予感
薄暗く殺風景な部屋の中。金属の光沢を放つ怪人……シルバーマナは床にカードを並べ、何かを占っていた。彼の傍らにはコウモリのような怪人。
「そうか。あれがついに完成したんだね。ご苦労さま、デスモダス。」
「いえ、これが仕事ですので……」
デスモダスと呼ばれたコウモリの怪人は、翼膜の間からアタッシュケースを取り出し、開ける。
手の平2つ分ほどの大きさの真っ黒な装置は、どこかシオンやキキが使っている装置に似ていた。
「さて、実地テストと行こうか。吉報は真東、商店街だ。」
「シルバーマナさんがそれを……?」
「いや、私が使っても面白くないからね。」
シルバーマナは手首をスナップさせる。
「世界の逆位置。どこかにまだ不具合があるかもしれないね。テストしてみないとわからないだろうけど。」
「申し訳ございません」
「新しいことには失敗がつきものさ。それがひょっとしたら新たな発見につながるかもしれない」
シルバーマナが再び手首を振ると、カードはどこへともなく消えた。
風がシャッターを揺らす廃工場。ヘルメットと皮ジャンを脱ぎ捨て、もう動くことはないコンベアの上に座り、男はため息をつく。
「来るか」
それだけ吐き捨てると、男はヘルメットを被り、皮ジャンを羽織る。
杭……ペグといったか。少しの錆を気にしなければ、ここにはいくらでもある。
片端は丸く輪になり、もう片方は鋭く尖った鉄杭。
倉庫にうず高く積まれたそれの山から、数本を無造作に引き抜く。
「行くか……」
彼の感知能力が、怪人の出現を、場所を知らせる。
──また商店街か。いくら駆除しても出てくる。
「駆除の時間だ。」
ヘルメットの奥で、暗く彼の瞳が光った。
一方シオンは充電が終わったスマホ相手に苦戦していた。
「ロック画面のパスコード忘れたあぁー!」
『ハッキングして開けよっか?』と、チェンジャーからサテライトの声。
「怖いから遠慮しとく……4791……ああ!」
[次は 60 分後に入力可能です]とスマホの画面に文字が現れる。
「まただめだ!しかももうこんな時間!行かなきゃ!」
シオンはスマホを放り出し、商店街ヘ向かった。