ラブリー・リタ
野外ステージから少し離れたビル街を見回りしていた雪乃とトゥインクル・チャームは、ただならぬ気配に警戒していた。
「こっちから来る!すぐそこまで来てる!」
トゥインクルが気配のする方角を指差す。
「二人でどこまでやれるか・・・あっちも大変な事になってるし!」
雪乃が木洩陽に手をかけたまま、周囲を警戒する。
「氷雪華!逃げましょう!相手はレボリューション5だよ!」
トゥインクルが雪乃の袖を引っ張る。
「ダメだトゥインクル、ラブリー・リタの狙いがわからない!こんな人通りの多い場所で放置出来ない!」
氷雪華がトゥインクルを必死で説得する。
「戦うなら応援を・・・」
「さっきの無線聞いたでしょ!?無理よ!」
「見つかった!・・・『ヒーローか』って、言った」
トゥインクルがリタの声を聞いて震え上がる。
「アイツが・・・」
雪乃が見つめた先に、大きめの白いフード付きのコートを着た、小柄な女性が立っている。
往来する人通りのなか、一人だけ立ち止まり、ゆっくりとフードを脱ぐ。
緑色のミディアムヘアに、あどけない顔をした女性。
コートのポケットから白いベレー帽を取り出すと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら頭に被る。
「なぁ〜んだ、1点が二人か・・・」
ラブリー・リタが雪乃とトゥインクルを見つめながら言った。
「1点・・・なに?」
雪乃がリタを見据えながら鯉口を切る。
「キャッ!お前ら、去年のヒーロー銘鑑に載ってないから1点だよ!・・・ザコが!」
リタが鉄扇を二人に向けて、あざ笑うかのように言い放つ。
「あああ!ダメだぁ、私、今日が命日になるんだぁ!」
トゥインクルが足をガクガクと震わせながら言った。
「落ち着いて、トゥインクル!」
雪乃がトゥインクルをなだめる。
「逃げようなんて思うなよ〜、逃げたらこうだぁ・・・」
そう言うと、リタが手を触れることなく、通行人をビルの壁に叩きつける。
「あが!」
通行人の男性が、血を流して倒れる。
「なんだ?」
「大丈夫ですか?」
周りの人々が倒れた男性に駆け寄る。
「やめろ!私は逃げない!だから一般人に手を出すな!」
雪乃がリタと距離を詰める。
「キャッ!これで・・・1点!」
リタがニヤリと笑うと、雪乃の体が宙に浮き、地面に叩きつけられる。
「あぐっ!」
雪乃がうめき声をあげる。
「氷雪華!」
トゥインクルは叫びながら数歩前に出る。
ーーー待って、今のリタの攻撃は・・・
「トドメだぁ〜」
リタが鉄扇を広げてほくそ笑む。
「氷雪華!右に避けて!」
トゥインクルが叫ぶと、雪乃が右に転がって体をかわす。
「はっ!」
雪乃が身を転がした直後、さっきまでいた場所のアスファルトに重い音とともにヒビが入る。
「なに!?」
リタが雪乃の反応を見て、驚きの声を上げる。
「氷雪華!そいつの能力はサイコキネシスじゃない!見えない手だ!」
ーーー今のは間違いなく、生き物の反応だった!
トゥインクルが雪乃に大声で情報を伝える。
「見えない手!?・・・それなら!」
トゥインクルの言葉に、雪乃はふと何かを閃く。
「ちっ!見抜いた奴は初めてだ」
リタが鉄扇を両手に構える。
「あたしがそれだけじゃないってとこ、見せてやるよ〜」
「トゥインクル!ナイスフォローだよ!」
雪乃が体勢を立て直して、木洩陽に手をかける。
「手というか、触手・・・いや鞭のような長い手が三本よ!氷雪華!」
トゥインクルが目を凝らしてリタの動きを見る。
「キャッ!キャッ!見破っても、わたしに勝てると思うなぁ!」
リタが雪乃に詰め寄る。
「スゥーー」
雪乃は呼吸を整えて集中する。
ーーートゥインクルのおかげで、手の気配が読めるようになった!
「我が名は氷雪華!悪を断ち切る氷の刃!」
雪乃は慎重に前へ出る。
ーーー正面からリタ本人、左右から見えない手が来る!
雪乃は左右の攻撃の気配に合わせて、後ろに飛び退る。
「抜刀!」
攻撃をギリギリでかわすと、見えない手に斬りつける。
雪乃の木洩陽に斬られた手の気配が消える。
ーーー斬れたのか!?
そう思った瞬間、リタが一気に近づいて来る。
「一閃円舞!」
リタが回転しながら、鉄扇を水平に斬りつける。
キン!
「くっ!」
雪乃が咄嗟に木洩陽で受けとめる。
その隙を狙って、斬られていない見えない手が雪乃の腹部を襲う。
「うおおお!」
ーーー集中!
雪乃は見えない手を、素早く肘のプロテクターで受ける。
しかし、衝撃の強さで体勢を崩す。
ーーーしまった!
「とった!」
リタが雪乃の腕を掴み、体をひねって投げ飛ばそうとする。
「!」
タァン!
リタが銃撃に気づいて、雪乃の手を離して身をかわす。
「おっと危な〜い」
リタは雪乃から距離をとる。
雪乃の背後には、リボルバー式ハンドガンM36LSを震えながら握りしめたトゥインクルがいた。
「援護くらい、わたしだって!」
ーーー護身用に翡翠蘭さんがくれた銃・・・持ってて良かった。
「トゥインクル、助かった!」
雪乃が体勢を立て直して、中段の構えをとる。
「後ろの1点、やけに正確に撃ってきやがるな。二人ともザコだと思って油断してたよ。キャッ!」
リタが今までとは違う、隙のない構えを見せる。
「氷雪華、アイツの見えない手・・・三本じゃない、増えてる」
トゥインクルが見えない手の気配に戦慄を覚える。
「どういうこと?斬っても復活するの!?」
雪乃が眉を寄せて険しい表情をする。
ーーーごめんなさい、丸山師範。これは無理かもしれません。




