黎明のファントム 第2章
プレゼンが終わり、部屋に戻った敷島のオフィスに、スミスと上原が訪ねてきた。
「ちょっと、聞きたいことと、相談があるのだが」とスミスは切り出した。
「何でしょう」
「ジェイワンの詳細設計はかなり進んでいるのかね」
「駆動系のデザインは終わっていますが、出力系と制御系はまだ詰めていません」と敷島は現状を説明した。
「それならば、ジェイワンに2本、人工頭脳を組み込めないだろうか」
「2本も組み込むのですか? それはなぜです」
スミスは両手を組み、身を乗り出した。
「ジェイワンに、指揮管制能力を持たせてはどうかと思う。現状の技術では1本の人工頭脳では無理だが、2本の人工脳を連携させれば可能になる。どうだろう、既存のロボットを指揮管制できるロボットがあれば、それだけでもジェイワンのアドバンテージになる」
敷島はしばし考えながら、タブレットにジェイワンの基本設計を表示させる。
「胴体にスペースの余裕があるので、2本の人工脳を組み込むのは十分可能です。そして、頭部にこう膨らみをつけ」とタブレットに手書きでイメージを描き込む。
「管制用アンテナを組み込んではどうでしょう。指揮管制用ロボットになります」
「うん、これはいい。人工頭脳の連携技術はコンピュータ「ニック」で実証ずみだ。実現はむずかしくない。ここは私に任せてもらおう」
「いいですよ。その案で詳細設計を詰めます」
「うん、よろしく頼む」
上原はその話に割って入る。
「では、私は、ジェイツーとジェイスリーの人工脳の開発を行います」
「こんなプロジェクトを任せてもらうとは、実に楽しい」とスミスが言う。
「確かに、いいですね。ぜひプロジェクトを成功させたいです。3案の開発を後押ししてくれたカーペンターさんに報いるためにも」
しばし、三人はこれから開発するロボットの詳細について、考えを述べ合った。スミスは改まって言った。
「ジェイワンのサイズでは無理だろうが、ジェイツーやジェイスリーのフレームなら、アンドロイドに設計を転用することはできるだろうか?」
「最初から、そのように細部設計しておけば可能かと思います。アンドロイドにすることも考えているのですか?」と敷島は前向きだ。
「うん、私は常々、アンドロイドは人間に近い分、人間に寄り添え、反応速度がメタロイドより速くなると考えている。実際、緊急時のアンドロイドは、かなりの強さを発揮することが、現実に見られるのでね」とスミスは答えた。
「スミス博士が提唱するポテンシャル理論ですね」と上原が言った。
「そうだ。アンドロイドならば、メタロイドより人間をよりよく守ってくれるはずだ。これはジムの考えをより進化させる」
スミスはダグラス社の経営者、ジム・ダグラスとは旧知の友である。そのため、上原や敷島より詳細な構想をジムから聞いているのだろう。
「それは、大変興味深い構想です。ジェイツー、ジェイスリーは、アンドロイドに設計を反映できるように設計しておきましょう」と敷島は答えた。敷島の目は、いかにも楽しそうに輝いている。
「うん、頼む。ただし、未確定の構想ではあるし、開発に無理が生じるなら、このことは忘れてもらいたい」
「いやいや、メタロイドの汎用性を考えるなら、アンドロイドに転用できるフレームを開発するほうが有用ですよ。任せてください」と敷島は請け負った。
「ジムにも、「スーパーアンドロイド」構想について、話しておく。きっと賛同すると思う」
上原は、
「その、アンドロイドを頂点とするロボット部隊が理想かも知れませんね。Jシリーズのロボットにも、その基本概念を組み込んでおきましょう」と考えを述べた。
「そうだ、上原くんのいうとおりだ。よし、これで進めていこう」
後のJシリーズとスーパーアンドロイド開発構想は、こうして決まった。




