エピソード33 王との謁見
私とルーベルトは、私的に王に謁見する事になった。
王とは、城での舞踏会や晩餐会で少しだけ謁見した事がある。
そういう場で、簡単に婚約の挨拶はした。
婚約の許可を正式に受ける場は、婚約お披露目の前に準備されていた。
事件続きで先延ばしになっている。
普通の家と違い、すぐに会いに行ける方ではない。
そこをルーベルトが無理を言って、この席を設けてもらった。
王の私室のソファーで、私とルーベルトが王と向かい合って座る。
王は、ルーベルトに似た長身のハンサムで、白髪交じりの髪をオールバックにセットし、口ひげを蓄えている。
かっこいいシルバーグレーの優しそうな、おじさまという雰囲気だった。
「シャローラ、婚約後に王妃が決まってしまい、申し訳なかった。これも王子の務め、許してほしい」
王が、私に謝罪する。
「いいえ、とんでもない。ルーベルト殿下の立場は、理解しておりますので。この様な私を王家に迎えて下さるだけで、大変な名誉です」
私は、恐縮してしまう。
「そなたの父上は、王家に多くの寄付を頂いている。この国の経営にはなくてはならない方だ。謝意を伝えてほしい」
王は、そう言った。
ルーベルトの行動だけで、私との婚約が決まるはずもない。
あらためて、父に感謝した。
「その件で、父上に率直にお聞きしたい」
ルーベルトが神妙な顔で王に話しだす。
「なんだ、ルーベルトよ?」
「私が行方不明の時、父上は、どの様な準備をされておりましたか?私が死んでいた場合の準備をされていたと思いますが」
ルーベルトが突拍子もない事を言い出す。
私は、事前に聞いていたのだが。
「何を言いだすのだ?その様な事を考えていたはずがなかろう」
王は、動揺しながら言う。
「一国の王として、そんなわけがありますまい。私を気にせず、お話し下さい」
ルーベルトが食い下がる。
「…その時は、レオドールを王太子として迎える予定だったが」
王は、渋々話し出した。
「そうでしょう。そして、その為には王がレオドールの母上、公妾アリエッタ様と再婚して王妃とするおつもりではなかったでしょうか?この国の取り決めでは、そうしなければレオドール辺境伯を王子として迎える事は出来ませんから
ルーベルトが、王を問い詰める。
「確かにそうだが、アリエッタには固辞された。もうよいではないか、お前はこうして生きて戻ったのだから」
王は、困り顔で言う。
「では、アリエッタ様が了承すれば、それは可能であったのですね?」
ルーベルトは、確認する。
「確かに、それはそうだが。お前は、何を考えているのだ?ルーベルト」
王が、ルーベルトの顔をじっと見る。
「私は、王位継承権を返上してレオドールに譲りたいと考えています」
ルーベルトは、きっぱりと言った。
「な!!お前は、王太子としての責任を何と心得ておる!!」
王は、立ち上がって大声でルーベルトを叱る。
「充分に心得ているつもりでしたが、私の一番大切なものは私の横に座っております。彼女の為には、王位も捨てましょう。馬鹿な息子を許していただきたい」
ルーベルトは、はっきりそう言った。
そう言う事を聞いてはいた。
しかし、目の前ではっきり言われると、動悸が高まって胸が苦しくなる。
私は口を両手で押さえて、なんとか気持ちを落ち着ける。
「馬鹿を申すな。そんな事は不可能だ!アリエッタは了承しない。レオドールやミネルヴァ王女には、どう説明する?」
王は、ルーベルトに言った。
「万事、私にお任せ下さい。絶対に何とかしてみせます」
ルーベルトは、強い目で王を見る。
「その強情なところ、母にそっくりだ。では、なんとかしてみせよ。その時は、もう一度話を聞こう」
王は、頭を手で押さえながら、渋々了承した。
王の私室を出たルーベルトは、城の廊下を早足で進んでいく。
私は、なんとかそれを追いかける。
「あんな事、軽々しく言って大丈夫なの?」
私は、心配そうにルーベルトに言う。
「軽々しくはない。充分考えている。全て私に任せておきたまえ。いや、少しは君の力も借りるかもしれないが」
ルーベルトは、笑顔で私に言った。
あまりに自信満々の態度に、私の心配は晴れない。
しかし、こうなったルーベルトは、簡単には止められない。
私の為なら、何でもやってしまう人だ。
そこだけは、信頼出来た。
よろしければ、評価とブックマークお願いします。
励みになります。




