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「ヘレーナさん、しばらくギルドを離れるんですか」
「本部からの依頼で断れず、ある程度の期間空けることになりました」
「ところで、なぜそれを私に?」
「ギルド長(代理)を任されてください」
受付にいたり奥に引っ込んでいたりと、基本的に定位置にはいないが、ギルドの会合に代表として出ていたあたり、今さらだがメイズのギルド長だったのだろう。今回は長く空けるためその代理が必要と。
「改めて聞きますが、なぜ私に? ここの職員の中では一番の若輩者ですが」
「キリハさんは唯一、王都の本部での経験があるからです。他の職員だと通常業務は問題ないにしても、ギルド長の仕事となるともたつくでしょうし」
「能力を買ってということですか。とりあえずリストかマニュアルみたいなのありますか?」
「そう言うと思って、まとめてありますよ」
小脇に抱えていたバインダーの紙にリストアップされた、ギルド長の仕事内容に目を通す。
確かにこの内容なら、問題なくこなせるだろうことはわかる。
しかし、これだけはちゃんと確認しておかなければならない。
「本当に私に任せていいんですか? きっと、戻ってきてから後悔することになりますよ。手間取ってもいいから、別の人に任せればよかったと」
「え、こわ……。普段見てる態度からそんな感想に繋がるとは、とても思えないんですけど……。単純にやりたくないだけなら、そう言ってください」
「必要とあらばやりますよ。あくまで私に任せていいのか、この一点を確認しているだけですから」
後で文句を言われても困る。
恐らく今回も、同じような事態になることが目に見えているため、こちらとしては保険をかけておきたいだけなのだ。
「っても他にはめぼしい人もいないし……。そんな脅しには屈しませんよ。あなたをギルド長(代理)に任命します」
「アリシアさん、大丈夫ですか?」
「うん、くっきりはっきり録れてるよ」
「!?」
しかしこちらにも、心強い味方がいるのだ。
レコーダー片手に背後からぬっと現れたアリシアさんに、戦慄しているヘレーナさん。
「言質は録りました。それでは後のことは私に任せて、頑張ってきてください。それと、もし王都に寄ることがあれば、このお金で首につけるアレも買ってきてください」
そんなこんなで資金を渡し、この流れに目を白黒させつつも、ヘレーナさんは本部からの依頼で出発していった。
とりあえずギルド長(代理)として準備しますか。




