#24
最前線に立つアキが
【各機常に2機行動を心掛けろ!絶対に単騎行動するな!!横一陣、後方に待機している味方の射線が通る様に味方機との間隔をあけろ】と指示を出す。
出来るだけ広く味方機を展開して、前方の號龍・秋水が率いる部隊で足止め。
後方のアルダート・ヘルハンター部隊で、迎撃をする形で動く。
カガミ率いるイヅナ部隊は、避難バスの護衛件・最終防衛線になる。
群れの第一波であるソードスパイダーが、ベンベンの率いる部隊に接触し近接戦が始まる。
秋水のバスターアームでソードスパイダーを斬り裂きつつ、近くにいるもう一匹を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされ仰向けになったソードスパイダーを、コバルトがビームソードで地面に向けて深く突き刺す。
號龍を操縦するアキも同様にハルバートで薙ぎ払い、シールドでソードスパイダーを跳ね飛ばす。
倒れたソードスパイダーに、コバルトがビームガンで止めを刺す。
数が多くアキとベンベン部隊の間をすり抜け、コルカタウンに向けて進軍する。
そのすり抜けたキメラを、エムジーの遊撃部隊が切り裂き、撃ち抜く。
トシのヘルハンター部隊は、狙撃担当者の両サイドに護衛としてコバルトを配置し、前衛組の支援射撃に専念している。
それでも尚、エムジーとトシの部隊をすり抜けて来るキメラがレーダーに映る。
レーダーに映るのはポーン級キメラの反応で、ワームビートルと表記されている。
【兄貴!来るぜ!!!】とベルナールのコバルトが、イヅナの方に振り向く。
カガミはアルダートが暴れ回る方を、コックピットのモニター画面を拡大して確認する。
土埃と夜の暗闇のせいで見にくいが、頭部にカブト虫の角の形をした芋虫型のキメラがうじゃうじゃと、コルカタウンの脱出準備をしている車両方向に向かって酸の塊を吐き出す。
脱出用バスに乗っていた民間人達が車両内で悲鳴をあげる。
そこに滑り込む様にイヅナが立ちふさがり、盾で酸を防ぎつつ高出力ビームライフルでワームビートルを撃ち抜く。
カガミは【急げ!】とバスの運転手に、脱出を促す。
バスの運転手は焦りながらも「は、はい!」と返事をし、車両を走らせた。
ベルナール達も脱出用バスに近づけないように、ビームガンを撃ちワームビートルを攻撃する。
【数が多すぎんだよ!コイツ等は!】
ベルナールはイラつき、ワームビートルに向かって走り出す。
ジョセフが【ベルナール、勝手に持ち場を離れるな!】と注意するが
【大丈夫だ。ワームビートルの酸なんて、アーマードブレインの装甲を溶かすことなんて、出来ないんだからな】と返す。
ベルナールの言う通り、ワームビートルの酸はアーマードブレインの装甲を溶かす程の威力は無い。
それでも生身の人間や通常の車両程度ならば、それも話が変わってくる。
ベルナール機は、ワームビートルの群れに近づくと、コバルトのスラスターを使い飛び上がる。
そしてワームビートルの頭上から一気に落ち、踏み潰す。
その振動と落下した時の衝撃でワームビートルがひるみ、隙が生まれる。
【ナイス!ベルナール】と言い、ラッセル機が援護射撃をする。
ベルナール機はそのまま武器を使わずにコバルトで、近くのワームビートルを踏み潰していた。
【どうだ芋虫共!手も足も出ないだろ】と余裕を見せていると、次のワームビートルを踏み潰そうと、コバルトの片足を上げようとした時に機体のバランスを崩し倒れそうになる。
【うをぉぉぉ、やべぇ】と焦り声を出す。
そこにジョセフ機が倒れる寸前で、ベルナール機を支える。
【面倒を増やすな!】
【わ、悪りぃ。助かったぜ】
【ワームビートルの体液は、滑りやすいんだ!少数ならまだしも、この数相手に武装を使わなかったら、体液と死骸で機体が簡単に倒れるぞ】
【マジかよ。森なんかで戦う時は、踏み潰した方が速いんだがな】
ベルナール機は急ぎビームソードに持ち替え、ビームソードでワームビートルを薙ぎ払う戦法に変える。
カガミもバスターソードに切り替え、地面ごと振り払うことでより多くのワームビートルを倒していた。
そこに上空のガンシップから
【ガンシップから、味方地上部隊へ!南西上空方面より敵反応多数。種別・ポーン級キメラ B・バットと断定。これよりガンシップ部隊は、B・バット殲滅に移行します】
メリッサが直ぐに南西上空を確認すると、小型飛翔キメラがコルカタウンに向けて飛んでくるのを確認した。
【カガミ隊長!南西からB・バット多数接近!!ガンシップ部隊だけでは、対応出来る数ではありません】
【分かってる。でも、コバルトもそうだが、今のイヅナには、対空装備は積んでない】
カガミがどうするか悩んでいると
【こちらコルカタウン防衛班。カイヤナイト隊、聞こえるか?これより対空迎撃車両を前に出す。護衛を頼む】と通信が入る。
コルカタウンの扉から対空車両が5台出てくる。
【おいおい。どう考えても少な過ぎだろ】
【コイツ等本当に、ココを守る気あるのかよ】
ヴァレリーとジョンは戦闘をしながらイラつきを隠さずに、防衛班の人間に八つ当たる。
カガミは
【指揮官はいないのか?居るなら話がしたい】
だが防衛班の人間から返ってきた言葉は、驚くべきものだった。
【司令官なら、いの一番に逃げ出したさ。正規兵を連れてな。残って戦ってるのは、予備部隊の連中と実戦経験なんて無い警備隊の人間ばかりさ。だから俺達は、アンタ等に頼るほかないんだ。…悪いな】
それを聞いたヴァレリーとジョンは
【どこの街も、トップの腐敗は同じか。八つ当たってすまない】
【安心してくれ!俺達の隊長と団長は、メチャクチャ強いからな。きっとどうにかなる】
【あぁ。噂は聞いている。それとコルカタウンの中で、避難作業しているゴードン師団長が、カガミ隊長の指示で動けと言われている。的確な命令を期待してるぜ】
それを聞いたカガミは
【それなら対空車両はヴァレリー機・ジョン機が護衛。避難バス付近にラッセル機・ジョセフ機は展開直衛に付け】
『了解!』
カガミは4人に指示を出すと、再び前に出てワームビートルとソードスパイダーに攻撃を仕掛ける。
その頃最前線では、模擬戦で連携が取れていなかったのが噓のように、元Dキャンパーと元正規パイロットが見事なまでに連携を取っていた。
【俺が抑える!叩っ斬れ!!!】
【あいよ!任せろや!!!】
1機のコバルトが腕部の装甲シールドと、ビームソードで攻撃を防ぎつつ囮となり、もう1機のコバルトがビームソードでキメラの横から頭を斬り跳ねる。
それを見ていたアキは
【おうおう、上手くやってるじゃねぇ~の。その調子で後ろは、任せるぜぇ~】
【はい!団長の背中は、我々にお任せ下さい】
【雑魚共に団長の邪魔はさせませんぜ】
アキの乗る號龍は、既に第2派を相手にハルバートを振り回していた。
第2派にはナイト級キメラ・シェルソードと呼ばれるキメラが複数確認され、號龍・秋水・アルダートはこのシェルソードを相手にしている。
シェルソードは両手に、キメラの骨又はアーマードブレインの装甲などを拾い盾として狩りをし、胸部にある2本の鎌を武器にしている。
大きさにすると体長13メートル程で、全体的に赤く背中の白い羽が特徴的だ。
垂直立ちし人型の様に見えるが、よく足を見ると太い足の後ろに細い2本の足がある、4足歩行キメラである。
動きも俊敏であり、羽を使い低空飛行をしながら鎌を振り回し突撃してくるのが、非常に厄介である。
実際アキ達も、空中突撃に苦戦を強いられていた。
秋水はバスターアームの杭を何発か発射したが、盾で防がれる。
ただバスターアームの杭の威力の方が上回っているおかげか、盾を粉々に粉砕する。
盾を失った所に、トシのヘルハンターがスナイパーライフルで撃ち抜き止めを刺す。
第2派が押し迫ってきたせいで、カガミ達最終防衛線にもキメラが大量に迫っていた。
カガミは背中をメリッサとベルナールに任せ、とにかくバスターソードで迫りくるキメラを斬り続けた。
途中機動力を優先する為に、シールドをキメラに投げつけ両手でバスターソードを構える。
再度バスターソードを振り払い、数匹のキメラを倒すものの数が多くイヅナとメリッサ機・ベルナール機を掻い潜り避難バスの方に向かう。
それでも何とかジョセフ機とラッセル機により、ギリギリの所で迎撃される。
ジョセフ達もポーン級キメラB・バットを、ビームガンで撃ち落としているものの、的が2メートル程で小さくアーマードブレインで倒すのは非効率的ではあったが、対空車両のお陰でそれもなんとかいっている。
【まだ何とかなりそうだな。各機油断はするなよ】とカガミが全員に言った時の事だった。
前線で戦っているベンベンの部隊の1人が無線で
【正面上空に高速で迫る熱源を確認!速い…恐らくミサイルです!!!】
【ガンシップ!確認出来るか】とベンベンが言うと、ガンシップのパイロットが
【確認します…】と言い機体の方向を変えようと動いていると、そこにミサイルが当たりガンシップが炎に包まれ落ちてくる。
【総員退避!!!】
エムジーが近くの味方機に指示を出し、味方のコバルトは急ぎ落下予想地点から離れる。
カガミはミサイルの軌道が、自分達のいる場所に向かっているのに気付き
【全機ミサイルを最優先で迎撃!避難バスはコルカタウンに戻れ!!!】と指示を出す。
一斉にビームの光がミサイルに飛んで行き、空中にいくつもの爆発が当たりを照らす。
何発のミサイルが撃たれたのかは不明だが、数発がコルカタウンの防壁に当たる。
当たったミサイルの爆風で、視界が奪われる。
暫くして爆風の煙が消えると、コルカタウンの防壁の一部の壁が崩れおち、大穴が空いていた。
カガミが【マズイ!】と口にした時には遅く、何匹ものキメラがその穴を潜りコルカタウンに侵入していた。
イヅナが穴まで向かおうとすると、3匹のシェルソードが前を塞ぎ攻撃をしてくる。
振り下ろされた鎌を弾き返しつつカガミは
【メリッサ!ベルナール!】と大声で指示を出したが
【無理です隊長!こちらにもシェルソードが】
【なんでこんなにシェルソードが居んだよ!!!】
2機の方にもシェルソードが向かっていたらしく、とても崩れ落ちた穴に向かえる状態ではなかった。
ヴァレリー達も似た状態らしく、手一杯だった。
その間にもキメラはコルカタウンに侵入を続け、そのうちコルカタウンの中から悲鳴がそこら中から聞こえ、外のカガミ達の耳にも入ってくる。
コルカタウンの中で避難作業をしているゴードンから
【アキ団長!誰か援軍を送ってくれんか!!防衛隊のポリスガードタンクだけでは、数が足りん!!!】
【こっちもキツイが、仕方が無い。トシさん!悪いが、カガミ君の部隊の引継ぎを頼む。カガミ君はコルカタウンの中に突入してくれ】
トシは直ぐに【仕方がねぇ。行くぞ!】と、周りに居た味方機を連れてカガミ達が居る場所まで移動する。
その一方でカガミは【俺ですか?でもそれならトシさんの方が…】
イヅナが鍔迫り合いをしていたシェルソードの頭が、飛んできた弾丸で吹き飛ぶと
【イヅナは唯一ウチの機体で、ビーム系の銃器を持った機体だ。そいつなら実弾装備の俺等が街中で戦うよりも、被害を抑えられるはずだ。分かったらとっとと行け】
トシのヘルハンターとコバルトが数機、カガミ達と持ち場を変わる為に走ってきた。
【分かりました、後をお願いします。行くぞ!】とカガミはメリッサ達に指示を出すと急ぎ、崩れ落ちた穴からコルカタウンの中に入っていった。
※
その頃コルカタウン中では侵入してきたキメラと、ゴードン師団が街中で戦闘を繰り広げていた。
【こちら第4小隊、居住区画にキメラ多数!ポーン級が路地に入り込み、ポリスガードタンクでは対処出来ません。至急歩兵部隊の応援を】
【こちらコルカタウン予備隊・第6防衛班。西側の居住区の方が、ワームビートルの数が多い!逃げ遅れた人間も多いんだ、こっちに援軍を寄越してくれ!!!】
【こちら第2機動歩兵部隊!ゴードン師団長、ソードスパイダーが商店街通路を塞ぎ前に進めません。急ぎアーマードブレインを寄越して下さい!!!】
ゴードンの機体に多くの応援要請が飛んでくる。
だが、当のゴードンも迫りくるソードスパイダーから、避難してきた民間人を守るのに手一杯だった。
【クッ!おのれ害虫共め。姫様の治める土地を土足で踏み荒らしおって、私の目が黒いうちは姫様も国民にも手出しはさせん!】
ビルに囲まれた大通りに居る無数のキメラに、ゴードンの乗るコバルトがビームソードでソードスパイダーを斬り裂く。
ビルの上に登っていたソードスパイダーが、ゴードン機目掛けて飛びついてくる。
そこにイヅナの高出力ビームライフルが、ソードスパイダーを撃ち抜く。
ゴードン機がイヅナの方に振り向き
【カガミ殿か。助かったぞ】
【いえ、それより状況は?】
【見ての通りだ。すでに多くのキメラが、コルカタウンに侵入しつつある】
【外壁から流れてきただけじゃないですよね、この数】
【あぁ、その通りだ。西側からも避難バスを出していたのだが、そこがキメラに突破されこの数に】
【俺達はどうすれば?】
【居住区画には、まだ逃げ遅れた人間が多い。だが居住区画の路地は非常に狭く、アーマードブレインでは入って行けない。カガミ殿にはそちらの援軍に向かって貰いたい】
それを聞いたラッセルは
【おいおい。俺達はアーマードブレインのパイロットだぜ!?なんで歩兵になって、戦わなきゃいけないんだ!】
一瞬メリッサは溜息をし
【カガミ隊長、弟のラッセルは確かに、白兵戦の訓練などは受けていません。連れて行けば最悪足手まといに】
【分かった。ラッセルは残ってゴードンさんの援護と俺達の機体を頼む】
ラッセルは小さい声で【よっしゃ!】と言い、それを聞き逃さなかったメリッサは
【もしも全員の機体に傷の一つでもあったら、アンタの晩ご飯3日間抜きね】
【…マジかよ】
ラッセル以外の全員は機体をラッセル機への追従モードに切り替え、機体から降りる。
【カガミ殿、この先の通路に部下の戦闘車両があるはずだ。使ってくれ】
ゴードンからそう言われたカガミは、頷くとメリッサ達を連れ通路を通って進む。
通路の先にはゴードンの部下達が数人おり、車両に乗り込んでいる所だった。
「ゴードンさんの指示で来た。俺達も一緒に行こう」とカガミが近くの兵士に言う。
「これは心強い。後方の車両をお使い下さい」
カガミ達は最後尾にある、固定機銃の付いた車両に乗り込む。
「運転は私が!」とジョセフが運転席に乗り、機銃にはヴァレリーがついた。
助手席にはメリッサが乗り込み、他は後部の機銃がついた荷台に無理やり乗り込む様に乗った。
街中を車両で走ると、いまだ避難している人間が多く悲鳴や怒号が多く聞き取れた。
道路では途中ソードスパイダーの死骸や、大破したアーマードブレインの残骸で道が塞がれ、迂回せざるを得ない状況になったりと無駄に時間を取られる。
それでも何とか居住区画到着し車両を降りようとすると、こちらに悲鳴を上げながら走ってくる人間が多く「なんだ?」と思っていると、燃え盛るビルとビルの間からソードスパイダーが2匹出て来る。
1匹を前方に居た部隊が応戦し、もう1匹をカガミ達の隊で応戦する。
ヴァレリーは車両に取り付けられた機銃を使いとにかく、弾丸を大量に撃ち込んだ。
ソードスパイダーは多少怯むものの、鎌を前に構える事で弾丸を防ぐ。
その隙にソードスパイダーの下部にあるもう一つの蜘蛛状の口に、メリッサがグレネードを取り出し、ピンを口に咥えて引き抜き投げつける。
上手く口の中に入りグレネードが爆発すると、ソードスパイダーの上半身は地面に倒れ込む。
それでも身体を暴れさせ起き上がろうとしている。
そこにカガミ達は目に向かって、持っていたアサルトライフルで狙い撃ち息の根を止めた。
その頃にはもう1匹のソードスパイダーも倒されていた。
歩兵部隊を指揮していた隊長らしい男が近くに来て、地図を取り出し
「我々はこのまま居住区にある避難場所に向かいます。カガミ隊長の部隊には出来れば病院に向かって下さい」
「分かった。俺達はそちらに向かおう」
「ここから先は道が陥没している所があり、車両で進むのは無理でしょう。ある程度キメラを殲滅したらフレアを上げてください。救助ヘリを向かわせますので」
「キミ達も気を付けて」とカガミは言い、メリッサ達を連れて地図に示されていた病院を目指す。
目的地の病院はそれ程遠くはなく到着するには時間が掛らなかったが、既に病院の周りと建物の中には、ワームビートルが大量に占拠し我が物顔で動き回っていた。
「時間があまり無い。固まって正面入口まで一気に行くぞ」
カガミの指示に全員『了解!』と返事をし、カガミを先頭に全員で病院の入口まで走った。
すぐにワームビートルはそれに気付き、酸を飛ばしてくる個体もいれば、カガミ達を追ってくる個体も複数いた。
全員が持っていた銃を使いながら、行くてを塞ぐワームビートルのみを倒し入口に到達する。
病院内に入るとすぐにベルナール・ジョン・ジョセフは、病院のロビーにある椅子やテーブルでバリケードを作る。
その間カガミとメリッサは、病院の奥から現れたワームビートルを倒すのに専念した。
バリケードと向かってくるワームビートルを倒し終わり一息つく。
ベルナール・ヴァレリー・ジョセフは
「ここまで随分とスリリングだったな」
「確かにな」
「でもここからが本番だ」と少し息を荒くしながら、お互いの無事を確かめる。
「隊長、これからどうしますか?」とメリッサはカガミに聞く。
「取り敢えず外の安全を確保するのは、難しそうだな。…このまま屋上を目指しながら、取り残された人を助けよう」
すると奥を確かめていたジョンが、数人の医師と看護師を連れてやって来た。
「た、助かった。ようやく救助が来てくれましたか」と医師達は喜ぶ。
そこにジョセフが「患者の方達は、どちらに?」と聞くと
「患者は全員先にコルカタウンから、脱出させました。残っているのは、我々スタッフだけのはずです」と答える。
「どこぞのお偉いさん達と違って立派だ」とベルナールが皮肉を言うと、メリッサは「やめなさい」と注意する。
「何かあったのですか?」と医師が聞いていきた様子を見ると、軍の一部の人間が先に逃げ出した事は知らない様子だ。
(わざわざ本当の事を喋って不安にする必要もないか)とカガミは判断し
「いえ、こちらの話なので、お気になさらず。それよりも屋上からヘリを呼び、そこから脱出を考えているのですが、屋上までどうすれば行けますか?」と尋ねる。
病院内は既に電力の一部がダウンし、非常灯の光のみが廊下を照らしている状態で、とても目の前にあるエレベーターが動いてる状態には見えなかった。
「2階の外階段から直接屋上に行けるはずですが、付近には既にキメラが」と医師が言うと、
その後ろにいた看護師の1人が
「屋上まで無事行ければ良いんですよね?なら設備点検用の階段から行けば、7階までは無事に行けると思います。7階についたら手術室の脇にある階段から屋上に出れます」
「その設備点検用の階段は何処に?」
「2階のナースステーションの隣にあります。でもそこにもキメラが」
カガミがどうするかと考えていると、ヴァレリーが
「隊長!悩んでいる余裕は、無さそうだ」
ヴァレリーが銃を構えている方を向くと、バリケードに無数のワームビートルが集まり、バリケードを破壊しようとしていた。
カガミは
「2階の設備点検用の階段から、屋上に上がる!ベルナールとメリッサは先頭を歩いてくれ、ジョンとヴァレリーは医者の先生たちの両脇についてくれ。俺とジョセフが殿をする」
急ぎ2階に上がりベルナールとメリッサは、ナースステーション付近のワームビートルを掃討し、設備点検用の階段扉を開けて持っていたライトで一度上を照らして確認する。
ベルナールが先に階段を注意しながら上がり、メリッサは扉を開きながら片手で銃を持ち、近寄って来るワームビートルを撃ちながら
「走って!!!」と医師達に向かって指示を出す。
医者達はメリッサの指示に従い、全力で走った。
その左右をジョンとヴァレリーが援護しながら扉に向かい、最後尾を銃で乱射するようにジョセフとカガミが移動する。
扉まで全員無事に着き、階段を上がって行く。
階段を昇る途中で看護師の1人が息切れをし手摺りに掴まりながら下を見ると、ワームビートルが既に入り込み後を追ってくるのを目にしてしまう。
「きゃぁぁぁ」と悲鳴を上げて他の医者や看護師もその様子を見てしまい、同じように悲鳴を上げてパニックになる。
「止まらずに、階段を昇れ!」とヴァレリーが医者達に言う。
その様子を見たカガミは「全員先に行け!後から追う」と指示を出す。
「隊長1人では危険です!私も残ります」とメリッサも残ろうとしたが、カガミは
「屋上も安全とは限らないんだ!先に行って屋上の安全を確保してくれ」
それでもどうしたものかと悩むメリッサにカガミは「早く行け!!!」と怒鳴る。
メリッサは指示に従い階段を駆け上がった。
カガミはそこに止まり手持ちの弾薬を確認しつつ、上って来るワームビートルの先頭に居る個体を狙い撃ち、その死骸を乗り越えようとするワームビートルをまた撃ち抜く。
それを繰り返すようにしながら、ゆっくりと階段を上がっていった。
7階まで着き手術室の階段前に行くと、その周辺にもワームビートルが数匹おり、ジョセフが応戦していた。
「隊長、ご無事で」
「階段からもまだ上って来るぞ!」
「ベルナールが既にヘリを呼んで、医者達を乗り込ませています!後は我々だけです」
「急ぐぞ!」
カガミとジョセフは手術室横の階段を駆け上がる。
屋上の扉を開くとヘリは飛び立とうと、既に離陸状態になっていた。
屋上周辺にはB・バットが数匹飛んでおり、ヘリから扉を開きベルナール達がB・バットに向けて銃を撃っている。
カガミは「ジョセフ!先に行け!!!」と言い、ヘリに近づくB・バットを銃で撃ち落とそうとするが、持っていたアサルトライフルは弾切れになり、銃を投げ捨てる。
そしてハンドガンに持ち替えてB・バットに撃つと、B・バットはヘリから離れていった。
カガミは急ぎヘリに向かって走るが、ヘリは既に病院から離れつつあり、ギリギリフェンスをよじ登り飛べば届くかどうかの距離だ。
カガミはフェンスを一瞬で登り上がり、一気にヘリに向かって飛び移る。
何とかヘリに掴まりよじ登りきると、全員がカガミの身体能力に驚く。
近くにいたベルナールは
「兄貴本当にスゲェーな!」と言うとカガミは小声で
「俺も驚きだよ」と言う。
実際カガミ自身も本当に驚いていた。
”元の世界”に居た自分であれば、絶対に真似できない身体能力の高さだからだ。
それも恐怖を感じない点もである。
つくづく今の自分の体が、本来の自分のものではないと思い知らされる。
「まるで地獄絵図だ」
そう呟くヴァレリーが見た光景は、街中が燃え盛るコルカタウンの様子だった。
夜のせいでもあるのか、燃え盛るビルの炎が非常に強く感じられた。
カガミもコルカタウンを見下ろしていると、街の中で戦闘をしているコバルトやポリスガードタンクが苦戦しているのが分かる。明らかに数的不利だと。
「このままじゃ、避難どころかネクティアにもキメラが流れるぞ」
ジョセフが焦りをにじませる。
そこにヘリのパイロットが
「レーダーに反応!本機には武装がありません!!!」と焦る。
だがカガミがレーダーを確認し、レーダーに映る反応方向を向きながら
「いや…これは……味方だ!間に合ったか。さすがハヤテさんだ」
※
コルカタウン周辺上空を、輸送機が編隊を組んで飛行している。
その輸送機の中では、輸送機の機長とハヤテが言い争っていた。
「無茶ですよ!これ以上高度を下げるなんて!!これ以上高度を下げたら、キメラに飛び付かれ墜落する危険が…」
「無茶は承知さ!大丈夫、下の連中がどうにかする」
「あぁ~もう!どうなっても知りませんよ!!!」
輸送機は高度を限界まで下げ、コルカタウン上空に侵入する。
ハヤテは輸送機の無線を取り
「トシさん・ゴードンのおっさん、今から機体を降下させる。援護お願い!ダイ君・ジャガーさんは降下部隊の指揮を頼む」
『了解!』
輸送機の扉が開くとコバルトとは違った機体が姿を現し、輸送機から飛び降りる。
機体の外見はコバルトと大きく違い、元来のロボット感が強く頭部のメインカメラが大型の円状の形状をしているのが特徴だ。
その機体と同時に見覚えのある機体が2機降下してくる。
それはダイとジャガーの富嶽とクロスドクターだった。
降下してきた機体は、すぐに味方のコバルトやポリスガードタンクの援護に入る。
かなりの機体数が降下してきて、不利だと思われた状況がひっくり返る。
そしてカガミの乗るヘリの無線にハヤテから
【カガミ君、聞こえるか?】
カガミは急ぎヘリのパイロットから、無線を渡されそれを取り
「こちらカガミです」
【良かった、何とか連絡が取れたか。悪いけど、カガミ君の部隊は急いで前線に戻ってくれ】
「何かあったんですか?」
【ムックさん達から、最悪の知らせが来たんだ】




