銃拳道
異形の怪物はシオンたちの方に歩を進める。
シオンもサテライトも既に逃げおおせられるほどの体力はないが、なんとか構えを取る。
「フシュルルルル……フシュルルルル……」
──あれを投げ飛ばせる技術は……多分ない。となると……どうする?
怪物は立ち止まり、二人の眼の前でぎょろぎょろと目を動かす。どちらから殺すか、見定めるように。
と、突如銃声が鳴り響き、怪物の頭部に2発の火花が散る。
「悪いな、遅くなった!あとは任せろ!」
両手に銃を携え山の斜面を駆け上ってきたのは、ビップ・ザ・スター。キキだ。
「言っただろ。僕らの役目は終わりだ。あとはゆっくり観戦と洒落込もうよ。」
サテライトがのんきに言う。
「いや、助太刀とか……」
「この満身創痍じゃ足手まといだよ。」
「そういうこった!けが人は休んでな!はあっ!」
と、ビップは怪人を蹴り飛ばす。
「おお、硬いな!ならこれは!」
ビップは左手の銃の引き金を引く。
パァン、と銃声とともにキキは左足を軸に回転し、銃の反動を乗せた右回し蹴りを放つ。
「フシュ……」
怪物の硬質化した皮膚がめきめきと音を立て、歪んだ。
「どうだ!もういっちょ!」
銃声。今度は右の銃、左の蹴り。怪物はよろめく。
持ち直した怪物は腕を横に振るう。
ビップは両手の銃を同時に放ち、その反動でのけぞる──銃撃によってわずかに体勢を崩した怪物の腕はキキの二センチ上を通り過ぎる──キキは宙返りし、着地する。
「すげえ……」
シオンは呆気に取られる。二人ともボロボロになるまで苦戦した圧倒的な強さの怪物と、互角以上に戦えるなんて、と。
「おおおりゃああ!」
銃声、反動を乗せた大砲のような突き。右手の銃口が怪物の胴体をへこませる。
零距離の射撃。反動でキキは身をひねり、膝蹴りを叩き込む。
「フシュ……ルルルル」
怪物の動きが鈍る。大振りな攻撃をビップは容易くかわし、銃弾とその反動を乗せた肘打ちを放った。
「フシュ……」
怪物は動きを止め、その体がまた灰色にぴきぴきと音を立て固まっていく。
「ビップ!そいつその状態から……」
「けが人は黙ってじっとしてな!はあっ!おりゃああ!」
ビップは両手の銃を同時に撃ち、反動を乗せた蹴りで怪物を上空に打ち上げた。
「うおおおおお!」
ビップは上空の怪物を撃ち、反動を乗せて蹴り上げた。その足が落下する怪人を貫く。
ビップは素早く足を引き抜く。怪物は力なく地面にどさりと落下し痙攣し、動かなくなった。
「よし、勝った!帰ろうぜ!」
キキは変身をとき、二人に向かってVサインをした。