理由
「で、聞くのだいぶ遅れたんだけどさ。なんなんだよこれ。」
机の上に置かれたのはシオンのジュピターチェンジャーとそっくりな、真っ黒な装置。ヒーロショーのときに回収したやつだ。
[もともとは全く別の見た目だったんだけどね……いろいろあったみたいだね。]と、スマホの画面に文字が映る。だいぶ便利になったものだ。
「これが敵の組織?に奪われて……」
[紆余曲折あって、君のもとに戻ってきた。]
「戻って来たってのも変な言い方だけどさ……」
[もともと君に渡される予定だったんだよ、これ。あの日にフレイムボルト達に奪われたけど]
「あの日……?」
[君が虎の怪人に襲われて、はじめてジュピターになった日あの日、トオルは新しいチェンジャーを君に渡すためにあそこに来た。けど邪魔が入った。フレイムボルトが怪人を数体引き連れて待ち伏せしてたんだ。]
「向こうさんは卑怯だな」
[手段を選んでいないだけさ。とにかくトオルは新しいチェンジャーを奪われたけど、怪人を2体残し残りは全員倒して君のもとに来た。]
「なあ、ゲームの配達ミスって俺のミスじゃなくてまさか」
[ハッキングとかその他諸々で。そうじゃなければ君は部屋から出ないし、新聞受けには入らなさそうだったからね。君が必要だった。結果として一人が一時的に離脱することになったけど。それでも。]
「なんで俺なんかに、そんなに?」
[力を得たとき、それを正しく誰かのために使える人間だからだよ。チェンジャーをいくら作ったとしても、正しくない使い方をされたらただの兵器。怪人と同じだ。探しに探して3人目の君が見つかった。]
「へー……よくわかんないけど。」
[もうすぐトオルも戻ってくる。そうしたら僕らの勝利も近くなる。その黒い方のチェンジャーは一旦預か……]
「俺でも使えるのかな」
『チェンジ……ネガ・ジュピター……』
シオンが無造作に装着したチェンジャーを操作すると不気味な音声が流れ、その全身が黒い霧に包まれる。
霧が晴れると、シオンは真っ黒なジュピターの姿になっていた。
「おお……いい……」
[なんで躊躇なくそういうことをするかね。]
シオンはスマホに表示される文字から微かに怒りを感じた。
「でもやっぱ緑色のが好きかな」
[とりあえずそれは僕の指定する住所に届けに行って。明日にでも。]
「わかった」
シオンは変身を解除し、秘密の隠し場所に黒いチェンジャーをしまった。