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氷の刃

2159年、UP――『Unlocking Potential』と呼ばれるウイルスが世界に蔓延した。

環境悪化が進行する中、楠木美森博士が人類を環境に適応させるために開発した進化薬。それが未知のウイルスと結合して変異し、人類の潜在能力を引き出す新たなウイルスへと生まれ変わった。


2172年


緊急速報です。今夜7時頃、ヴィランと思われる集団が、ヒーロー団体セイクリッドガーディアンズ日本支部を襲撃しました。


夜の報道番組が、屋外大型ビジョンに映し出されている。


SGJ『セイクリッドガーディアンズ日本支部』では、ヴィランによる急襲を受けて混乱が生じていた。


「こちらSGJ、全ヒーローに緊急通達。現在、複数のヴィランによる襲撃を受けている。敵戦力および侵入経路は現在確認中。施設内のヒーローは直ちに戦闘態勢へ移行、非戦闘員の避難を最優先とせよ。施設外で活動中のヒーローは、指示があるまで単独での帰投を禁止する。繰り返す――これは訓練ではない。」


任務を終えたヒーローを乗せた車が渋滞の中にいた。


「おいおい!やべぇ事になってるな!」

運転手がSGJからの通達を聞いて取り乱している。


「恐らくコイツらよ」

助手席のヒーローが、携帯で見つけた動画を運転手に見せた。


「犯行声明を出してたのか」


「こちら氷雪華、直ちに向かいます」

助手席の女性ヒーローが、無線で伝える。


「お、おい!さっきの無線聞いてなかったのかよ!」

運転手が止めるのも聞かず、氷雪華は助手席のドアを開けた。

プロテクターが縫い付けられた剣道着を身に着けた、氷雪華と名のるヒーローは、刀を左手に持つと、さっそうと車の外に飛び出していく。

水色の長いポニーテールを、風になびかせながら。


SGJのエントランスホールでは、ヴィランとヒーローの闘いが繰り広げられていた。


「お前達、やっておしまい!」

リーダーの女性ヴィランが、部下に号令をかける。


「イエス!マム!」

そう言って黒服の戦闘員数名が、マシンガンを乱射する。


ヒーロー達は柱やカウンターに隠れて、手も出せずにいる。

「こちらジャスティス・ブラボー!敵のボスは変異タイプのヴィラン、マザースキュラ!防戦一方で手が出せない!応援を乞う!」


マザースキュラは一見普通の人間の女性だが、よく見ると青い肌の色と、腰から下に生える4本の触手がニョロニョロと動いている。

人体がUPの影響で変異したタイプのヴィランだ。


「さあさあ!ヒーロー共!その程度かい!?普段の態度のデカさはどうしたんだい!」

マザースキュラが気勢を上げて威嚇する。


「そこまでだ、マザースキュラ!」

マザースキュラの背後から声がする。


「あん?」

マザースキュラがゆっくりと振り返る。

「これはこれは、トップランカーの氷雪華!」


「今すぐ投降するなら、命は保証する、しかし抵抗するならその限りではない」

氷雪華は刀を抜く構えをする。


「甘い、甘いぞ!氷雪華!」

マザースキュラは触手を伸ばして襲いかかる。


「一つ、二つ・・・」

氷雪華は見切っているかのように、華麗なステップでかわす。 


「我が名は氷雪華、悪を断ち切る氷の刃!」

そう口上を言うと、一瞬でマザースキュラとの間合いを詰める。


「なに!?貴様、ノーマルのはずだ!」

マザースキュラが氷雪華の動きに驚愕する。


「抜刀!」

青い光のような一閃が、マザースキュラの体を真っ二つに切り裂く。


「これが・・・」

そう言うと、マザースキュラは血飛沫を上げて倒れた。


その様子を見ていた戦闘員は、武器を捨てて両手を上げた。


氷雪華は刀振って血を払うと、鞘に納めた。


カチン!


「状況終了」

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