず聞き返した。

「Fですか?アルファベットの?」


ハッと気が付いたように、春本は、

「いや、独り言だ。忘れてくれ」


今日の春本はどうかしていると、小嶋は丸山と顔を見合わせた。

春本は小嶋に、「コーヒーを持って来て欲しい」と言って、自室に引き揚げた。


コーヒーを持って行った小嶋は、首を傾げながら戻ってきた。

「なんか変?先生、机の前の椅子に座って壁に向かって考え事してた」


小嶋のパソコンで、丸山が自分のフリーメールをチェックしながら、振り向きもせず答えた。

「プロットでも考えているんじゃないの?」


「トリックやプロットを考えるときは、ソファに寝そべったままなのに…かと思うと歩き回り、また寝転ぶ…思いついたらテープに吹き込んで、それを私が書き起しして入力するの」


「いつもと違うことをしてみたかったんじゃないの?」


「先輩じゃあるまいし、でも、なんかFの問題と言っておられましたよね。なんだろう?」


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