打ち上げ
「それじゃ強敵からの生還を祝して、かんぱーい!」
とキキがシオンのグラスに、自分のグラスをぶつける。
怪物を倒してからまだ十五分ほど。あれからすぐ、キキは引きずるようにシオンをこの焼肉屋に引きずり込んだ。治りはしたとはいえ、まだ腕がかすかに痛む気がする。
さてらいとは謎の怪物の死骸をどこからか出した銀色の風呂敷のようなものに包み、行くところがある、とどこかにふらふらと去っていった。
「どうしたんだよ、せっかくあたしの奢りなのにうかない顔してさ」
キキがビールを飲みながら尋ねる。
「いや、なんかこう……まだまだだなって」
「当たり前だろ、あんたなんかあたしに比べたらひよっこに決まってる」
「そうだよな……」
シオンはグラスの烏龍茶をちびちびと飲む。
「ま、誰だってそりゃそうさね。あたしだって弱いときはあったさ。これからちょっとずつ……」
「ちょっとずつで、間に合うのかな。俺……このままじゃ足手まといに……」
「安心しな。あんた程度いくらでもまとわせてやるよ。それよりめっちゃ血出てただろ。貧血になりかけてるぞお前。肉食え肉。」
キキは焼いた肉をシオンの皿に盛っていく。多い。
「いや……こんなには……」
「食え。お前鏡見たら腰抜かすぞ。血の気失いすぎて埴輪みたいな顔になってる。ほれ」
キキがポケットから出したコンパクトミラーを覗き込むと、不思議な踊りでも踊りそうな土気色の顔がそこにあった。
──オイオイオイ、死ぬわこれ。
「……いただきます」
「たんと食え。食い終わったらレバー焼くからなー」
キキは自分の分の肉を皿に盛りながら言った。
「そういや、さてらいとはどこに?」
シオンは二皿目のレバーを烏龍茶で流し込み、呟く。
「さあ?まぁあいつにも考えがあるんだろ。そういやあたしもあいつに会うの初めてだったな。もうちょい話しとけばよかったかも」
「いや、そうじゃなく……そもそもあの怪物は何だったんだ……?さてらいとはなんか知ってるような感じだったけど……」
「ま、わかるときが来ればわかるさ。それまでは倒し続ければいい。そしたらそのうち道も開けるさ。あ、もうちょっとレバー食う?」
「いや……もうレバーは……」
「少食だなー。」
シオンに断られると、キキは網状に焼き目のついたレバーを全て自分の皿に盛った。




