富岡宅
「やあ、来てくれたね」
富岡宅に着いたシオンを出迎えたのは、サテライトだった。昨日と同じ、白い騎士のような姿。
「変身しっぱなしでいいのか、お前?」
「いや、僕はこの姿が平常時だよ。さ、入って」
通された部屋には、昨日の会物の死骸。
「あ、こっちじゃなかった」
あらためて通された部屋には、富岡とキキと……
「やあ、久しぶりだな、ヒーロー」
どこか見覚えのある、茶髪の男。
「えー、と。どこかで会ったような……あ」
数ヶ月前、すべての始まりになった、ジュピターだった男。
「金木 灯織。あらためてよろしく」
シオンは差し出されたトオルの手を握る。
「よ、よろしく」
「もう少ししたら俺も復帰するから、楽しみにしててな」
「あっ、はい」
トオルは白い歯を見せて笑った。
「で、呼び出しといてなんの説明もなしなのか?流石にあたしでも怒るぞ」
キキが髪先をいじりながらサテライトに問う。
「もう少しだけ待ってて。まだ用意するものがあるみたいだから」と、サテライト。
「ふーん。じゃ、あたしらは庭で組手でもして待ってるよ。」
「え?俺も?」
腕を引っ張られながらトオルがとぼけた声を出す。
「当たり前だろ。久々に稽古つけてやる」
「やだよお前の稽古キッツいもん。まだ病み上がりなんだぜ俺。寝る。稽古はシオンと二人で頼むぜ」
「はー、お前筋はいいのにそういうとこさぁ……まあいい、シオン、稽古つけてやる。」
と、キキはシオンを手招きした。
「じゃあ今日は…普通に組手でもいいか?」
裏庭、キキは軽く数度その場で跳躍し、構える。
「いや……できたら投げ技とか教えてもらえないかな。昨日ちょっといい感じにできたような、そんな気がして」
「おお、学ぶのに貪欲な姿勢。いいね、若さだね。教えてやるよ」
と、キキはシオンに近づき、肩にぽんと手を置く──瞬間。
「うおお!?」
シオンの視界がぐるりと回転し──地面に背中を打ち付ける寸前、キキに腕を掴まれ引き戻される。
「こんな感じかな。さ、やってみ」
「いや、無理だろ」
神業が過ぎる。どういう原理かもさっぱりだ。