表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/43

エピソード35 辺境伯と王女

「…」


 レオドール辺境伯と王女のデート当日。

 私の屋敷の玄関ホールで、辺境伯がぶつぶつ言いながら右往左往している。


 艶のある緑色のフェルトで出来た、襟の大きなコート。

 シャツの上に銀色のベスト。

 白いスラックスに、高級そうな皮のロングブーツ。


 全て、この日の為に私が選んだものだ。

 いつものレオドール辺境伯とは全然違う華やかな印象で決まっている。


 店で男性向けの服も取り扱おうかと思った。


「見た目は、ばっちり決まっています。デートプランは、しっかり頭に入りましたか?」


 レオドール辺境伯につられて、私も右往左往しながらアドバイスする。


「あ、ああ」


 レオドール辺境伯は、不安そうな顔で答える。


「大丈夫です!」


 オーレッド公爵夫人が、きっぱりと言い放つ。


「何の心配もございません。とにかく落ち着きなさい!」


 落ち着かない私と辺境伯を、オーレッド公爵夫人が、たしなめる。


 公爵夫人は、こういう時に頼りになると思っていたのだが、実際には何のアドバイスもしてくれなかった。

 終始「大丈夫です」と言うだけだ。


「もしかして、公爵夫人はデート経験が少ないので、何もアドバイス出来ないのでは?」


 私は、思わず余計な事を言う。


「兄に思われていたからって、ふられた公爵夫人に失礼な事を言うもんじゃないよ」


 レオドール辺境伯が、追い打ちをかける。


「だまらっしゃい!!はぁ、これだからモテる人達は、分かってないわ」


 公爵夫人が、怒った。


「とにかく、何の心配もいらないので、自信を持って行ってらっしゃい」


 彼女は、そう言う。


「そうね、こうなったら当たって砕けろよ!でも、私とルーベルトの為に、出来るだけ砕けないでね!」


 私は、その後に続いて言った。


「よし、行ってくる!」


 レオドール辺境伯は、動きが硬いながらも胸を張って扉を開けた。




 レオドール辺境伯とミネルヴァ王女は、郊外にある王家の別邸の美しい庭園で落ち合う約束だった。


 色とりどりの花が咲き乱れる庭園の中に建つ東屋で、王女が待っている。

 そこにガチガチの動きで近づいていく辺境伯。


 私と公爵夫人は、物陰に隠れながら二人の様子を覗き見る。


 辺境伯は、東屋に入る為の小さい階段でつまづいて、大きくコケた。

 頭を掻きながら、そそくさと王女の前の席に座る。


 もう!何やってんのよ!

 私は手に汗握る。


 別邸の召使いが、二人に紅茶と菓子類を持ってくる。

 辺境伯は、緊張をまぎらわす為か、笑って王女と話しながら次々と手で菓子を口に押し込んでいる。

 笑う口から、粉砂糖を飛ばしている。


 あー駄目!あの人、マナーは全然駄目だわ!


 辺境伯と王女は立ち上がり、庭園を散策し始める。

 それを追いかける私と公爵夫人。


 やがて辺境伯と王女は、庭園にある池のほとりで、ボートに乗ろうとする。

 先に乗った辺境伯は、王女の手を取る。

 その時、ぐいーっとボートが動いてしまう。

 辺境伯は、バランスを崩して王女共々、池に落下した。


 池は、浅いので何ともなかったが、二人共、ずぶ濡れになってしまった。

 顔を見合わせる辺境伯と王女。

 辺境伯は笑って誤魔化そうとしているが、王女は表情をまったく変えない。


 思わず私達は飛び出して、召使い達を呼ぶ。

 別宅の召使い達が慌ててやってきて、二人を着替えにつれていく。


 終わった。

 私とルーベルトの計画も全て終わったー!

 私は、天を仰ぐ。


 公爵夫人が、私の肩を叩き、うんうんと頷いた。

 もう!なんなの、この態度!


 ついてきたのが、ばれてしまった私達は、ここで帰るしかなかった…。




 その夜、レオドール辺境伯が、屋敷に帰ってきた。

 今回、王都にいる間、辺境伯は私の屋敷に宿泊する事になっている。


 とぼとぼと、私と公爵夫人の前に歩いてきた辺境伯は口を開く。


「最後にプロポーズはしたんですが、色々とやってしまいました」


 レオドール辺境伯は、頭を下げる。


「あの展開でプロポーズ!心臓強すぎか!それに、話が早すぎ!」


 私は、思わずツッコミを入れる。


「うんうん、よく頑張りました」


 公爵夫人は、満足気に頷いた。


「いや、頑張れてないでしょう!?」


 私は、公爵夫人にもツッコミを入れる。


 その時、屋敷のドアをノックする音が聞こえた。

 アンナが、対応する。


「シャローラお嬢様、今、ミネルヴァ王女の御付きの方からレオドール様に手紙が…」


 あー、断りの手紙だ…。

 アンナの言葉に、私はがっくりと項垂(うなだ)れる。


「待ちなさい。ちょっと失礼!私が読んでもよろしいですか?」


 公爵夫人が、その手紙を手に取る。


「はい!お願いします」


 レオドール辺境伯が、ぐっと目を閉じる。


「辺境伯のプロポーズを快く受けたいとの事。ただし、レオドール辺境伯が、王太子としての立場を得た場合に限るそうです。なお、また、一緒に出掛ける様にとの事」


 手紙に目を通した公爵夫人が、言った。


「よっしゃー!」


 辺境伯が、嬉しそうにガッツポーズをした。


「ええええええ?」


 私は、そう言いながら、ほっと胸をなでおろした。


「まったく、王女の気持ちが分からないわ」


 私は、そう呟く。


「何も分かってませんわね、シャローラさん」


 公爵夫人が、ふふんと鼻で笑う。


「王女は、使命を果たす為に王子なら結婚はするつもりです。それを、わざわざ辺境伯と会いたいという事は、彼に興味があるという事。好きになってしまえば、こういう話は早いものですよ」


 夫人は続けて、そう言った。


「この話、もう決まっているようなものだったと?」


 私は、言った。


「そうです。ルーベルト殿下と私は、既に分かっておりました」


 公爵夫人は、鼻高々で言う。


「私のルーベルトと以心伝心みたいな言い方しないで下さい!」


 思わず、私は言った。


「あら、私のルーベルトですって。お可愛い事」


 公爵夫人は、笑う。


「…」


 やられた!私は、拳を握って悔しがった。

よろしければ、評価とブックマークお願いします。

励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ