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PROJECT・NOVA ~英雄たちの輪舞~  作者: たい平


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33/33

#33

アクタイオン帰還海路


物資運搬を行っているアクタイオン艦隊と輸送艦。

艦隊の構成は空母を中心に、巡洋艦2隻・駆逐艦3隻

物資輸送艦4隻にタンカー5隻になっている。

だが行きはこの数よりも多く、そして旗艦はもう1隻いた別の空母のはずだった。


残された空母のブリッジ内では、怒号と指示が飛んでいた。


「被害状況と残存艦を報告しろ!!!」

副長らしき男が、各オペレーターに指示を出す。


「各輸送艦共に損害軽微! 駆逐艦3隻も損害軽微!巡洋艦メサイアは中破・巡洋艦ユグラはエンジン部に損傷を確認、継続航行不能‥‥ユグラより入電です!」

艦長らしき男は椅子から立ち上がりながら、片手に双眼鏡を持ち周囲を見回し

「読んでくれ」と返す。

「読みます!我これ以上の航行は不能。ここでキメラの足止めに努める。残存艦は撤退されたし。以上です」

副長は足早に艦長に近付き

「艦長、いえ司令官代理。どういたしますか!?」

副長がなぜ言い直しをしたのか、それは数時間前に旗艦である空母がキメラの大群に襲われ、艦隊司令官と共に運命を共にしてしまったからだ。

その際に護衛艦・輸送艦数隻と海・空戦力のアーマードブレインが、撃破されてしまった。

現状各艦に搭載されているアーマードブレインの数は、少なくて現在急いで再編がなされているが‥‥

「大破状態の巡洋艦1隻程度で、足止めが可能だと思うか?副長は」

司令官代理は冷静に副長に尋ねる

「いえ、それは‥‥」

「ガンシップに、広範囲にソナーブイを投下するよう指示を出せ。副長、我々の任務は何かね」

「物資を無事にアクタイオンに届ける事です」

「その通りだ。アクタイオンを出る前に私は、ハリス様から今年は色々と情勢が変わるだろうと言われた」

「情勢‥‥で、ありますか?」

「あぁ。多くは語られなかったが、今運んでいる荷に今後必要になる可能性がある物が積まれているらしい」

「それは・・・どのような物なのでしょうか?荷については全てを確認した訳ではないので・・・・・・」

「私も分からん。亡くなった艦隊司令官だけは、全て聞かされていた様だがな。・・・聞いた話ではあるが、人類が放棄を許されない呪物だそうだ」

「呪物・・・で、ありますか!?聞いた感じでは、あまり情勢が良い方に傾くようには聞こえませんな」

「だが、あのハリス様が必要と言っているんだ、本当に必要なものなのだろう」


そう話をしているとオペレーターが

「上空に多数のキメラの反応を確認!種別特定ポーン級キメラB・バット!!」

副長の表情がキツくなり「追いついてきたか」と呟く。

更にオペレーターは

「群れの後方にナイト級キメラの反応を確認!‥‥‥これはD・バットです!!!」

司令官代理は諦めにも似た表情になり、一呼吸をおき艦長席の肘掛けに付いている無線を取ると。

「輸送部隊並びに、護衛艦に告げる。現状輸送艦を守りながら、アクタイオンに帰港するのは不可能と判断する。よって駆逐艦1隻を護衛に付け、輸送艦は最大船速で戦闘海域を離脱。残りの戦力でキメラの足止めをする!護衛艦隊の意地をキメラどもに見せつけろ!!!」

副長が各指示を出す。

「対空砲起動!キメラが射程距離に入り次第攻撃開始。アーマードブレイン隊の再編成と機体の状況は!!」

「再編成・機体共にいつでも出撃可能です。司令官指示を」

「駆逐艦・ガンシップはB・バットの殲滅を、アーマードブレイン隊は海中のキメラへの攻撃・陽動を仕掛けさせろ」

司令官代理の指示に従いオペレーターは各部隊に通達する。



※



空母格納庫内では、整備士とパイロット達が忙しく走り回っていた。


「パワーゲート急いで開け!ガンシップの6番機は修理が終わってる!!とっとと甲板に移動させろ!!!」

「おい!俺の機体にハープンキャノン装備されてねぇーぞ!!どうなってる!!!」

「用意出来ませんでした!現状の装備で出撃してください」


格納庫内には2種類の水中戦用の機体があり指揮官兼エース用に造られた機体と一般兵士用の量産機だ。


指揮官機はアクアレーヴと呼ばれる第二世代機で、頭部ユニットがサメの様な形をしたホルムで機体全体が厚い装甲に覆われている。

各部位にハードポイントがあり、色々な装備が増設可能となっている。


一般兵士用の量産機は、マリンレーヴと呼ばれる第一世代機である。

こちらは頭頂部が海洋類の背ビレを模(かたど)った形をしており、アクアレーヴほどではないが一応にハードポイントが設けられている。


この2機の違いはアクアレーヴは深い水深まで潜れるのに対し、マリンレーヴは深く潜る事は出来ないものの、航続距離が長いのが特徴である。


詰まるところ危険なレベルのキメラは深海に、危険度が低いキメラ程海面付近にいるということだ。


そして再編成された部隊の隊長機のコックピット内では、オペレーターからの指示がくる。

【各隊長機へ。空のキメラは艦隊とガンシップで対応します。海中のキメラは臨時編成されたアーマードブレイン隊で対応を願います。】

【了解だ。艦隊からキメラを遠ざける】と返すと、部下達から通信が繋がる。


【た、隊長、自分は予備部隊として追随して来ていただけで、実戦は初めてで・・・】

【おうおう、誰でも初めてはあるもんだ。それに生きて帰れれば昇進が待っているぞ。おめっとさん】

【隊長、新人には優しくするもんですよ】

【おい、新人!キメラとの距離を測り間違えるなよ。迂闊に近づけば、簡単に食われるぞ】

【りょ、了解であります!】

隊長の男はため息をしながら

【とにかくお前は、戦闘よりも生き残る事だけを考えろ。出来るだけ俺達だけで仕事をする】

空母の側面の装甲が開くと

【楽しいお喋りはお終いだ。仕事に出るぞ!】と言い開いたゲートから海に飛び込んだ。



※



すでに上空ではガンシップがB・バットの群れを相手に戦闘をしていた。

【船の死角に潜りこませるな!!!】

B・バット数十匹が駆逐艦の上空真上から飛翔する。

それを追いながらガンシップの機銃が火を噴き、撃ち落とす。

それでも数匹は対空機銃に取り付き、爪や牙で対空機銃を破壊する。

【クソ!あの位置だと】

ガンシップのパイロットが駆逐艦の周りを飛び回り、何とかB・バットに攻撃しようとするが的が小さくガンシップの機銃では、B・バットを貫通し駆逐艦自体に弾が当たってしまう状況だ。

だがそこに海中から小型の銛が数発飛んできて、B・バットに当たり少し上空で銛が爆発した。

そこにガンシップのパイロットの通信に【貸し一つな。あとでビールおごれよ】と声が発せられる。

その通信に【了解だブラザー。お互いに生きて帰れればな】と返す。


そのままガンシップは上空に戻ろうとしたが、そこにさらに大群のB・バットが飛翔しながら突っ込んできて、コックピット付近とガンシップのローターに飛びつき爪と牙を食い込ませる。

そしてガンシップのいたる場所から火が上がり、海に落下してくる。

【やべ!】と焦ったアクアレーヴのパイロットの隊長機は、落下してきたガンシップを急ぎ避ける。

【クソコウモリ共が!】とイラつきを見せつつ、急ぎ部下を連れ艦隊に接近しつつある海中を進行してくるキメラの方に向かった。



※



空母のブリッジでは各艦の被害状況と残存しているガンシップの状況が報告される。


「上空のB・バット未だ多数!さらに第二陣接近中!!」

「第二陣群れの中心にD・バットを確認・・・映像に出します」


ブリッジのモニター画面に映し出されたのは、体長15メートル

長距離飛翔滑空キメラ

ランク付けでD・バットと呼ばれているが、その見た目はB・バットと違い赤く光る目が3つあり、足は非常に長く鋭い爪を持つ。

B・バット以上に狂暴であり火薬や可燃物を好んで捕食するキメラ。

身体の体毛は黒くB・バットと違い、黄色く長い嘴(クチバシ)が特徴。

嘴の中には鋭い歯があり、人間やポーン級キメラなども捕食対象にしている。

攻撃の一つとして、溜め込んだ火薬や可燃物を口から吐き出す。その威力はミサイルの爆発力に勝るとも劣らない。


司令官代理は頭を抱えながら

「まいったな。残りのガンシップだけではアイツには対応できん。・・・駆逐艦の被害状況と対空ミサイルの残りは」

指示を受けたオペレーターが急ぎ調べ報告をする。

「3隻共に損害軽微なれど詳細不明!・・・・・・対空ミサイルの残存数0です」

副長も苦い顔をし

「昨日(さくじつ)の戦闘で殆ど使い切ってしまったか」

「無い物は仕方がない。だが・・・どうするか」

しばらく沈黙が流れるがそこにオペレーターが

「艦隊前方に反応!・・・・・・これは・・・傭兵部隊の輸送機です!」

「緊急招集に応じた傭兵部隊か!」と希望を見出す。

だが司令官代理は少し違うようで、モニターに映し出された輸送機のエンブレムを見て

「傭兵部隊・阿修羅・・・か」と少し考え込む。


傭兵部隊・阿修羅とは、傭兵とは名ばかりの評判の悪い空賊だからだ。

アクタイオンの所有する輸送機なども何度か襲われた事がある、信頼するには危険な相手でもある。

だがこの時期に限っては、アクタイオンの艦隊を襲うよりも助けた方が奴らには報酬の意味合い的に得な話なのだ。

「阿修羅から入電。上空のキメラは引き受ける。報酬の用意をしろ・・・です」

「所詮は空賊・・・と言いたい所ではあるが、有り難いのも事実。報酬は支払うと返してくれ」



※



その頃 艦隊上空に近づく阿修羅の輸送機内では


「正規軍様、無様にもてんてこ舞いだとよ」「素人かよ!」「B・バットもまともに処理出来ませ~んってか!?」

『ぎゃははははは!!!』と馬鹿にする笑い声が機内に響く。

そこにリーダーらしい男が自分の機体に乗り込み、モニター画面を操作し無線越しに

【うるせぇぞ!テメェ等!!仕事に集中しろ!!!】

【でもよ頭。D・バットがいるとは言え、ほとんどは雑魚のB・バットだろ?楽な仕事じゃねぇか】

他の部下達も【そうだぜ、頭】と口にするが

【オメェ等は素人か!ここまで来る時にも言っただろ。今年は何かがおかしい。時期の話もそうだが、ここまで執拗にD・バットが群れを引き連れて来るなんざ今の今まで無かったろ。もう近くまで白鯨が来てやがるのかもしれねぇ】

【無いでしょ時期的に】【ビビり過ぎですよ、頭】【でもまぁ、頭の不安も分かる。とっとと仕事して帰ろうぜ】


【よし。行くぞ!野郎共!!!】 『おぉー!!!』


輸送機の両サイドの扉が開く。


輸送機内には下半身が飛行船のような形をし、そのだいぶ後方にコバルトの上半身を流用したと思われる部位が装着されている機体が姿を現す。

それはABF-04-H02型クレバスと呼ばれる機体で、長年使用されている航空戦力の一つだ。初の飛行型アーマードブレインではあるが、年式は非常に古く、第一世代機で量産された数も非常に多い。

メイン武装は機体下部先頭両サイドにプラズマポッド 両手にビームサブマシンガン・ヘルツ 機体腰部に、三節棍型のビーム槍 フレンを装備している。


格納庫のクレーンアームに機体を掴まれ、ゆっくりと輸送機の格納庫外に機体が押し出される。

クレバスの後部エンジンに火がつき、どんどん強くなる。

ある程度の強さになるとクレーンアームから離され、その勢いで艦隊上空に向けて飛行しだす。

各々が奇声を上げながらB・バットの群れに向けて飛び出した。


阿修羅の戦力はそこらの空賊の中では非常に多く、今も5機の輸送機を引き連れ格納庫内にクレバスをリーダー機含め30機も所有している。

それが無骨ながら編隊を組み、全機の機体下部先頭両サイドの装甲の一部がスライドし、そこから四角いコンテナ状のプラズマポッドが出てくる。

6つほど穴が空いており、そこから青白い光が球体状に形作られチャージされていく。


リーダー機から【ぶっぱなせ!!!】と指示が出ると、全機のプラズマポッドから、青白い球体が一斉に発射された。

その球体はB・バットに命中するのと同時に青白く激しく爆散し、爆炎から次々にB・バットが燃えながら落下していく。

それを見ながら阿修羅のメンバーは

【どうだプラズマボムの味は】【B・バット相手じゃイキる事もできねぇな】【こりゃ楽な仕事かぁ~】と、余裕をみせる。

そんな余裕をみせているとリーダー機から怒号が飛ぶ【馬鹿野郎オメェ等!下だ!!!】

その言葉に気づき下を確認すると、B・バットが数十匹突撃し5機のクレバスに取り付く。

機体の装甲に爪や牙で襲い始める。機体は簡単に装甲が剥がされ、ボロボロになってしまう。

【この野郎!】と両手のビームサブマシンガンのヘルツを構え撃ちまくる。

何匹かすぐに殺せたが、襲ってくる数に対応しきれず、襲われていた何機かのクレバスはエンジン部まで攻撃され爆散した。


飛行型アーマードブレインには、決定的な弱点が存在する。

それは空を飛ぶ力を得る為に、装甲強度を限界まで削り、武装の全てを光学兵器に変更した事だ。

本来ポーン級キメラとの戦闘を1対2くらいの想定で設計されている。

それならば戦闘機の方が有効なのではとも言われるが、飛行型のキメラの多くは群れで行動しており、その数と旋回軌道の動きが戦闘機だと対応しづらいのが現状であった。

その為にクレバスは開発されたが、量産された数に見合わず戦果を残せず、そのまま民間に引き下げられた機体でもある。

戦闘機より優れる点は、旋回性能と接近戦にある程度対応出来る事、そして何よりもコバルトのパーツを流用する事で戦闘時間の長さを手に入れた事だろうか。


【クソ!陣形を維持しろ!!出来るだけ接近戦は仕掛けるな!!!】

リーダー機が指示を出すがD・バットの数が異常に多く、先程まで余裕を見せていた阿修羅のメンバー達が焦りだす。

【なんだコイツ等!なんでこんなに多く⁉】【それに統率力が!】【コイツ等なんか手強くないか⁉】

そこにデカい影が横切る。すると同時に近くに居たクレバス2機が爆散した。

リーダー機が両手に装備したヘルツを乱射しながら牽制し、その影を引き離す。

その影は反転し翼を大きく広げて、グワーッと咆哮を上げ威嚇してきた。


それは体長15メートルある、ナイト級キメラD・バットだった。

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