目
「さて……」
シオンは変身を解除し、羽の生えた肉塊に近寄る。
明らかに現実に存在するのは好ましくない。未確認生物扱いされるか、最悪怪人の一部だということが発覚してこの世界にあふれかえる可能性すらある。回収して富岡のところで処分してもらうのが得策だろう。
シオンは手を伸ばし──肉塊が、震えた気がした──手を引っ込める。
「なんだ……?」
自分の頭程度の大きさの、手も足もない肉塊。だがの蠕動には、なにかの意思を感じるような──またうごめく。羽がしゅるしゅるとちぢみ、シオンの掌ほどの大きさになった。
そして、大きな一つの目が、ぎょろりと開く。
その目はしぱしぱと眠そうに瞬きするときょろきょろとあたりを見回す。
「おや?私は……」
陰気な声が目と羽のついた肉塊から聞こえた。どこが口なのだろう。
息を呑む音が聞こえた──タタラだろう。振り向くまでもなくわかる。
「確か、食われて……おや、マスクド・ジュピター……何か大きくなったような気がしますが……夢でしょうか?」
「その暗い声と、羽……覚えがあるぞ……」
かつて戦った吸血鬼のような姿の敵、ウプイリ。どこか似た雰囲気だった。
「羽?ふむ……申し訳ないですが、助けていただけませんか?手足の感覚が無く、動かないのです……虫のいいお願いなのは重々承知ですが、あなたはヒーロー。困った人を助けるのが義務ではありませんか?」
「いや、そもそもお前、人なのか?」
「どういう……」
「鏡とかあれば見せられるんだけどな。とりあえず連れてくか。」
シオンは肉塊を抱えあげる。
「ちょ、待ってください……どこに連れて行く気ですか?捕虜ですか……?」
肉塊はぱたぱたと羽を羽ばたかせたが、そよそよと空気が動いただけだった。