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16話

まるまる1ヶ月さぼってもーた……

いやー、やらかしたやらかした。

けど次から頑張る。

 《インデス内・虚数図書館》


 そこは、本が沢山ある場所であった。

 何メートルかもわからない天井に触れるほど、高く積み上げられた様々な本。

 踏み場所がないほど乱雑に散らばった本。

 とにかく、本、古書、聖書、辞典、果てには巻物だったり、粘土板や石碑であったりと多種多様な記録をしたためる物品がそこにはあった。


 そして、その中央部の煙突のない暖炉の前に、安楽椅子に座り、そのすぐ側にある机に置かれているカップに注がれたココアを飲みながら読書に耽ける少女と、そのすぐ傍には宙に浮く仮面があった。


「ふむ……この短い期間で兄様たちのアバターを倒すのは凄まじいですね」


『だろう?』


「ですが……まだ彼女をプリシパルテたちの計画に入れるにはいささか実力不足です。最低でもあと5段階ほどアルカナを進化させてもらわねば困ります」


 少女は仮面にそう告げると本を読む手を止め、すぐ側にあるココアから注がれているカップを手に取るとちびちび飲み始めた。


『お前さんが黙ってそうしてりゃあ見た目だけは可愛げあるんだナぁ?』


「プリシパルテには可愛さなど必要ありません。寧ろ、プリシパルテはエクスシア兄様とブラック兄様やほかの姉様兄様達のようなかっこよさや美しさが欲しいのです」


『可憐さもいいような気がするがねぇ』


「これは驚きました。NO.07のマスターがハイジ・コンプレックスの趣味があったとは」


『ゲフッ……テメェなあ!俺はロリコンじゃねぇっ!!ロリコンはエルのやつだろうがッ!つーかテメェは見た目が小学二年生なだけで実年齢は俺以上だろうがッ』


 少女のセリフに仮面が咳き込み、一気に怒鳴り散らすが当の本人は煩わしそうに眉を顰めるだけで特に揺れた様子がなく、再び本を読み始めた。


 ちなみにだがよく勘違いされるが、


 15~12歳が対象なのが

『ロリータ・コンプレックス』


 12~7歳が対象なのが

『アリス・コンプレックス』


 7~5歳が対象なのが

『ハイジ・コンプレックス』


 幼稚園児以下が対象なのが

『ペドフィリア』


 なので、正しく使おう!


 《10月5日AM10:00 TK都TK大学講堂》


 講義が始まる前のちょっとした自由時間の時、いつもの位置座っていると。


「ひ〜び〜き〜」


「なに桜子?」


「課題……見してつかぁさい!!」


 私の親友でもある桜子がそんなことを言ってきた。私はARPCのキーボードを叩く手を止め、ジロリと睨みつける。


「…………………………………」


「クッ、ロリっ子の冷たい視線が堪らねぇぜッ!」


「ロリっ子言うなぁ!私はれっきとした大学生だもん!」


 コノヤロウ……


 ワナワナと肩を震わせていたが、すぐに力を抜いてバッグからノートを取り出して桜子に手渡した。


「さっすが響!頼りになるぅ!」


「いったい何をしたら忘れたのさ」


 現金な親友に呆れつつも、私が桜子に忘れた理由を尋ねると恥ずかしそうに頬を染めて答えてくれた。


「インデスでUNM1人で倒してきちゃった///」


「へー、凄いね」


 思った以上にどうでもいい情報だったので、来る途中に沙知さんに買ってもらった新聞を読み始めた。あ、株価上がってる……メモメモ


「響の態度がすごく素っ気ない!」


「そんなことよりさっさと写したら?」


「へーい」


 桜子はすぐに椅子に座ると、私から渡されたノートを開いてサラサラと課題をノートへ写していき、それを横目に新聞の記事を読み進んでいく。


 2人の間に静寂が訪れ、周囲の学友たちの雑談の音が微かに聞こえるがそんなに注意をむけるほどの大きさでもない。


 そうしていると、


「あの……神無月さん」


「?」


 気弱そうな女性の声が聞こえ、聞こえた方向に新聞から視線をずらしてみた。

 そこに居たのは、身長が160センチほどで、ゆったりとウェーブのかかった髪の毛が肩ほどに切りそろえた茶髪に、メガネをかけており、ゆったりとしたワンピースの上にカーディガンを羽織ったタレ目が特徴の人がたっていた。

 確か名前は……『朝比奈(あさひな) 寧々(ねね)』だったかな。


「朝比奈さんだったけ……何か用ですか?」


「えーと、今日の講義で復習をしてたのだけれど、ちょっとだけわからない所があってね?私に教えて欲しいの」


「別に構わないけど……何がわからないの?」


「第二外国語で私、ラテン語をとってるのよ」


「ラテン語……うん。その程度なら小さい頃から覚えてるから教えられるよ」


「本当?助かるわね。それじゃあここなんだけど……」


「うん。そこはこうして……こうすればいいんだよ」


「なるほどね〜……」


 席を向かい合うように座り、朝比奈さんの広げたノートに私が色々と口を出して、彼女が質問をすればわかりやすいように簡易化して、噛み砕いて答える。


 それから程なくして桜子がノートを写し終え、私たちの輪に入ってきた。


「へえー、寧々さんもインデスやってるんだね」


「うん。先月からちょこっとずつね」


「私は響より少し早くやってるね」


 桜子の持ち前のコミュ力のおかげか、直ぐに私達は意気投合する。けど、私達は講義そっちのけでインデスの話をしていた。


 ちなみに響は聴きながらノートへ器用に板書をしていたりする。


「それにしても2人ともすごいなぁ……始めてからひと月ぐらいなのにUNMを倒してるなんて」


 響はダークナイト、ラグラーガを倒し、桜子もUNMを一体倒している。


 詳しいことは知らないが、UNMをソロで倒したらそれだけでインデスのプレイヤーの中でもかなりの実力を持っているという証明らしい。


 だが当の本人たちは……


「あの変態を倒してそんな称号もらっても……なぁ」


「そんなものより可愛いのを愛でたいなぁ〜」


 と、いうものだった。


 この返答には思わず朝比奈が目を丸くしてしまい、そのあとに噴き出してしまう。


「ご、ごめなさい。フフフ……でも、ね?あのUNMを倒してるのにまったく自慢しないから……クフフフ」


「そんなに可笑しいことかな〜?」


「さぁ〜」


 朝比奈の声に2人して首をかしげ、講義の時間が過ぎていった。


 尚、朝比奈と桜子の2人は話すのに夢中だったので、講義が終了まで残り数分と言った時に響のノートを急いで写してもらったのは余談である。



 《インデス・結晶の洞窟》


 そこは薄暗く、壁や地面、天井には所狭しと結晶が生えていた。


 そして、その洞窟の道の半ばで鳴り響く戦闘の音。


「ハァ!」


 若い男の声が聞こえたこと思うと、剣閃が走り、蜘蛛型のモンスターを半ばから断ち切る。


「ヌゥン!」


 続けて、ガタイのいい男が成人男性の腰ほどの高さの巨大グモの攻撃を大盾で受け止める。


「ヤア!」


「キャァァアァ!!?」


 女の声と共に槍の穂先が突き出される。その穂先は上半身がグラマスな女で、下半身が蜘蛛の異形の腹部に突き刺さり、その口から吐血し甲高い悲鳴『アラクネ』がほとばしる。


 そして、


「『レイヴン』、お願いします!」


「りょうかーい」


 パーティのリーダー剣を持っている男が後方へ声を出すと、それに反応してレイヴンとよばれた黒い少女がとび出た。


 その小柄な少女は全身を漆黒のマントで隠されていた両手から、2振りの十字架を象った真紅の線が走る双剣を抜剣すると勢いよく目の前にいたアラクネに振り下ろす。


「ギャッ………!」


 両腕が肩口から断ち切られ、Vの字のようにそのまま刃が走ると、半ばまで刀身の埋まった創建を手放し、少女がそのマントの中に手を突っ込み何かを引きずり出すと、いつのまにかその手には肉厚で重厚な見るからに凶器とわかる大鉈が握られていた。


「フッ!」


 短く息を漏らし、その大鉈を振り下ろす。その凶刃はなんの抵抗もなくアラクネの端整な頭部をかち割ると、下半身の蜘蛛部分から耳障りな鳴き声が鼓膜をふるわせた。


「喧しい!」


 少女が顔を顰めて叫ぶと、腰のベルトから吊り下げていた拳ほどの壺を掴み取り、ソレを血みどろの女体部分へ投げつけた。


「キャア!?」


 周囲に油の匂いがたちこめる。


「燃えろばーか」


 そして、少女はそう叫ぶと赤い刀身のナイフをアラクネへと投擲する。そのナイフは真っ直ぐ飛んでいくとアラクネに突き刺さり、炎上した。


「すごい……」


「これが傭兵プレイヤーか」


「最近売り出しの子だ。たしか……インしてからひと月のうちにUNMを2体倒した期待の新人らしい」


 目の前の光景に思わず3人のプレイヤーは感嘆の声を漏らす。


「たしか……名前はヒビキだったかな」


 パーティーのリーダーらしき男はそう呟いた。

感想や評価、ブクマに誤字脱字の評価まってます!励みになりますよ〜。あとあと、低評価の方はどこをどうすればいいとか教えてくれるとありがてぇです!

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