表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/79

第1章 エピローグ

《ウォルス、ジーニャ、エレン編》


戦いは終わった。

ポルファス王国軍より勝鬨の声が上がる。


ジーニャは、オリオンの異形の仮面をそっと拾った。

死を纏う者が消えた場所には、持ち主を失った真っ赤な弓が落ちている。


エレンは、その弓を浄化した。

すると、弓は砕け散り、跡形もなく霧散していった。


ポルファス王国軍の勝鬨の声が続く。

ウォルス、ジーニャ、エレンの3人は、その場から静かに姿を消した。


次の日、3人は魔素の世界に転移してきた。

転移した場所は、旧モルカット王国の廃墟となった王城である。


その地下牢の一番奥には、白骨化した死骸がある。


「そう・・・これが、あの子だったのね。」


エレンが呟いた。

その白骨は、アイラである。


ジーニャは、無言のまま光魔法を使用した。

3人に見守られて、アイラの亡骸は儚く消えて失せていったのであった。


***************


《オルタス、マゴット編》


死を纏う者は消滅した。


ヒサシンことマゴットは、アイラとシモンの英霊が消え逝く姿を見つめていた。

自分が捧げられる祈りはない。


マゴットは、2人が恋仲にあったことを知っていた。

その2人の最後が、あの優しい光に包まれていることに涙した。


エレンが、自分に掛けられた呪いを解除してくれる。


「すまん。ありがとう。」

「いえいえ。」


エレンは、どうやら自分のことを覚えていないようだ。

きっと、何か理由があるのだろう。


若干の幼さが残る銀髪の少女と目が合った。

どうやら、彼女は自分の正体を知っているように感じられる。


その少女に対して、マゴットは無言のまま首を横に振った。

今更、再会を喜べる状況にはない。

エレンが自分のことを忘れているなら、そのままで良いのだろう。


オルタスは、この戦いを救ってくれた3人に感謝を伝えた。

そして、王宮に招待したいと申し出る。


しかし、全く興味がないようであっさりと断られた。


味方が勝鬨の声を上げる。

皆が涙ぐんでいる。


その声に紛れるかのように、3人は静かに去っていった。


「王宮魔導士殿、あの方々は、一体何者なのでしょうか?」


オルタスがマゴットに問い掛けた。


「うむ。儂にも分からんな。」


マゴットは苦笑で返した。


勝鬨が続く。

それは、勝利した喜びと誇りの叫びであった。


***************


《フクダン伯爵、マトバン、ミズナ、ルバーツ編》


フクダンは、私兵騎士隊長2人の壮絶な最後について報告を聞いていた。

執務室の中には、マトバンとミズナ、そしてルバーツがいる。


「そうか・・・。」


フクダンは目元を押さえた。


2人は長年に亘って、自分を支えてくれた。

そして、今夜の戦いでもヤークションを救ってくれた。


2人とも、ヤークションにとっては無くてはならない存在であった。

心から感謝しかない。


「夜は遅いが、いまから2人の家族の下に行こうと思う。私が直接出向いて知らせるべきだ。」


フクダンは立ち上がった。


そこに新たな知らせが入る。

副官のマルカーが行方不明であり、その側近が息絶えていたとのことである。


「そうか。」


それは、フクダンにとっては、どうでも良い報告であった。


今回の戦いで、民に被害は出なかった。

それでも、魔族に対する防衛が万全ではなかったとして、この教訓を活かさなければならない。


2人の私兵騎士隊長だけでなく、多くの騎士たちが民を守って倒れたのだ。

その死を無駄にしてはならない。

フクダンは、それを深く心に刻んだのであった。


***************


《ヒーロ、ケイル、獣人の女の子、ヴィラロア編》


フクダン伯爵夫人であるヴィラロアは、ベッドで眠る我が子の髪を愛おしそうに撫でた。

その後ろには、3人の使用人が控えている。


1人は、老齢で身なりの整った姿の執事バトラー

あとの2人は、メイド服を着用した若い女性である。


それは皆、ヴァンパイアであった。


「ご苦労さま。」


ヴィラロアが、メイド服を着用した若い女性2人に言った。

労われた2人は、畏まって頭を深く下げる。


ヤークションの街中に侵入した敵は、この2人のメイドが始末していた。

それによって、民には一切の被害が出なかったのである。


ヒーロは、今夜“覚醒”した。

人間とヴァンパイアのハーフ“ダンピール”としての力が目覚めたのである。

それは、執事バトラーとメイド2人も感じ取っていた。


「奥様、隣の部屋で休ませている子供2人は、如何なさいますか?」


隣の部屋で眠っている子供とは、ケイルと獣人の女の子だ。


「因みに男子は、嘘つきマルカーのせがれのようです。」

「そう。」


ヴィラロアは、全く興味を示さない。


「2人のことは、ヒーロに決めさせることにしましょう。」

「仰せのままに。」


その頃、領主であるフクダン伯爵は、殉職した2人の英雄の家族の下に向かっていた。


フクダンの執務室の奥には、異物がある。

それを知るのはヒーロだけであった。


***************


《カモット辺境伯編》


防衛、夜襲、衝突。

カモットの策により、初日に起きた3つの戦いは全て王国軍が勝利した。


しかし、その勝利を喜ぶものはいない。

王国軍にも甚大な被害が出ているからである。


カモット、王国騎士常駐隊長、私兵騎士隊長の3人は、敵軍を慎重に分析していた。

今回の敵はイバランとマイラン、その2つの国の連合軍である。


その中でも、とくに気になるのはイバランであった。


初日最後の戦いとなったイバラン兵との衝突。

イバラン兵の質は、決して高いとはいえない。

長槍パイクの長さを勝手に変えてしまうことが、その証左である。


王国軍としては、あの場でイバラン兵を壊滅させる必要があった。

しかし、それが叶わなかったのである。


形勢不利と判断したイバラン兵は、即座に退却の陣鐘じんがねを鳴らした。

潔き撤退を判断したのである。


イバラン兵の実力が、どうも計り知れない。


「明日は、正念場になりそうだな。」


カモットの呟きを聞いて、王国騎士常駐隊長と私兵騎士隊長は深く頷いた。


***************


《ラタ編》


「ラタよ。君の初陣が、あの策士カモットを相手にせねばならんのが、とても残念でならんよ。」


グラスに飲み物を注ぎながら、イバラン軍を指揮する将軍はラタに語り掛けた。


この将軍は、ごく凡庸な人物である。

しかし、部下の意見に耳を傾ける心は持っている。

そして、目の前にいる若き将校が、百年に1人の逸材と言われる才能を有していることを承知していた。


「光栄です。でも、この戦いに“意味”はないと思います。」


ラタの驚くような発言を聞き、その将軍は目を丸くした。


「それはどういうことかね?」


「はい。この戦いは、何者かに仕組まれたものだと思えるからです。」

「ほう。」


「当初、敵が我が国を攻めてくるという情報でした。その為、マイランと連合を組んだはずです。」

「そうだな。」


「それが、今日の戦いを見たところ、敵はそれほど多くの戦力を有しておりません。」


イバラン軍の将軍は、腕を組むと陣幕の天井を見つめた。


「偽の情報に踊らされているか・・・・。」

「たぶん間違いないでしょう。」


ポルファス王国が攻めてくる。

その準備が整う前に、敵国の南部を制圧すべきというのが、国からの指示であった。


それが、敵国には攻めてくる意志など無かったとなれば、今回の戦争を仕掛けたのは連合軍側となる。


それは事実であった。

実際、そう仕向けたのは、ポルファス王国の貴族であるシーラオスである。


「これは、深刻な問題になりそうかね?」

「なりますね。ですが、敵の南部を入手できれば、どこか落としどころが見えるかもしれません。」


ラタは、手に持つグラスをテーブルに置いた。


「最低でも、敵の領主カモットを捕虜にしなければなりませんね。」


すでに伏線は敷いている。

恐らくは、敵はそれに気づいていない。

今日の戦いで、戦の経験も知識も、自分はあの策士の足元にも及ばないことは痛感した。


しかし、収穫が無かったわけではない。


「明日は、間違いなく正念場になりますよ。」

「そうか。じゃあ、その計画をしっかりとご教示頂くとしようか。」


イバラン軍を指揮する将軍は、テーブルの上に地図を広げた。

2人の打合せは、深夜遅くまで続くのであった。


***************


《ミック編》


ミックの部屋にはモノがない。

必要最低限のモノしか置かれていないのだ。


そんな殺風景な部屋ではあるが、窓の傍には“鉢植え”が置かれている。


それはミックが置いたものでは無い。

昔、リアンが部屋に来て、ミックの部屋は寂しすぎるから、花でも置けと言って置いていったものだ。


ミックは、自分でそれを手入れしたことは無い。

そして、それを気にしたことすら無かった。


それが今日は違った。


その鉢植えが目に留まる。

ミックは、窓を開けた。


ゴーレムが手入れしているのだろうか?

考えてみれば、季節ごとに花が変わっているような気がせんでもない。

・・・・まあ、いいや。


ミックは考えることを止めた。

鉢植えの横に、バラバラになったリアンの拳銃を置く。


これ、どうするかな。

バラバラになった拳銃を組み立てることができる奴がいないか、探すしかないだろう。


だが、心当たりがない。


ミックは頭を掻いた。

そして、上着を脱ぐと、シャワーを浴びるべくバスルームに向かった。


鉢植えの花は、黄色のパンジーとビオラである。


ミックは、花の名前を知らない。

ましてや、花言葉など興味もない。


その花は、窓から入る風に優しく揺られていた。


***************


《キントン編》


ゴーレムは眠ることが無い。

キントンは、湖畔に座って主の像を眺めていた。


キントンは作り変えられたゴーレムである。

自分に作り変えられる前のゴーレム、云わば父親ゴーレムの素材から作り変えられた存在だ。


父親ゴーレムは、6本の腕にそれぞれ違う武器を携えた屈強なゴーレムであったと聞いている。

しかし、主を守って壮絶な最期を遂げた。


その父親ゴーレムを素材として作られた自分は、身体は小さいし武器はこの1本の刀しかない。

最初の頃は、自分の力不足を嘆く日々であったことを思い出す。


その都度、主や皆々には励まされた。


あの時、自分が“心眼一刀しんがんいっとう”を極めていなければ、きっと主の役には立てなかったであろう。


しかし。

結局は、途中で脱落してしまった。


主の像を眺め続けるキントン。


ふと、自分が空虚の空間で、何か大切なことを忘れた気がすることを思い出した。


「拙者は、何か大事なことを忘れたのではなかろうか・・・・。」


なぜか不安が込み上げる。


MAPマップを見ると、自分に向かって“青色”の印が近づいてきている。

キントンは、すでに“異世界免許教習所に雇われし者”となっていた。


「湖の中に入ってみるかい?」


キントンに近寄ってきたのは、黒色のゴーレムであった。


「そうでござるな。是非に。」


キントンは立ち上がり、その黒色のゴーレムにお願いした。


***************


《ゴラン編》


ゴランは、今日という日に何か“意味”がある気がしてならなかった。


キントンと再会できた。

リアンの拳銃が回収された。

オリオンの最期を聞いた。


そして、ついに呪物創造者マレディクシオンメーカーの手掛かりを得た。

その名を終焉ラファンという。


奴こそが、あの戦いの首謀者であり、長年探し続けている敵である。


今日、奴の“作品”は2つ消えた。

きっと、奴はそれに気付いているであろう。


「動き出すであろうな。」


新たな物語がはじまる。

引き続き、2章をお楽しみ下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ