ヒーローショー 2
「クーッジャッジャッジャ!どうしたどうしたぁ!」
ピーコックは笑いながら連撃の蹴りを放つ。その全てが岩のように重く、稲妻のように速い。
前蹴り、横蹴り──そして厄介な両手を地面についた、横に円弧を描く蹴り。
シオンはかわし、いなし、受け止める──が、技の間に隙がなく、反撃に繋げられない。回転し続ける車輪のように、ピーコックは技を紡ぎ続ける。
「ぐっ……」
シオンはステージの端にじわじわと追い詰められていく。
──落ちるわけにはいかないな……かっこ悪いし。
「クーッジャッジャッジャ!終わりだ!必殺!蕎麦屋ソバットぉ!」
ピーコックは地面についた手を支点に転回し、シオンに向かって跳躍する。
「今だ!」
シオンは身をかがめ、スライディングでソバットをかわしつつピーコックの背後に回り込む。
「何っ!?」
驚愕するピーコックの着地と同時に、シオンはその腕──羽か?を掴み背負い投げをかけた。
衝撃でステージが軋み、ピーコックが呻く。
「ぐっ……なかなかやる!」
ピーコックは背筋で飛び起き、後方に転回し距離を取った。
「これならどうだぁ!」
また車輪のように回転しながらの連続の蹴り。
「その技は見切った!」
シオンは破れかぶれのように、蹴りの嵐の中に突っ込んだ。
捨て身のタックルはピーコックを弾き飛ばし、攻撃の足が止まる──
『フィニッシュムーブ!スタンバイ!』
チェンジャーが鳴る。子どもたちの叫び声が聞こえた。
「頑張れー!」と。
シオンはチェンジャーのボタンを押し、光り輝く拳でピーコックを殴り抜く。
『ディスガイズ インパクト!』
「何っ……覚えていろ、ジュピタァァー!!」
巻き起こる爆発とともにピーコックの姿が消え、観客から歓声が上がった。
「いやー、今日も大盛況だったよ!これでうちの商店街も安泰かな!あ、これ賄いね!」
蕎麦屋「雪月花」──大取の営む店だ──の店内、大取は嬉しそうにシオンの前に食器を置く。
ディスガイズインパクトとやらで倒されたはずの大取──コックピーコックは、シオンが店に戻ってきたときには厨房で何やら料理をしていた。
転移とか姿を隠させるとか、そんな技なのだろう。
「いただきます」
シオンは食器──丼の蓋を開ける。
出汁の香りを纏った湯気が、シオンの顔を覆った。
眩いばかりの黄色を誇る卵で閉じられた、分厚いトンカツ……カツ丼だ。
「おお……」
蕎麦は?という疑問は湯気とともにどこかに消えていった。
シオンはカツを挟んだ箸を口に運ぶ。
「美味い……!」
きりりとした甘みの出汁を吸った衣と、柔らかい肉。そしてそれらをまとめ上げる卵。
シオンの箸は加速する。一口、二口……
5分とかからず、シオンは完食し、箸を置いた。
丼には米の一粒も残っていなかった。
カツ丼
蕎麦処 雪月花の人気メニュー。蕎麦より注文数が多い。
650円(税込)。
蕎麦の人気はカツ丼、天丼、天婦羅定食、お子様ランチ、オムライス、唐揚げ丼に次ぐ7位。




