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リザルト

 「意外といけるもんだな、これ」

貰った饅頭をかじり、シオンは呟いた。

もっちりとした皮と、甘さを抑えた餡。人を怪人にする組織が片手間に作っているとは思えないほどのクオリティの、飽きのこない味の饅頭だった。

食卓には乱雑に包装紙が破られた箱。既に3つの饅頭がシオンの腹の中だ。

『糖尿になるよ。』

チェンジャーから嫌なことを言うサテライトの声。

「これで終わりにするから大丈夫だって。」

シオンは残りの饅頭を箱から出し、積む。

残りは九個。3日くらいは甘味に困ることはない。

「さーてと、ちょっくら運動でもしてきますか。」

シオンは伸びをして立ち上がり、チェンジャーをポケットにしまった。



 「また助けられちゃったね、私」

深夜、病室のベッド。目を冷ましたタタラは傍らに突っ伏して眠る蒼にブランケットをかぶせる。

「随分長く寝ちゃってたな。蒼にも心配かけちゃった」

タタラが握った手を開くと、その掌には銀色のギアが乗っていた。

もう脈打つことはないそれは、月光を受けて微かに輝いた。

「少しだけ覚えてるよ。私、すごく強くなってた。酷いことしちゃってたけど……もしもあの力を制御できるようになれたら、きっとみんなを守れるよね」

ギアは何も答えない。当然といえば当然だが。

「……ちょっとトイレ行ってこよ。」

眠っている蒼を起こさないようにベッドから降り、タタラはスリッパを履く。

既に消灯時間を過ぎたらしく、非常灯の明かりが緑に照らすだけの廊下は薄暗かった。

「ちょっと怖い……なんて言える年じゃないなぁ……」

子供の時から夜のトイレは少し怖い。怪談の本を読むのは好きだったが、それを読んだ日は怖くて廊下にすら出られなかったのを彼女はふと思い出した。


 用を足したタタラは洗面台で手を洗い──違和感に気がつく。

「あれ?」

──私の顔って、こんなんだっけ。

鏡に映る顔は、覚えのある自分の顔とはどこか違うような。

「まさか、おばけ……」

そんな非現実的なもの、と頭では理解できても、湧き上がる恐怖の歯止めにはならない。

もう一度、おそるおそる鏡に映る自分の顔を観察し……「あ」

霊現象ではなく、ただ自分の瞳の色が変わっただけだということに気がついた。

茶色だった光彩が、銀色に変わっている。

「後遺症、ってやつなのかな……」

蒼に見せたら驚かれるかもな、と少しだけ不安になりながらタタラは病室に戻った。


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