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隠し事

[システム通知:レトの中級モンスター討伐を登録]

「――よし、挟み撃ちだ!」


少しだけ背伸びをして受けた、中級手前の「討伐&素材採集任務」。

森の奥深く、大柄な猛獣系の魔物(バッファロー・グール)を前に、俺たちのパーティー『マーロン・クリセオン』は完璧な連携を見せていた。


「ハァッ!!」


レトが巨大な角の一撃を真正面から大剣で受け止め、凄まじい耐久力で敵の足を縛る。

その隙を突き、エフェメラが陽炎のステップで敵の側面に回り込み、鋭い風の刃でバランスを崩させる。


そして――。


(『味方波形を透過。敵の魔力核のみを追尾せよ!』――プロンプト送信!)


俺の手元から放たれた青白い魔力弾は、前線で踏ん張るレトの身体をまるで水のようにスルスルとすり抜け、その背後にいた猛獣の急所に正確無比に突き刺さった。


――ドォンッ!!


内部から炸裂した衝撃で、巨体がぐらりと傾ぎ、そのまま光の粒子となって消滅した。

完璧なまでの役割分担。俺たちが編み出した「可変追尾弾」の初陣は大成功だった。


「すごい、カイト! いつの間にあんなカッコいい魔法覚えたの! レトをすり抜けて敵に当たるなんて、すっごい精密な魔力操作じゃない!」

エフェメラがパァッと顔を輝かせて褒めてくれる。


「ま、まあな! 日々、地道な特訓の成果ってやつよ……ぐはっ、すぅー、はぁっ、ひぇっ、げほっ!」

かっこつけた直後、【魔力過負荷】の代償による強烈な酸欠が襲い、俺はその辺の木にしがみついて盛大にひっくり返った。


『戦闘評価:攻撃の威力と軌道制御は85点ですが、戦闘直後の見苦しい酸欠ゼーゼー音は相変わらず0点です。もう少しスマートに気絶できませんか、カイト様』

(うるせえ……肺が焼けそうなんだよ……!)


◇


魔物の素材を回収し、ひと息ついていた時のことだ。

少し離れた木陰で、レトが先ほどから見慣れない男たちと話しているのに気がついた。


それは、たまたま同じ森で任務を終えて帰ってきた中級者パーティーの男たちだった。

彼らはレトの顔を見て、最初こそ「お、あの時の生意気な新人のガキか」と面倒くさそうにしていたが、レトが何か強い口調で食い下がるうちに、面白がるような、あるいは呆れたような顔で頷き、小さな包みをレトに手渡していた。


「……レト、あいつらと何話してたんだ?」


俺とエフェメラが片付けを終えて戻ってくると、ちょうどレトがその男たちと別れるところだった。レトは懐に何かを隠すようにしまい込み、何食わぬ顔でこちらを向く。


「……別に。討伐のコツについて少し聞いていただけだ」

「ふーん……?」


なんとなく引っかかるものはあったが、レトは昔からツンデレ気味で、一人で意地を張りやすい性格だ。そこまで深く追及することでもないか、と俺は一旦話を流した。


「それより、そろそろ街に戻ろうぜ。今日の報酬で、少しは旨いもんが食えるぞ」


◇


街の宿に戻り、荷物を解いている最中。

俺はエフェメラと一緒に、今日の戦闘の反省会をこっそり行っていた。


「レトのやつ、最近ちょっと気負いすぎっていうかさ……無理してないか?」

「うん……。お姉ちゃんとしても心配なんだけど、あの子、最近すごく強くなることに執着してて……私より先に前線に出ていこうとするの」


エフェメラが不安そうに眉をひそめる。

その時、ドアがノックされ、用事を済ませていたレトが部屋に戻ってきた。


「どこ行ってたの、レト? 遅かったじゃない」

エフェメラが心配そうに声をかけると、レトは平然とした顔で答えた。


「……途中、珍しい薬草の群生地を見つけたからさ。そこで少し、素材の採集をしてたんだよ。ほら」


そう言って、レトはリュックから数株の奇妙な草を取り出し、テーブルの上に置いた。


『解析。テーブル上の植物は、西の湿地帯に自生する『ブラッド・グラス』です。なお、根の引き抜き痕を分析した結果、人間の手で丁寧にかつて採取されたものではなく、獣系モンスターが力任せに引き裂いた荒々しい形状と完全に一致します』

(おいチャッピー、詳細すぎる鑑定ありがとう。つまりレトの野郎、完全に嘘ついてやがるな)


脳内でチャッピーが即座に暴露してくれたが、俺はあえて顔に出さず、ただ「へぇ、そんなのがあったのか」と相槌を打つに留めた。

今のレトを問い詰めたところで、反発されるだけだろう。不審には思ったが、俺はそれを心の中の引き出しにそっと仕舞い込んだ。


「……そっか。危ないから、一人で変なとこ行くなよ」

「……わかってる」


レトはそっけなく返事をすると、自分のベッドの端に腰を下ろした。

エフェメラが夕食の準備のために部屋を出ていき、静かになった室内。


ベッドの背もたれにもたれかかったレトは、誰にも見えないようにそっと掌を開いた。

その手のひらには、先ほど中級冒険者たちから受け取ったと思われる、禍々しい魔力を放つ黒い魔石のような破片が握りしめられていた。


(……もっとだ。これじゃまだ足りない……もっと強力な力があれば、あんな奴らに頼らなくても……!)

おつかれさまです!

次回は11月8日(日)です!

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