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合気

 「合気道……相手の力を利用して戦うってのは、まず相手にどういう向きの、どれくらいの力がかかっているかをある程度感覚で理解するのがスタートだ。」

と、キキはシオンに講釈を始める。

「例えばこう、肩に手を置くとだな、ちょっと体幹──背骨の真っ直ぐさみたいなもんだな、がブレる。それを無意識に直そうとして体がちょっと動くからその力のベクトルを回転させて」

キキの手が肩に置かれ、シオンの体がふらつく。

「──で、こうくるんと。」

シオンの視界は回転し──地面に背中を打ち付ける寸前、引き戻される。

「あたしもこっちは専門じゃないからなんとなくやってるだけだけどな。素人は相手の手を取ってやるのが一番」

「そもそも手足を取らずに投げることは想定もしてなかった……で、手を取ってやるときはどうすれば?」

「そうだな……殴りかかって来てみ?あたしも一回やってみないとうまく説明できるかわからないし。」

「えー……わかった。──はあっ!」

シオンは意を決して、キキに正拳突きを打ち込む。

「いいね!」

キキはその手を掴み、くるりとその場で一回転し、抱え込むような動作でシオンを投げ飛ばす。

「うぐっ……ゲホ」

地面に打ち付けられ、一瞬息が止まる。

「悪い、ちょっと思いっきり過ぎたな。とりあえずこんな感じで、なるべく相手の力を損なわず、そのまま向きを変えるだけって感じ。相手の気に合わせて、自分の気で操る、みたいな」

「うーん……なんとなくわかったような、わからないような……」

「じゃ、実践タイムと行きますか!てりゃあ!」

キキは大振りに逆突きを繰り出す──取りやすいようにと気を効かせてくれているのだろうが、いかんせんあまりにも速い。

「うぉ!?ぬおおお!」

なんとか腕を掴み、さっきのキキの真似をするようにくるりと回転し──投げる。

「おお!?いいね!」

キキは空中で体をひねり着地。その勢いのままの大ぶりの突き──早すぎる。

シオンは受け身も取れずその突きを腹に食らった。

「ぐおおお!?」

「あ、しまった。大丈夫か?」

うずくまるシオンを、キキは心配そうに覗き込む。

「全部の内臓が破裂したような気がする……」

痛い。何なら腕がもげたときよりも痛い。

薄々わかってはいたが、彼女は下手な怪物より怪物だ。

その後数分、シオンはうずくまったまま動けなかった。

「ま、まあたまに投げ技が効かないあたしみたいなのがいるから注意な」

やっと立ち上がったシオンに、キキが今更な忠告をする。

「わかった……」

と、シオンは弱弱しく返事をした。

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