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第1章 第43話 どうやら長年の答えが出たらしい

ゴゴゴゴッ!

ガタガタガタッ!

ガタンガタンッ!


天井が崩落した。


「あぶなっ!」

「伏せるでやんス!」


僕らの真上から、大量の大きな岩の塊が降ってくる。


キントンが刀を抜いた。

そして、次々と落ちてくる岩を巧みに斬る。


キントンが斬った岩の欠片が、ドスンドスンと激しい音と振動を伴って僕らの横に落ちていく。


まだまだ大量の岩が落下してくる・・・・と、思ったその時。

落ちてくる岩は、不思議と宙に浮くように止まっていた。


「ふむ? 何でお主らがここにおるのだにゃ?」


天井からゆっくりと降臨してきたのは、大賢者コマゾーであった。

コマゾーが杖をかざすと、宙に浮いていた大量の岩が僕らを避けるように周りに落下する。


ドズン!ドガン!ドッスーン!


本当に死ぬかと思った。


「ちょっと大賢者!危ないどころじゃないわよ!」

「キントンがいなかったら、絶対に死んでたでやんス!」


ミアとポランが怒ってコマゾーに詰め寄っていく。

2人を無視して、コマゾーはキントンの下に軽やかに歩み寄った。


「とても・・・とても久しぶりだにゃ。」

「もしや、そなたは“こま殿”であられるか?」


「そうだにゃ。あれからもう千年はゆうに過ぎているにゃ。」

「そうでござるか・・・。」


「せっ、千っ!?」


僕らは驚愕した。

とても長い間、キントンが呪いの道具マレディクシオンパーツの呪縛に囚われていたことは知っている。

でも、まさか千年を超えていたとは思っていなかった。


コマゾーは、傾奇者が着ていそうな羽織りの袖から“陰陽”の形をした石を取り出した。


「これは“尋ね物を知る石”と言って、探し物に導く石だにゃ。」


コマゾーは陰陽の形をした石を2つに分けると、その1つを僕らに見せた。


「この1つは、ずっとお主のことを探しておった。」


僕らは尋ね物を知る石を覗き見た。

勾玉のような形をしたその石は、明らかにキントンに反応している。


「しかし、これまでは全く反応することがなかったにゃ。それが、さっき急に反応しだしたのにゃ。」


それは、呪いの道具マレディクシオンパーツの呪縛が解けたからだろう。

僕らはそう思った。


「とにかく、まずはここから抜け出すにゃ。」


そう言うと、コマゾーは全員を1箇所に集めた。


「この導きの迷宮は、地下と地上が繋がっている道などないにゃ。」


「え?」

「えっ!?」

「へっ?」

「?」


さらっと怖いことを聞いてしまった。

そして僕らは、コマゾーの瞬間移動で、迷宮の地下を抜け出したのであった。


****************


- 魔素の世界 -

《ポルファス王国 西部 ヤークション城壁》


その頃。


ヤークションの城壁では、苛烈な攻防戦が繰り広げられていた。


城壁をよじ登ってくる死の軍団。

敵を迎え撃つヤークションの私兵騎士隊と王国騎士軍団常駐隊は、敵の数に徐々に圧されつつあった。


状況は芳しくない。

そして、ついに城壁の1箇所を敵に崩されると、そこから何体かの敵が街中に侵入してきたのであった。


「押し返すのじゃっ!!」


敵に崩された城壁に私兵騎士隊長が駆けつけた。

そして、周囲の私兵騎士に叫んで鼓舞する。


その私兵騎士隊長に対し、城壁を乗り越えた敵が上から飛び降りてきて襲いかかった。


ズバンッ!


そこにマトバンが駆けつけてきた。

城壁を飛び降りてきた敵は、マトバンの斬撃によって斬り捨てられた。


私兵騎士隊長が喜びの声を上げる。


「マトバン殿!ご無事であったか!」

「うむ。情けなくも、生き延びさしてもろうた。」


「何を仰るっ!前王国騎士軍団長のマトバン殿がおられるだけで、皆の士気が上がるというものですじゃ!」


そう言って、私兵騎士隊長はマトバンに笑顔を向けた。


友は、死地からマトバン殿を見事救い出した。

よくやってくれた・・・友よ。


騎士たちが、急いで岩を積み重ねると、何とか穴を塞ごうとする。


ドゴーンッ!


しかし、積み重ねた岩は無残にも砕け散った。


立ち昇る砂煙の奥から、ゆっくりと黒馬に乗った真っ黒い騎士が入ってくる。

その黒馬は、首から上が紫色の煙に覆われていた。


「ふぅ。・・・どうしても、儂と決着をつけたいようじゃのぅ。」


マトバンは、剣を構え直した。


「あれは!? 黒幽騎士デュラハン!?」

「なっ!?」

「!?」


騎士たちに激しく動揺が走る。


「安心せよっ!こ奴は儂が討ち取る!皆は敵の侵入を防ぐのじゃっ!」


マトバンが大声で叫んだ。


黒馬に乗った黒幽騎士デュラハンは、マトバンの姿を確認するとゆっくりと近寄ってきた。


「マトバン殿・・・。」

「惨いことをするのぅ・・・。」


マトバンと私兵騎士隊長は、怒りを必死で抑えた静かな声で会話した。


黒幽騎士デュラハンは、窮地のマトバンを救った私兵騎士隊長の首を、その手にぶら下げている。


私兵騎士隊長は城壁を見上げた。

城壁の上は、かなりの苦戦を強いられているようだ。

もはや、崩壊寸前である。


「マトバン殿。儂は上に行って参る。友の仇を託しましたぞ!」

「任されたっ!」


黒幽騎士デュラハンは、私兵騎士隊長の首を放り投げると黒馬から降りた。


マトバンは、深く息を吸い込み、それをゆっくりと吐き出した。

そして、スキル“筋力強化”を使用したのであった。


****************


《ポルファス王国 西部 ヤークション 伯爵邸》


一方、その頃。


ヤークションの領主 フクダン伯爵は焦っていた。


有事に備えた準備として、街の数箇所に避難場所を指定して設けている。

しかし、避難誘導する為の人手が足りず、民には大きな混乱が生じていたのであった。


ヤークションは、私兵騎士隊3500、王国騎士軍団常駐隊1000の騎士を有している。

その内の2500は領内巡回で街の外に出払っており、残る2000で城壁を守っているものの、その防戦は厳しい状況であると報告が入っていた。


夜となっては、使い鳩を飛ばして王宮に援軍を要請することが出来ない。

使い鳩は夜目が利かないのである。


いまある戦力だけで、この敵襲を凌がなければならないのだ。


民の避難誘導に騎士を向かわせる余裕などない。

しかし、街中では大きな混乱が生じている。


フクダンは悩んでいた。


そこに屋敷の使用人が慌てた様子で走ってきた。


「旦那様!ご子息が、坊ちゃまの姿がどこにも見当たりません!」

「ヒーロが!? なぜ!?」

「分かりません。どこを探しても姿が見当たらず。」


フクダンは頭を抱えた。


「貴方、何をそんなに悩んでいるのですか。」


頭を抱えて悩むフクダンの姿を見て、伯爵夫人は静かに問いかけた。


「ヒーロは私が何とかします。貴方は民の誘導を急いで下さいな。」

「しかし、人手が・・・人手が全く足りないのだ。」


「まあ。貴方らしくもない。もっと民を信用してはどうかしら。」

「!?」


「貴方がこれまで民と築き上げた信頼関係は、このような時の為ではないのですか?」


堂々たる妻の態度を見て、フクダンは少し落ち着きを取り戻した。


「ふぅ。そうだな。」


フクダンは小さく呟いた。

そして、何かに納得したかのように立ち上がったのであった。


ヤークションの街中は大混乱に陥っていた。

しかし、それは一時的なことであり、すぐに治まっていく。


各地区で組織化された“自警団ヴィジランテ”が、率先して動いていたのであった。

それにより、避難誘導の流れが良い方向に変化していく。


それは、フクダン伯爵家が築き上げてきた民との信頼関係が、ここに実を結んだものであった。


****************


《ポルファス王国 王都近郊にある丘》


場面はポルファス王国の王都より少し西へと移る。

そこには丘があり、一面の花畑となっていた。


その丘には、誰が手入れをした訳でもなく、黄色の“パンジー”が咲いている。

黄色のパンジーの花言葉は、“つつましい幸せ”。


パンジーは、その花の大きさが小さいものは“ビオラ”と呼ばれる。

ビオラの花言葉は“少女の恋”である。


その丘に1人の若い吟遊詩人が座っていた。

月明かりに照らされた丘は、一面に咲く花々を包んで優しい風が流れている。


その吟遊詩人は丘の下を眺めていた。

丘の下には、2つの軍勢が相対している。


これからきっと、血生臭い戦いがあそこで始まるのだろう。

吟遊詩人はそう確信していた。


一方は、ポルファス王国の王国騎士軍団で間違いない。

大軍だ。


そしてもう一方は・・・何なのか分からない。

黒く蠢く大軍だ。


その両軍は、もうしばらくのうちに相対する。


吟遊詩人は“リュート”と呼ばれる楽器を手に取った。

そして、弔いの歌を奏でようとした。

しかし、そこに咲く花を見て手を止める。


吟遊詩人は、ふと思い立つと“元勇者の旅路”を奏でることにした。


この曲を知る者は、もうほとんどいない。

それでもこの若い吟遊詩人は、これを奏でることをなぜか好んでいたのであった。

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